ナタリー PowerPush - iLL

多作な作家ナカコーが語る モノを作っていく意味

時間も音も“最少限で最大のこと”を

──なるほど、興味深い解釈だと思います。ところでアルバムのボーナストラック「Bad Dreams DubMix」は「33曲目」とクレジットされてますが、これってナカコーさんの年齢と関係ありますか?

関係ありますね(笑)。前のアルバム(「Force」)でも、本編とボーナストラックの間を7~8分離してるんですけど、その流れがすごくキレイだなって思って。さっきの話と矛盾しますけど、アルバムで聴くことの面白みがあるというか。だから、毎年やっていこうかなって思って。

──じゃあ、来年は「34」ですね(笑)。

(笑)。長くやっていけば、意味みたいなものも深くなっていくと思うし。

──ナカコーさんって、年齢を意識することはありますか?「5年後までにこれをやりたい」とか。

あ、ありますよ。5年後というか、10年単位で考えることはあります。20代、30代、40代って。

──30代はどうですか? イメージどおりになってます?

うん、とりあえずなってますね。

──お、すごい。これだけ先のことが見えない状況の中、やりたことがやれてるっていうのは。

まあ、僕だけが見えないわけじゃないので。世の中の全員が右往左往してるんなら、別にいいじゃんっていう(笑)。八方ふさがりはみんないっしょだから、大丈夫だと思います。

──(笑)。「Minimal Maximum」というタイトルについても教えてもらえますか?

えーと、まさに“最少限で最大のこと”っていう作業だったんですよ。「∀」と制作時期が一緒で、時間的にもかなりタイトで。音楽的なところでもミニマムだと思うし、音数だったり構成だったり。

──クラフトワークに、似たタイトルのアルバムがありますよね。

ありますね。だから変えたんです(笑)。あっちはミニマム(「Minimum Maximum」)だから、こっちは「Minimal」にして。英語的には間違ってるんですけどね。いいや別に、日本人だしってことで(笑)。

ひとつ作ったらすぐ次をやるのが当たり前に

──(笑)。この先のことも聞きたいんですが、次作のことも既に考えてますか?

うん、考えてます。毎年3つか4つアイデアを出して、できるんだったらやるっていう感じなので。ひとつ作ったら、すぐ次をやるっていうのが当たり前になってますからね。キューンさえ大丈夫だったら(笑)。

──アイデアが尽きることはない、と。

尽きないですね。「やったことがないからやりたい」だったり、「これは面白そうだからやりたい」だったり。さっきも言いましたけど、「自分で作品をコントロールしながら作っていく」っていうところも見せたいし。そうなると、常に何か作らなくちゃいけないので。

──別プロジェクト「NYANTRA」も動いてますよね、最近は。

(「NYANTRA」は)もうちょっと気楽に出せる感じなんですけどね。基準みたいなものがあるんですよ、「これはiLLとして出したい」っていう。NYANTRAはもっと個人的というか、日記みたいな位置づけなんです。それがたまったら出すっていう。

──なるほど。これだけ制作を続けていたら、他のことをやる時間はないですよねえ?

いや、やってますよ(笑)。

──遊ぶ時間もあります?

全然あります。よく「ヒマだー」って言ってますから(笑)。

ニューアルバム「Minimal Maximum」 / 2010年10月13日発売 / 3059円(税込) / Ki/oon Records / KSCL-1636

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CD収録曲
  1. Eden
  2. On The Run
  3. Distortion
  4. Good Day
  5. Seagull
  6. Downer
  7. Love
  8. Living On Dance
  9. Zero
  10. With U
  11. Bad Dreams
iLL(いる)

2005年に解散したロックバンド・SUPERCARのフロントマン、中村弘二による音楽プロジェクト。2006年5月に全曲インストゥルメンタルによるアルバム「Sound by iLL」をリリースし、「FUJI ROCK FESTIVAL'06」ではレーザーを駆使した演出と自然との共演で高い評価を得る。2007年1月には文化庁メディア芸術祭10周年記念展にて演奏。その後も精力的なリリースとライブ活動を展開し、2009年7月には砂原良徳プロデュースのシングル「Deadly Lovely」を、8月には4枚目のアルバム「Force」を発表。2010年夏の「FUJI ROCK FESTIVAL'10」への出演も決定した。CM音楽の制作やリミックスなどでもその才能を発揮している。