音楽ナタリー Power Push - きくおはな

きくお×花たんが描く“壊れたおとぎ話”

ボーカリストのYURiCa/花たんとボカロPとして知られるきくおが、新ユニット・きくおはなを結成。デビューアルバム「第一幕」を3月30日にリリースする。花たんのアルバムにきくおが書き下ろし曲を提供するなど、これまで何度もタッグを組んできた2人はなぜユニットを結成するに至ったのか。音楽ナタリーでは花たんときくおにインタビューを実施し、ユニット結成の経緯や“壊れたおとぎ話”をテーマにした今作の制作過程などを聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦

 
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「あの話、まだ諦めてませんから」

──花たんさんがユニットを組んでアルバムを発表するのは今回が初めてですよね。どういうきっかけで「きくおはな」というユニットは誕生したんですか?

YURiCa/花たん もともと「一緒に作品を作りたいね」という話を3年くらい前にしていたんですけど、実際には動けていなくて。それで私の前回のアルバム「Flower Rail」(2015年10月発売)できくおさんに書き下ろしをお願いするときに、「あの話、まだ諦めていませんから」って伝えたら、きくおさんも同じように言ってくださって。

きくお 僕が花たんの歌に最初に出会ったのが、5年くらい前なんです。僕が作った「月の妖怪」というボカロ曲の“歌ってみた”動画だったんですけど、当時から「すげー歌がうまい人だ!」と思っていて。それから僕の曲を歌ってもらったり、書き下ろし曲を提供したりしたことはあったんですけど、もっとガッチリ組んで作品を作りたいなとずっと考えていて。花たんからも前向きなことを言ってもらってたので、「Flower Rail」のときの提供曲「うらみのワルツ」という曲を締め切りの2、3カ月前に書き上げて「すごく早く1曲作れたので、この機会にアルバムを作りませんか?」と話してみたんです。

──音楽ナタリーでの「Flower Rail」特集(参照:YURiCa/花たん「Flower Rail」インタビュー)では、きくおさんからメッセージをいただきました。きくおさんは提供曲「うらみのワルツ」について「みんなの夢を叶えてくれる、おとぎの国の話です」とコメントを寄せていたのですが、今回のアルバムはこの「おとぎの国」をテーマにした作品なんですよね?

きくお そうですね。ただ普通のおとぎ話ではなくて、今回のアルバムのテーマは “ぶっ壊れおとぎ話”なんです。

──“ぶっ壊れ”とは、どういうことなんですか?

きくお 例えば、楽しげな雰囲気があっても歌の舞台になっているのが墓場だったり、快楽の虜になって破滅してしまう話だったり。各楽曲の中に必ずダークな要素を入れているんです。

──「うらみのワルツ」を書き上げたときからすでにその構想はあったんですね。

きくお そうですね。全体的にものすごく濃い色を出して、アルバム独特の世界が広がるようなものが作れないか考えていたんです。「うらみのワルツ」という楽曲はアルバムの世界の一部として書き上げたものでした。

花たんの実力×きくおの個性=ぶっ壊れおとぎ話

──今作できくおさんが書いた楽曲の歌詞には、ところどころに残酷な要素が散りばめられています。なぜ単なるおとぎ話ではなく、物語を“ぶっ壊す”必要があったんですか?

きくお 自分がやりたかったことですし、花たんにもそういう世界観が絶対合うと思ったからですね。花たんはどちらかというと大人っぽい歌い方をするボーカリストだと思うんですけど、ただ大人っぽくてパワフルな歌唱は、これまでのアルバムやライブで披露されているんです。だから僕と一緒にやるなら、大人っぽいんだけどどこかミステリアスでおどろおどろしい感じ。それこそ「月の妖怪」を歌ってもらったときのイメージでアルバムを作ってみたいと思ったんですよね。

──ということは、きくおさんが考えていた“ぶっ壊れおとぎ話”は、花たんさんというボーカリストありきで生まれた世界観だったんですね。

きくお そうですね。この世界観を表現できるのは花たんしかいませんね。花たんは楽曲にいろいろな表情を付けられるボーカリストだから、その実力を十分に発揮できる形は物語だと思うんです。そこに僕の個性を掛け合わせたら“ぶっ壊れおとぎ話”という1つの答えにたどり着いた感じですね。

1stアルバム「第一幕」/ 2016年3月30日発売 / Subcul-rise Record / 3024円 / SCGA-00045
「第一幕」
初回限定盤 [CD+DVD]
通常盤 [CD]
CD収録曲
  1. 第一幕 開演(Interlude)
  2. デザート・シアター
  3. 光よ
  4. 朝さん夜さん
  5. オオカミ男
  6. 紙人形
  7. 幕間 ~誘いの旋律~(Interlude)
  8. うらみのワルツ
  9. のぼれ!すすめ!高い塔
  10. ながいきの神様
  11. セカセカ劇場
  12. 夜行性
Amazon限定特典ボカロver.CD収録曲
  1. のぼれ!すすめ!高い塔
  2. 光よ
  3. 紙人形
きくお

サウンドクリエイター。動画共有サイトにVOCALOIDの楽曲を投稿するなどボカロPとしても知られている。2010年に自身のインスト曲を集めたアルバム「夢の鐘」を発表。また2011年にはVOCALOIDを使用した楽曲で構成されたアルバム「きくおミク」をリリースしている。2014年には、映画「5つ数えれば君の夢」の主題歌として、東京女子流に「月の気まぐれ」を提供した。

YURiCa/花たん(ユリカ/ハナタン)

ニコニコ動画やYouTubeなどの動画共有サイトを中心に活動する女性シンガー。2008年2月に「ハジメテノオト」の歌唱動画を初投稿した。2009年4月に投稿した「ロミオとシンデレラ」が“歌ってみた”カテゴリでランキング1位を獲得し、その知名度を一気に広める。2011年6月には1stアルバム「FLOWER DROPS」をリリース。アルバム収録曲「笹舟」は、TBSのバラエティ番組「教科書にのせたい!」のエンディングテーマとしてオンエアされた。2013年にはボカロ曲のカバーを集めたアルバム「FLOWER」を発表している。2015年8月に初のワンマンライブ「『Flower Rail』YURiCa/花たん ShowCase Live」を開催。同年10月にアルバム「Flower Rail」をリリースした。