ナタリー PowerPush - Jeepta

“4者4様の面白み”を詰め込んだシングル「日進月歩」引っさげメジャー進出

歌詞を書く作業と自分を探す作業を一緒に行ってる

──歌詞についても少し聞かせてください。今作は、歌詞がとても前向きだと感じました。最初の自主制作盤シングル「リコール」のときからJeeptaらしい音や歌詞の片鱗はありましたが、現在はより前向きで、より言葉数が多く、より勢いがあるものへと進化したように思えます。この歌詞に込めた思い、それからできたときの状況はどんなものだったのでしょう?

石井 曲はいつもどおりで……わりとメロディが先に出てきました。スタジオセッションの段階でメロディがだんだんできてきて、そこに言葉を乗せていった感じ。中でも、サビの最後の「一寸先が闇だって」っていうフレーズが早い段階で出てきて。

──ポンと生まれた?

石井 そうですね。その、メロディに対してリズム感だったり言葉の感じだったりがすごくハマって。そこで、この曲のテーマ、言うべきことが見えて、そこから広げていったんです。

──この曲は、言いたいことがはっきりしてる曲だと思ったんですね。リスナーである私たちもこの曲を聴くことで「一歩踏み出さなきゃ」って思えるような、すごい強い歌だと。なので、石井さんの中からどうしてこういう言葉が出てきたのかとお伺いしたくて。

石井 いや……今までも結構前向きな歌詞書いてるつもりだったんですけど(笑)。なんか、簡単に前向きに行こうよって感じじゃないですけど、最終的には前を向ければいいな、と。迷い巡る考えもあるけれど、最終的にはそれを糧として次に行く。そういう歌を歌うことが、昔から自分がやるべきことだろうなとは思ってたんです。僕の書く歌詞は曲によっていろいろテーマも違うし、元々は僕がどこかから借りてきた言葉なのでこんなこと言うのはおこがましいんですけど、それが「自分のあのときを歌ってる」ってドンピシャに刺さる人もいるだろうし。そういうふうに、自分に投影したりいろいろ感じてもらって、最終的に前を向いてもらえたらいい。常々そう思いながら歌詞を書いてきたつもりなんです。

──なるほど。それから、石井さんの作る曲や歌詞は、情景が浮かぶ、感情を揺さぶられるものであるという意味で、非常に文学的で深いと感じました。石井さんの中からそういう音や言葉が生まれてくる土壌、元になるものはなんですか?

石井 僕は特に文学少年ってわけじゃないんです。本は読みますけど、そんなには……読むようになったのも20歳ぐらいからだし。小さい頃はスポーツ少年だったからずっと外にばっかりいて、それからも読むっていったらマンガぐらいだったので。でも、深みがあるものはすごく好きかな。一見しただけではすべては得られないっていうもののほうが好き。あとは、僕の歌詞って初めは適当に歌った言葉だけでしかなくって、その先作り込んでいくときに歌詞を書く作業と自分を探す作業を一緒に行ってるからかもしれない。そういう部分が、深いって言われたものと関係してるのかな。

──自分を探す作業ですか。

石井 自分がそのとき考えてたことや自分の中にある言葉で、何を言いたいのか。自分がこの曲で伝えたいこと、自分から出てきた言葉でメッセージを書くってなんなんだろうって。僕の書く作業ってそれを探すところから始まるんです。そのときそのときに自分から出てくる言葉を読み取る……そこまで意識はしてなくても、多分そういうもんなんだろうなって思ってます。

──石井さんが行ってる、自分から出てくる言葉を整理する作業は、音を作るスタジオセッションとは違って、メンバーの皆さんの前でそういう作業に取り組むわけではないんですよね。皆さんは、こういうプロセスの話を聞いていかがですか?

サトウ そうですね……まぁお互い、何を考えてるのかなんてそうそう赤裸々に見せ合う性格ではないので、卓が核を見つけて、その核に対する言葉を探してるまでの段階を見ることはないんですよ。でも、今まで長いこと一緒にやってきて、僕なりに知っている卓という人間がいて、この人がこういうことを今まで歌ってきたっていう積み重ねを知ってるので、卓がどういう言葉を探してるのかについては、信頼して待ってるんですよ。そこに関しては完全に任せっきり。信頼関係というか、卓の書いてきた詞に教えられること、考えさせられることもあるので、楽しみですね毎回。

感覚としてはアルバムを出すぐらいの気持ちで

──カップリングの新曲「向こう」は、非常に柔らかい曲調で、今までのJeeptaとはちょっと違う雰囲気のナンバーです。この、対極的な2曲を入れようと思ったのは皆さんのアイデアですか?

石井 この1枚でどっぷりJeeptaに浸かってもらいたいと思ったので、キャラクターは全然違うんだけど両方Jeeptaっぽいと僕らが思ってる曲を入れることに。もちろんすごく色は離れてはいるけど、でもこの2曲ともJeeptaなんですよって言いたくて。

──なるほど。「この1枚でJeeptaっぽさを表現したい」という気持ちが、ライブ音源が収録されることにもつながったんでしょうか。

石井 そうですね。感覚としてはアルバムを出すぐらいの気持ちで。新曲2曲を土台として、Jeeptaってどんなバンドなのかをこの1枚で聴いてほしいっていう感覚です。

メジャーデビューシングル「日進月歩」 / 2010年4月7日発売 / 1260円(税込) / pure:infinity / JBCP-4001

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CD収録曲
  1. 日進月歩
  2. 向こう
  3. LIVE from “無限階段 二段目”
Jeepta(じぷた)

2004年12月に千葉で結成。翌2005年2月に初ライブを開催する。2006年7月にchoro(G)が加入したのを機に、石井卓(Vo,G)、サトウヒロユキ(B)、青木奈菜子(Dr)を含めた4人編成となる。2007年4月に自主制作盤「リコール」を発売し、2カ月で500枚を完売させる。その後、全国各地でのライブツアーやイベント出演を経て、2008年1月にミニアルバム「シナリオ」をリリース。外資系CDショップで好セールスを記録し注目を浴びる。激走するエモーショナルなサウンドとハイトーンボーカルの応酬が、ライブハウスを中心に人気を集める。2009年6月に1stフルアルバム「傾向と対策」を発表し、バンドの持つ多面性を提示した。2009年11月に、小笠原大悟が新しくドラマーとして加入した。