ナタリー PowerPush - KETTLES
気にしてばっかりのロックスター 目指すは「おいしいバンド」
伸び伸びと遊んでるうちにできちゃいました
──そんな中、音楽配信サイト「Majix」からの音源リリースは大きな転機になったのでは? これはどのような経緯で決まったんでしょうか。
オカヤス 最初のCD-Rができて、ちょっとしてからUK PROJECTに音源を送ったことがあって。すっかり忘れてたんですけど、1年ぐらい経った頃にUKの方が突然ライブを観に来てくれたんですよ。「こんなの売れねえよ」って、でも机の引き出しに1年ぐらい捨てずに入れてたんですって(笑)。ずっと気にしてくれてたみたいで、Majixが始まるタイミングで話をもらったんです。
コイケ 配信だったら、間違って売れるんじゃないかなと。
──間違って(笑)。ちゃんとスタジオに入るレコーディングはこれが初めてだったわけですよね。スタジオレコーディングという作業には元々興味や憧れはありました?
オカヤス 私は結構好きかも。コイケさんは曲が良ければっていうタイプ。私は結構作品作りみたいなのが好きなんで。
コイケ そうですね。こいつがいなかったら多分「一発録音でいいんじゃない?」って言ってた。
オカヤス 最初のCD-Rも細かいことはコイケさんに内緒でほとんど1人でやって、最後に「気になるところがあったら言って」って伝えたぐらいだったんです。
──レコーディングに興味がある人だったら、スタジオの雰囲気だけでちょっとテンション上がりますよね。
オカヤス 上がります上がります! 私すぐ調子に乗って舞い上がっちゃうんで。エンジニアさんがすごくいい人で「バンドが一番良い状態で音を出せるのが、一番良い録音だ」っていう人だったので、伸び伸びと遊んでるうちにできちゃいましたね。
スタジオで偶然生まれ変わった「気にしてばっかり」
──今回のアルバム「ビー・マイ・ケトル」は、KETTLESのこれまでを総括したような作品になりましたね。「気にしてばっかり」はKETTLES結成時からある曲ですけど、最初にKETTLESのライブを観たとき、一番印象に残ったのはこの曲でした。名刺代わりの1曲と言えば、現時点ではこの曲になるのかなと思ったのですが。
オカヤス この曲、最初の頃はTHE VASELINESみたいな感じをイメージしてて、全然違うアレンジだったんですよ。あるとき私がスタジオでTHE BEATLESの「Tomorrow never knows」のドラムを叩いてたら、コイケさんがふざけてリフを入れてきて。それがこの「気にしてばっかり」のアレンジに発展したんです。
──影響を受けた音楽の解釈の仕方が独特ですよね。
オカヤス 私はギターのコードがわかんないから、コイケさんに「♪ティリーリーリーリーのところは、♪ティーーッていう音を出して、次ティーッね」みたいな感じで伝えるんですよ。それで変なコードになっちゃったり。逆にドラムは、コイケさんが漠然と伝えてきたものをがんばって練習する。だから普通に楽器を弾ける人なら変なフレーズだと思うようなものがちょこちょこ入ってるんです。
──そういう形で意思の疎通が取れているのだとしたら、確かにもう1人メンバーが入ってきても付いてこられないでしょうね。
コイケ ははは。もうふざけてるとしか思えなかったり「早くやろうよ」ってなっちゃうところが、俺らにとっては大切なんですよ。
ハヤシ(POLYSICS)、N'夙川BOYS、呂布の参加
──「夢の中まで」はPOLYSICSのハヤシさんがプロデュースで参加されてますけど、もともと何かつながりがあったんですか?
オカヤス いや、今年の初めにやったライブを観にきてくれて。ライブが終わって「良かったよ」って声をかけてもらえたんですけど、そのライブがきっかけでハヤシさんにプロデュースをお願いすることができました。
コイケ 「夢の中まで」は配信音源で聴いたイメージとライブの感じがだいぶ違ったみたいで。そのライブの感じで録ったほうがいいんじゃないかって。
オカヤス 「イメージが浮かんだから」って引き受けてくれることになったんです。
──初めての外部プロデューサーを迎えることになったわけですよね。どんな感じでした?
コイケ いや、もう全然違いましたね。俺らが思ってたレコーディングとは。録り方ひとつとっても「そんなアイデアがあるんだ」とか、ギターって「こんないい音が出るんだ!」とか。
オカヤス ビックリしたよね。
コイケ 違いすぎて。俺の今までなんだったんだろうなって(笑)。
──「デビル・ハート」に参加しているN'夙川BOYSは?
コイケ 俺らはベースレスだし男女だし、前から何かとN'夙川BOYSの噂は聞いていて。それでライブを観に行ったら「うわ、やられたー!これはすごい!」と。悔しさもちょっとあったけど、最終的にはうれしかったというか「こんなバンドがいるんだー!」っていう。それでちょこちょこライブ観に行ってるうちに話すようになって。そこから俺らのイベントにも出てもらったりしてて、「デビル・ハート」を一緒にやったらいい感じになるなぁと思って、お願いしてみたんですけど。
オカヤス 快く受けてもらえて。
──元ズットズレテルズの呂布さんに関しては「KETTLESblog」でいきさつを読みましたけど、ミックス当日に急遽フリースタイルラップで参加されたとか。
オカヤス アルバムのレコーディング中にヒップホップの曲を急遽作ろうって話になって、「パンクミュージック」を作ったんですけど、レコーディングの1週間ぐらい前に出たイベントに、呂布くんも出てたんですよ。私は「パンクミュージック」で初めてラップを録るから、尋常じゃない熱い視線で呂布くんを見てて(笑)。その打ち上げで仲良くなって、「うちら今録ってるから聴いてね。ちょっとパラッパラッパーみたいなゆるーい曲だけど」って言ったら、優しく「オーケーイ」って答えてくれて。それでミックスの日に「今日できるけど遊びに来る? というか歌う?」って電話したら夜中なのに来てくれて、そのまま1回聴いてパーッと。「うわっ、本物のフリースタイルラップだ!」って(笑)。
コイケ 「ラッパーだ! やっべえ!」って。
オカヤス 「すげー! もっと歌ってもっと歌って!」ってお願いしたら「ダメです」って断られました(笑)。
CD収録曲
- つまんないから
- 気にしてばっかり
- 夢の中まで
- ELEPHANT STONE
- デビル・ハート
- 扉ない
- コレクション
- パンクミュージック
- 傘忘れた
- まだまだ
- 今日も過ぎてく
- 手当たり次第
- 目が痛ぇ
KETTLES(けとるす)
コイケ(Vo, G)、オカヤス(Dr, Vo)の2人組バンドとして2008年8月に結成。東京・下北沢を拠点にライブ活動を行い、2010年9月には音楽配信サイト「Majix」より1stアルバム「ビー・マイ・ケトル」を発表した。ポップな楽曲センスとオリジナリティあふれる演奏が話題を集め、2011年6月15日にはハヤシ(POLYSICS)のプロデュースによる新録音源などを加えたCDアルバム「ビー・マイ・ケトル」がリリースされる。