音楽ナタリー Power Push - 小池美由

今までありそうでなかった、小池のロングインタビューだよ!

小池の暗黒期

──アイドルになる人の多くは、小学生の頃などにテレビで観たアイドルや歌手への憧れが元にあると思うんですけど、小池さんはどうだったんでしょう。歌手になりたいという思いが芽生えたのはいつ?

全然ないです。「歌手になりたい」って1回も言ったことない気がする。

──じゃあなんで歌手になったんですか?

小池美由

なんでだろうね? それが小池の七不思議なんですけど。もともと栄養士になりたくて、それで大学にも行ったし、あとは食育関係とか家庭科の先生とかになりたかったんですよ。だから幼稚園が近い学校を選んだりとか、研修でキッズ料理教室とかができる学校を選んだの。歌手になったきっかけは……高2の終わりぐらいに、体を動かす機会がなかったからダンスを習い始めて。そのダンススクールにアイドルグループがあったんです。「アイドルってあんな感じなんだー」と思ってたんだけど、そのグループがなくなって小池が大学生になった頃に「ソロアイドルでやってみないか」って言われたのがきっかけです。

──それまでアイドルや歌手に興味がなかったのに、なぜ誘いに乗ったんですか?

どうせすぐ辞めると思ってたから。アハハハ(笑)。どうせすぐ辞めるだろうし、将来は栄養士になるつもりだったし、本当に軽い気持ちで。

──その頃、学生生活は……。

闇ですね。暗黒期。中学のときからずっと暗黒期だった。始業式のあのざわざわした感じが苦手なんですよ。「あークラス一緒だー」みたいな。クラスが一緒でも、そんなの人生の中でほんのちょっとの時間でしかないし。そのノリに乗り遅れたらもう暗黒期ですよ。

──部活などにも入らず。

部活は入ったけどすぐ行かなくなりましたね。すごく厳しかったんですよ。それまで小池、ずっと甘やかされて育ってたから(笑)。朝練をやるのはまだわかるんですけど、始まる前にスカート丈とか靴下の長さとかYシャツの色をチェックするのは全然意味がないと思った。そう思って先生とか先輩方に申し出たことがあって。でも「これは伝統だから」って言われたんですよ。「どんな伝統だよ」って思ったんですけど、そういうのがなんか好きじゃなくて。

──中学でそういう性格だと、どうしても孤立していじめに遭ったりしますよね。「ゴッドタン」では過去のいじめ体験をポップに語って笑いすら取っていて、「ストイック暗記王」のコーナーでは過去の経験を膨らませたドラマ仕立てのストーリーに巻き込まれてましたよね。あれ、出演していてどういう気分なんですか?

タイムスリップですね、完全に(笑)。小池は当日収録に行くまで中身を知らないんですよ。台本にも「小池、入り何時」ぐらいしか書いてなくて。アドリブだから新鮮な気持ちであの頃に戻れるんです。タイムマシンがテレ東にある(笑)。

──バラエティ的にいじめ体験をいじられるのはつらくないんですか?

もう全然平気です。子供の頃のことを覚えてないのと一緒で、ある一定期間を過ぎたらそれは他人の出来事みたいな気がしちゃう。今の小池とは違う人を見ているような、違う人の話をしているような気持ちなので全然平気ですね。

小池とアイドル

──なぜ、もともとアイドル活動に興味なかった小池さんがソロとして活動することに?

グループを見ていても「うらやましいな」「私もああなりたいな」とは思わなかったけど、違う形なら経験してみたいなと思って始めたんです。将来子供が生まれたときに「お母さん、こんなことやってたんだ」って話のネタになればいいな、ぐらいにしか思ってなかったかな。

小池美由

──そのときアイドルというものにどんなイメージを持っていましたか?

小池の想像していたアイドルは、お母さんが見ていたアイドルなんですよ。松田聖子さんとか。ああいうのがアイドルだと思ってたから、今のアイドルさんは小池が思ってたのと違うなって。アイドルはトイレに行かないとか、ピンクの服を着て髪を巻いて、そのイメージを崩さないように周りも守ってたと思うんです。実際に自分がやってみたり、周りのアイドルさんを見てみると全然違う。握手会が一番謎だったな。知らない人と握手するのは私にとって未知との遭遇だから、「これになんの意味があるんだ!?」って。

──小池さんのファンとの触れ合いは、ほかのアイドルと比べても特殊で濃密なものになってますよね。握手のようなオーソドックスなものじゃなく、お客さんのTシャツにものすごい書き込みをしたり、じゃんけんしたり、巨大すぎる色紙をプレゼントしたり。僕も一度行って、じゃんけんに勝ってチェキをもらいましたけど。

うん、おめでとう!

──なんでああいうことになってるんですか?

なんでだろう? 小池は色恋沙汰みたいなのが苦手だからね。苦手というか、違うなって。好きだから応援するという気持ちはわかるんだけど、マジなやつは違う。だから小池がやることはそれじゃないなって。そういうのは、得意な人にお任せする。

──テレビ出演時にもよくやる、自分で自分にレスポンスするというスタイルはどうやって生まれたんですか?

アイドルを始めた頃はもちろんみんな小池を知らないから、複数の人が出ているライブだと、小池のことを知らない人、好きじゃない人も小池を観なくちゃいけない。小池も小池を知らない人の前で一生懸命やらなくちゃいけないっていう二重苦なんですよ。だから観ている人の声を待たずに、自分の中で完結させようと思って始めたの。向こうもつらいしこっちもつらい。じゃあやめよう! こっちもつまらなそうにスマホいじってるおじさんを見たくない!って。

小池のお約束

──それでも徐々に小池さんが観たくて集まってくるファンは着実に増えてきましたよね。「最後の曲になりました」「やったー!」みたいなお約束は自然にできあがっていったんですか?

あれは誰かがやり出したのを、「これやんなきゃいけないんだ」みたいな責任感で続けてるんだろうなと思う。

──あはははは。

小池、ひと言もやってくれなんて言ってないんだよ? アイドルの曲が始まると叫び出すやつとか、小池あれよくわかんないだよね。いまだに。

──コール、ミックス、口上の類でしょうか。

小池美由

うん。あれってなんの儀式なんだろう? あれをやらないと気持ちが高められないのはおかしいと思う。歌ってる最中に騒いで、「わざわざお金払って来てるのに小池のこと観てないじゃん!」みたいな。それより1秒でも多く小池を観たほうがいいのにって。ライブはこっちがいろいろ考えてやるから、そっちは楽にして観ててって思う。小池が誕生日のときとか、同じ色のサイリウムを用意してくれたり、お花を贈ってくださったり、みんな気疲れするだろうなって思う。小池に喜んでもらいたくてやってくれてるんだと思うから、それはありがたいんだけど、楽しみに来てるみんなが、そんなに疲れることやんなくていいのに。ここでああやって、あそこでこうやって……みたいなことは小池が考えるから、手ぶらで来てほしい。

──100%を提供するから、手ぶらで楽しんでほしいと。

そうそう。そんなんでいいの、ホント。コールとかもやりたくない人はやらなくていいの。

──コール&レスポンスとも言えない謎の「わ!」の連呼、ちょくちょくやりますよね。あと、ライブの冒頭に自分で意味もなく絶叫したりするのはなんなんですか?

あれはただ楽しくてやってる。普段あんまり大声を出すことってないから(笑)。

──そのへんの道端で絶叫してたらさすがに驚かれますもんね。

そう。認められた場でしか大声って出せないから。やっぱりいろんな番組に出ると、アイドルに興味ない人もライブ会場に観にきてくれるんですよ。そういう人はやっぱり「わ!」って言ったり急に動きだしたりするのは衝撃だったみたいで。

ニューシングル「恋する二人は」 / 2017年2月8日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
Type-A [CD] 1000円 / TKCA-74478
Type-B [CD] 1000円 / TKCA-74479
Type-C [CD] 1000円 / TKCA-74480
収録曲(全仕様共通)
  1. 恋する二人は
  2. ひとりごと
  3. 恋する二人は instrumental
  4. ひとりごと instrumental
小池美由(コイケミユ)
小池美由

1994年1月19日、神奈川県生まれ。2012年よりソロアイドルとしての活動を始める。個性的なキャラクターが注目を集め、2014年3月にはテレビ東京系バラエティ「ゴッドタン」に初出演。同年6月にはビクターレコーズよりシングル「宇宙かくれんぼ」でメジャーデビューを果たした。2015年1月には2ndシングル「泣き虫Princess」を発表。同年3月には求人情報サイト「バイトジャングル」「ジョブターミナル」のイメージキャラクターに選ばれ、現在もテレビとラジオのCMに出演中。また同時期より文化放送のラジオ番組「レコメン!」で火曜日のレギュラーを務めている。2017年2月には徳間ジャパンコミュニケーションズ移籍第1弾シングル「恋する二人は」をリリース。