ナタリー PowerPush - lego big morl

4人の気持ちを“再結合” 決意のアルバム「Re:Union」

lego big morlが3rdアルバム「Re:Union」を完成させた。“Reunion”とは再結合や再会という意味だが、ロックシーンにおいては再結成という意味でも使われる。なんだかドキッとしてしまうが、実際にそのタイトルもふさわしいくらいの決意が感じられる傑作だ。

現実の非情さを受け止めながら前進していくような「素晴らしき世界」、照れ臭いほど愛を叫ぶベタなロックの恥ずかしさを逆手にとった「Fo(u)r rockstars」、音楽シーンでアーティストが置かれている現状と、そこに対するフラストレーションをぶちまけた「Hit song crazy」、未来をリスナーと共に紡ぐ意思を示すようにシンガロングが響く「Re:Union」……どの楽曲においても、シリアスやユーモア、あるいは怒りや優しさが振り切れているのだ。しかも、彼らの武器である巧妙なアンサンブルに、プロデューサーの前田啓介(レミオロメン)の手腕によるポップセンスが加わり、とても聴きやすくなった。ロックバンドとして大きな一歩を踏み出した今作について、メンバー全員に話を訊いた。

取材・文 / 高橋美穂

「再結成」よりも「再結合」「再会」「再融合」

──「Re:Union」というアルバムタイトルからして、決意を感じます。言葉そのものには再結成という意味もありますよね。

カナタタケヒロ(Vo, G) 再結成というよりも、再結合だったり再会だったり再融合みたいな、そういう意味で僕らは捉えていて。それが今の僕らとか、アルバムを制作中の日本の感じに、ドンピシャでふさわしいと思ったんですよね。

──バンドとしては、もう一度ギュッと固まろうっていう意思があったんですか?

lego big morl

タナカヒロキ(G) そうですね。3rdアルバムでもっと大きいところに行きたい、そうするならもう1回ひとつになろうっていう。

──ここでまた決意を新たにする理由が何かあったんですか?

タナカ 今年の初め頃は、4人の気持ちがバラバラだったんです。どういう方向を向いて音楽を作っていくんや?って。それで、4人で居酒屋に行ってじっくり話したりして、全員でしっかり1つの方向を向くことができたんですよね。

カナタ 前のアルバム「Mother ship」のツアーが終わったあとくらいから、これからどうしていこうかってなったんですよね。また新しくアルバムを作るっていう漠然とした考えはあったんですけど、細かい発想はなく、ただ時間だけが過ぎていたような。

ヤマモトシンタロウ(B) そういうときに東日本大震災もあって。地震の起きるちょっと前に「Flowers」ができて、5月にリリース(lego big morl mail news会員限定のフリーダウンロード)したことで、やっぱり4人でバンドをやってんだなって気持ちになって。音源を作って出すとメンバーの気持ちも変わってくるんですよね。それで、アルバムはどうしようかっていう話し合いが始まったんです。

「Flowers」は今年僕らがどうしていくかを象徴する曲

──じゃあ、今作の入口は「Flowers」だったんですね。

ヤマモト そうです。この曲が、今年僕らがどうしていくかを象徴する曲だと思ったので。

──でも、「Flowers」を震災の前に作ったと聞いて、ちょっと驚きました。歌詞も曲も、いろんなところが震災と重なって聴こえてくるから。

ヤマモト 歌詞はヒロキが、震災について思うところがあって書き変えた箇所もあります。

タナカ 2行ほど変えました。それっぽいところがあると思うんですけど。

──2行だけなんですね。それにしては、全体的にシンクロしているなと。

タナカ そうですね。良いのか悪いのかわからないけれど、マッチしてしまった感じはあります。

──元々はどういう歌詞を書こうとしていたんですか?

タナカ 日常には小さい矛盾や大きい矛盾があるけれど、その中を生きていくっていうことを書こうとしていたんです。そうしたら、まさしく震災という形で大きい矛盾が起きて。でも、地震とは関係なく、そういう矛盾を感じている人なんですけどね、僕は。

──この曲以外にも、皆さん自身が音楽をやっている意味を考えたのかな、と思える曲がたくさん詰まっていますね。

タナカ こんなにお客さんを意識して曲を作ったり、歌詞を書いたりアレンジしたのは初めてでしたね。それは前田(啓介)さんの存在ももちろん大きいんですけど、メンバー同士で話し合って、今まで書かなかった歌詞やコードが出てきたんです。

──前は、リスナーを意識してというよりとにかく自分たちが楽しんでいた?

タナカ ほぼそんな状態やったのが、このアルバムではどっちもできるようになりましたね。震災のことも、前田さんの存在も、合宿に行って毎日4人で音楽漬けだったことも、全部つながって理由となって。友達関係から始まったバンドなんで、みんなでワーワーやっている感じも出たし、全部がうまいこと噛み合ったんやろなって。

3rdアルバム「Re:Union」 / 2011年12月7日発売 / OORONG RECORDS

  • [CD+DVD] 3990円(税込) / AVCO-36067/B / Amazon.co.jp
  • [CD] 2940円(税込) / AVCO-36068 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. 素晴らしき世界
  2. Fo(u)r rockstars
  3. 雨のタクシー
  4. Flowers
  5. 正常な狂気
  6. memento
  7. Hit song crazy
  8. さよならジャーニー
  9. ダーリン
  10. Re:Union
DVD収録内容
STUDIO LIVE
  1. Flowers
  2. nice to
  3. 隣の少女と僕と始まり
  4. FROM 12 TO 4
  5. Fo(u)r rockstars
  6. ダーリン
  7. ワープ
  8. moonwalk for a week
  9. Ray
  10. space dive
PV
  1. 正常な狂気
  2. Re:Union
lego big morl(れごびっぐもーる)

高校の同級生だったカナタタケヒロ(Vo, G)、タナカヒロキ(G)、ヤマモトシンタロウ(B)の3人と、アサカワヒロ(Dr)によって2006年に結成。地元大阪を拠点に全国各地でライブを行いながら、2008年6月に初のミニアルバム「Tuesday and Thursday」をリリースする。同年12月に発売された1stシングル「Ray」はドラマ&映画「赤い糸」の挿入歌に起用され、話題を集める。2009年には1stフルアルバム「Quartette Parade」をリリースすると同時に初のワンマンツアーを敢行し、その後は年1枚のペースでコンスタントにアルバムを発表している。ツインギターならではの凝ったアレンジとフレッシュなサウンドに定評があり、新世代ロックシーンを担うバンドとして期待されている。