ナタリー PowerPush - 毛皮のマリーズ
志磨遼平、ポップシングル「Mary Lou」を大いに語る
この歌に深い意味は一切ないんです
──めちゃくちゃ言ってますが(笑)。「Mary Lou」の歌詞についても訊かせてください。思春期前の男の子と女の子が恋の逃避行。これも「シングル仕様」なんですか?
いや、そんなことないですよ。こういうタイプの歌詞──主人公がいて、ちょっとした物語になってる歌詞が半分以上ですから、僕は。「悲しい男」「すてきなモリー」「サンデーモーニング」。ポール・マッカートニーの得意としてる感じですよね。「ELEANOR RIGBY」とか「LADY MADONNA」とか。「ビューティフル」みたいな、志磨遼平の志磨遼平による志磨遼平のための歌は全体の3分の1くらいじゃないですか。
──ストーリーテラー的なスタイルの歌詞において、「少女」は重要なモチーフなんですか?
そうですね。ロリコンなんで。
──(笑)。
これ(ロリコン発言)で逃げてるんですよ、今回。この歌に深い意味は一切ないんです、ホントに思いつきなんで。「Mary Louは誰がモデルなんですか?」とか「イノセントな何かが?」とか訊かれるんですけど、そんなんじゃ全然ないっていう。なんていうか、ラブソングを書くときもね、セクシャルな表現が苦手なんですよ。古風な人間なので(笑)。例えば「夜のトワイライト」みたいな言葉を使ってしまったら、「もうすぐ朝が来る」とか、ピロートークのテンションになっていくじゃないですか。そうならないようにするには、設定は幼い子がいいやろうなっていう。「甘い口づけを大人は知らない」って歌えば、「あ、子供なんやな」ってことになるでしょ。だから、スキルで書いてる歌詞なんですよ、どっちかっていえば。あまり温度がないっていうか──あ、それで信藤さん(デザイナー・信藤三雄)とか川村さん(ビデオクリップ監督・川村ケンスケ)は「(Mary Louは)実在してない感じがする」って言ってたのか。なるほど、そういうことかもしれないですねえ。やっぱり鋭いですねえ、あの人たちは。
我々は自分の部屋で、1人で時代の夜明けを迎える世代
──2曲目の「コミック・ジェネレイション」はもっとリアルなメッセージが含まれてて。
うん、明らかに何か言おうとしてますね。
──我々は「コミック・ジェネレイション」(=マンガ世代)である、と。ロックミュージックがその役割を担っていた時代もあったわけですが……。
そうすね。例えば1969年なんてすごいじゃないですか。THE BEATLESの「ABBEY ROAD」、LED ZEPPELINの「LED ZEPPELIN II」、KING CRIMSONのデビューも1969年でしょ? ウッドストックもあったし、そりゃあ「ロックこそマイジェネレーション!」ってことになりますよ。で、僕らの世代の共通体験は何か? って言ったら、やっぱりマンガやと思うんですよね。「SLAM DUNK」やったり「稲中」やったり、マンガじゃないですけど「ごっつええ感じ」とかね。
──なるほど。
実験的な作品もあるんですよね、そこには。例えば「SLAM DUNK」のクライマックスの回はフキダシが一切ないんですよ。そんなマンガ、見たことないじゃないですか。それって、1969年にたくさんの人が「今までに聴いたことのないロックだ!」って驚いたことと通じてると思うんですよね。ジャンルもすごく広くて、エッチなものだったり、ギャグマンガだったり、シュールとか哲学とか人間とは?とか。
──価値観の形成にも影響してる、と。
うん、僕らの世代はそうだと思います。ロックに関しては各々で発見する感じですよね。中1のとき、僕の人生にSEX PISTOLSが登場した、とか。そこで1人ひとりが衝撃を受けてるわけです。「ガビーン! なんだこれは!?」って。ウッドストックの時代と違って、自分の部屋の中で、1人で時代の夜明けを迎えてるっていう。
──じゃあ今の10代は「YouTubeジェネレーション」かもしれないですね。
うん、ぜんぶ関連動画です。しかも無料だし。
毛皮のマリーズ
「コミカル・ヒステリー・ツアー」
- 2010年11月5日(金)
大阪府 心斎橋CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2010年11月12日(金)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2010年12月17日(金)
東京都 SHIBUYA-AX
OPEN 18:00 / START 19:00
毛皮のマリーズ(けがわのまりーず)
志磨遼平(Vo)、越川和磨(G)、栗本ヒロコ(B)、富士山富士夫(Dr)による4人組ロックバンド。2003年に結成し、都内のライブハウスを中心に活動。2005年に発表した自主制作CD-R「毛皮のマリーズ」が話題を呼び、2006年9月にDECKRECから1stアルバム「戦争をしよう」をリリースする。その後も音源の発表を重ねつつ、ライブの動員も激増。日本コロムビアと契約し、2010年4月21日にアルバム「毛皮のマリーズ」をリリース。