音楽ナタリー Power Push - 岸谷香

音楽家として、母として すべてに“よくばる”彼女の「DREAM」

「あなたの自由に書いてください」というオファー

──カップリングの「VANITY FAIR」は作詞を蜜の木村ウニさんが担当されています。これはどのような経緯で?

ウニちゃんは衝撃でしたね。たまたま知り合いがプロデュースしていて、蜜が大好きになって。曲も面白いですし、本人に会ったら、またたまらなく面白くて。ウニちゃんはすごく若くて、私の歳の半分ぐらいなのに、私のほうが「一緒に飲みに行ってよ」ってお願いしてますからね(笑)。

──岸谷さんからウニさんにどのようなイメージを伝えたのでしょう?

岸谷香

あっ、特には何も。曲を渡して「私のことは何も考えずに書いて」ってお願いしただけ。「思い付いたことを、あなたの自由に書いてください」ってオファーをしました。

──「遠くから犬の鳴き声聴こえる その爪は地面をとらえているに違いない」って、確かに岸谷さんの世界からはあまりイメージできない歌詞だと思います。

うん、その文学的なところがウニちゃんのすごくカッコいいところだと思うんです。本当に才能がある人だと思います。彼女が書くときに思ったことと、歌う私が思っていたことってきっと違うと思うんだけど、それはそれできっといいことで。その私には書けないウニちゃんの詞が好きなわけですから。で、その好きっていう思いが通じたのか、おかげさまで今ではすごく仲よくなって「また一緒にやりたいねー」なんて話もしてますし。あと私が歌詞で苦しんでいるとき、思わずメールしちゃったこともあります(笑)。

「あげなきゃよかった」曲とハードじゃないライブツアー

──3曲目は2014年12月のBillboard Live TOKYOでのライブ音源。小西康陽さん作詞の「窓打つ雨」のセルフカバーバージョンです。

これはずいぶん昔、森口博子ちゃんに提供した曲なんですよ。私が作・編曲をした彼女のシングル「スピード」のカップリング曲だったから1992年かな? ウニちゃんとの出会いに似てるんですけど、スタッフさんを通じてご縁があったので小西さんに作詞をしていただいて。そうしたら本当に素晴らしい歌詞が届いたので「いいなー、私も歌いたいなー」ってずっと思っていたんです。言葉は悪いですけど「森口さんにあげなきゃよかった!」って(笑)。でも彼女自身、この曲をすごく大事にしてくれていることは知っていたので、曲を差し上げる相手としては最高でしたね。

──そしてその「最高の相手」が歌う「あげなきゃよかった」曲が、20年の歳月を経て本当に岸谷さんの手元にも戻ってきたわけですね。

私、ライブのセットリストを考えるときって、今まで作った曲を全部並べてみるんです。ソロの曲はもちろんだし、プリプリの曲も、ほかの方に提供した曲も全部。そうやって数百曲ぐらいを並べてみると、中には書いたことすら忘れてる曲もあったりして、それはそれで楽しいから(笑)。で、去年のBillboard Live TOKYOでのライブの前にも全曲並べてみたんですけど、そのとき「あっ、この曲やりたい!」と思って。それで実際にやってみたら、とてもよかったので「せっかく録ってあるんならシングルに入れちゃおうかな」って(笑)。確かにスタジオで録ったものに比べると歌い方も演奏もラフではあるんですけど、それでもやっぱりライブに敵うものってなくて。ちょっとくらい間違えても気迫でなんとかなりますから(笑)。その気迫がちゃんと録音されてました。

──で、ライブといえば9月からはツアーが始まります。全国8カ所、計10公演と、なかなかハードそうですが……。

でもプリプリ時代のツアーなんて平日もほとんどライブやってましたし、ツアーに出たら10何泊するのが当たり前だったんですよ。私が“昔の人”だからなのかもしれないんですけど、土日中心のライブ日程に全然慣れてなくって。「これってツアーって言わないんじゃないの?」と思ったりもするんですよね。「土日にやって一度帰ってくるって普通の旅行じゃん!」って(笑)。だから本当はもっと日程を詰め込みたいんです。今年は祝日が入ったのでちょっと詰まりましたけど、私にしてみたら全然ハードな日程じゃないんです。

──ホントに心身ともに音楽が戻ってきたというか。今後ますます邁進していきそうですね。

とはいえ子供もいますので、音楽はやれるときにやっていく感じになるとは思います。でも音楽活動を本格的に再開したら、それ以前よりも笑っている時間が圧倒的に増えたんですよね。それは人生においてすごく重要なことだと思ってます。「DREAM」を聴いてくれるお母さんたちも、例えば「今は子供が小さいから」っていう状況であってもやりたいことはあきらめない。子供が大きくなってからの楽しみにとっておくといいと思いますよ。

ニューシングル「DREAM」 / 2015年6月24日発売 / 1300円 / SME Records / SECL-1719
ニューシングル「DREAM」
収録曲
  1. DREAM
    [作詞・作曲:岸谷香]
  2. VANITY FAIR
    [作詞:木村ウニ(蜜) / 作曲:岸谷香]
  3. 窓打つ雨(Live at Billboard Live TOKYO)
    [作詞:小西康陽 / 作曲:奥居香]
KAORI PARADISE -SINGING IN THE 奄美パーク-
2015年8月8日(土)鹿児島県 奄美パーク内 奄美の郷イベント広場
KAORI KISHITANI 48th SHOUT!-レッツゴー!!年女-
2015年9月19日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
2015年9月20日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
2015年9月22日(火・祝)大阪府 Zepp Namba
2015年9月23日(水・祝)愛知県 Zepp Nagoya
2015年9月26日(土)宮城県 Rensa
2015年9月27日(日)宮城県 Rensa
2015年10月3日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
2015年10月11日(日)富山県 MAIRO
2015年10月12日(月・祝)新潟県 新潟LOTS
2015年10月17日(土)東京都 Zepp Tokyo
岸谷香(キシタニカオリ)

岸谷香

1967年生まれのボーカリスト、シンガーソングライター。1986年にガールズバンド・プリンセス プリンセスのボーカリスト&ギタリストとしてデビューし「Diamonds」「世界でいちばん熱い夏」などビッグヒットを連発。それらの作曲家としても多大な注目を集める。1996年のバンド解散後、俳優・岸谷五朗と結婚。しばしの休養ののち、シングル「ハッピーマン」でソロデビューを果たす。以来出産を機にそれまでの奥居香から岸谷香に名義を改めつつ、コンスタントにリリースを重ね、また他アーティストへの楽曲提供、プロデュースワークなどを行うも、2006年前後より育児中心の生活にシフト。以来ソロライブシリーズ「準備体操ライブ ~さびないようにね!~」を不定期に展開していたが、2011年、東日本大震災復興支援のためにプリンセス プリンセスを期間限定で復活。東京・東京ドーム公演を開催し、また2012年末の「NHK紅白歌合戦」にバンド名義で出演した。そして2014年5月にソロ名義のベストアルバム「The Best and More」を、6月には約6年ぶりとなるシングル「Romantic Warriors」を発表。2015年6月には復帰後2作目となる10thソロシングル「DREAM」をリリースした。