音楽ナタリー Power Push - Hi-STANDARD

難波章浩が語る、今のハイスタ

Hi-STANDARDが12月7日にカバーシングル「Vintage & New, Gift Shits」をリリースする。

10月に、約16年半ぶりの新作「ANOTHER STARTING LINE」を事前告知なしで発売して世間を驚かせたハイスタ(参照:Hi-STANDARD、16年ぶり新作「ANOTHER STARTING LINE」発売)。音楽ナタリーではこのたび難波章浩(Vo, B)にインタビューを実施し、カバーシングルについてはもちろん、10月からの一連の動きについてじっくりと話を聞いた。

取材・文 / 阿刀“DA”大志 撮影 / 西槇太一

事前告知なしでリリースされた「ANOTHER STARTING LINE」

難波章浩(Vo, B)

──事前告知なし、最初は通販なしの店頭のみでの販売という「ANOTHER STARTING LINE」のリリースに関する一連の流れは実に見事でした。

本当に? うれしいね。

──売り上げも好調で。

そんなに順位とかは気にならないかな。だってプロモーションをしないでリリースしようって決まったときから「順位は捨てよう」ってメンバーと話してたのよ。「ダメでもいいじゃん、売れなくてもいいじゃん」って。だから、順位のことよりもみんなからの反響が大きかったことがうれしかったね。

──とはいえ、30万枚に迫るセールスを残しているわけで。この結果を受けてどう思いますか?

2000年に活動休止するまでのHi-STANDARDを観てくれたり好きだったりしてくれた人たちが、今回どれぐらい聴いてくれたのか気になるな。それと、活動休止したあととか今回のリリースでHi-STANDARDを知った人がどれぐらいいるのかなっていうのも気になるっちゃ気になる。

──YouTubeにアップされてる「ANOTHER STARTING LINE」のミュージックビデオには中学生もコメントしてますよね。

してるよねえ! 俺の長男が中2なんだけど校内放送でHi-STANDARDがかかるらしいのよ。で、「お前の父ちゃん、すごいな! 本当にいいな! 毎日聴いてる!」みたいなことを言われるんだって。今の中学生にリアルに響いてるって半端ないよね。

あの頃のハイスタなんていない

──世代を越えて響かせたいという思いは3人の中で最初からあったんですよね。

もちろんあった。お父さんやお母さんがHi-STANDARDを好きで、小さい頃から聴かされてファンになった小学生とか幼稚園児ぐらいの子にも響いてもらいたかったし、(Hi-STANDARDがバンドの活動を休止させた)2000年までに好きだった子にも響いてもらいたかったし、今回初めて聴く人にもやっぱりちゃんと響いてもらいたかった。だからぶっちゃけ言うと、作品を作るっていう意味では今回、俺の中でめちゃめちゃプレッシャーがかかってた。

──当然そうでしょうね。

だって、みんなの中で「ハイスタ、きたかー!」っていう気持ちはあってもさ、「でも音がなあ」とかさ「曲がなあ」ってなったら……かわいそうじゃん。今回もタワレコで泣きながらレジに並んでた人がいたっていうんだよ? お店でCD持って並ぶときって泣くっけ?

──普通は泣かないですね(笑)。

難波章浩(Vo, B)

それで家帰ってCDかけて、そこでドカーンと「うわあ! きたあ!」ってならなかったらかわいそうだもん。その思いに応えないとって3人共がんばったよね。たまに「当時のスピード感がなくなってる」とか「もっと違う曲が欲しかった」とか言われるんだけど、それもわかるのよ。だけど、俺はやっぱりあの4曲で今のHi-STANDARDを表現したかったし、みんなに響かせたかったんだよね。

──「“あの頃”みたいなハイスタを」という意見は確かにちらほら見かけましたけど、ハイスタって1枚として同じような作品はないですよね。

そうなんだよね。音も全然違うし。

──1999年にリリースされた「MAKING THE ROAD」だって、今でこそ“パンクの基本中の基本”みたいな扱いになってるけど、ボサノバやハードコアパンクを採り入れるなど、当時のハイスタとしては実験作でしたし。

そうだよね。だから今回も新しくいきたかったし、“戻る”っていう気持ちはまったくなかった。“あの頃の俺たち”なんてもういないわけよ。時代も年齢も違うし、16年っていったらHi-STANDARDがそれまでに活動してた10年よりも長いわけじゃん。だから「今のハイスタを出そう。それを表現するにはこの4曲だね」ってなった。ほかにもいろんなタイプのデモがあったんだけどね。

カバーシングル「Vintage & New, Gift Shits」2016年12月7日発売 / PIZZA OF DEATH RECORDS / PZCA-80 / 1296円
「Vintage & New, Gift Shits」
収録曲
  1. I Get Around
  2. You Can't Hurry Love
  3. Money Changes Everything
  4. Happy Xmas(War Is Over)
公演情報
GOOD JOB! RYAN TOUR 2016
  • 2016年12月3日(土)岩手県 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
    <出演者>
    Hi-STANDARD / GOOD4NOTHING
  • 2016年12月5日(月)宮城県 石巻BLUE RESISTANCE
    <出演者>
    Hi-STANDARD / GOOD4NOTHING
  • 2016年12月6日(火)宮城県 仙台PIT
    <出演者>
    Hi-STANDARD / locofrank
  • 2016年12月8日(木)新潟県 新潟LOTS
    <出演者>
    Hi-STANDARD / 04 Limited Sazabys
AIR JAM 2016
  • 2016年12月23日(金・祝)福岡県 福岡 ヤフオク!ドーム
    <出演者>
    Hi-STANDARD / ONE OK ROCK / MAN WITH A MISSION / 10-FEET / 東京スカパラダイスオーケストラ / BRAHMAN / Crossfaith / WANIMA / HEY-SMITH / The BONEZ / HAWAIIAN6
  • AIR JAM 2016
Hi-STANDARD(ハイスタンダード)
Hi-STANDARD

難波章浩(Vo, B)、横山健(G, Vo)、恒岡章(Dr)からなるパンクロックバンド。1991年から活動を開始し、都内を中心にライブ活動を展開。1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし知名度を高める。1995年に「GROWING UP」、1997年には「ANGRY FIST」という2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。これらの作品は海外でもリリースされ、好セールスを記録した。また、この時期には海外でのライブ活動も開始。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。1999年に自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がメジャーから独立し、第1弾作品としてアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。同作はインディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。その後も国内外で精力的なライブ活動を続けたが、2000年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止。メンバーはそれぞれソロやバンドで音楽活動を続けた。

約11年におよぶ空白の時間を経て、2011年4月に難波、横山、恒岡がTwitter上で3人同時に「9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM。届け!!!」とツイート。そして翌5月には、9月18日に横浜スタジアムで東日本大震災の復興支援を目的とした「AIR JAM 2011」の開催と、Hi-STANDARDがライブを行うことが明らかになる。国内外15組のアーティストが出演したこのフェスで、ハイスタはヘッドライナーとして11年ぶりにライブを実施した。2012年2月にはこの日のライブを収めたライブDVD「Live at AIR JAM 2011」を発売。同年9月には宮城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原で「AIR JAM 2012」を2日間にわたり行った。2016年10月に事前告知なしで突如16年半ぶりの新作「ANOTHER STARTING LINE」をリリース。同年12月にカバーシングル「Vintage & New, Gift Shits」を発表し、レコ発ツアー「GOOD JOB! RYAN TOUR 2016」、4年ぶりの「AIR JAM」を開催する。