ナタリー PowerPush - 日笠陽子
自称「恥ずかしがりの緊張しい」声優 一大プロジェクトの看板を背負う
「人はいたい場所にしかいたくない」
──なんで日笠陽子の周りにはそうやって適材が集まるんだと思います?
長濱 それは実は簡単な話なんですよ。アニメーションの世界でもそうなんですけど、例えばオレが一過性でもいいからとにかく売れる作品を作りたいって言ったら、そういうスタッフが集まるんです。オレの周りにそういうスタッフが集まらないのは、そういう作品を作りたくないから。だからときどき「君はいいよな」「実験的な作品を作れてて」なんて言われるんですけど、その人はそんなことを言いながら、実のところ、こっちには来たくないんですよ。
──我々がいきなり「惡の華」や「蟲師」を撮れはしないけど、アニメーションの世界にいる人ならノウハウはある。本当にやりたきゃやりゃいいじゃんって話ですもんね。
長濱 そうなんですよ。でもやらないんです。人はいたい場所にしかいたくないから。日笠さんの場合も同じで、彼女が作りたい作品を作ろうとするから、それと同じ方向を目指している人間が「僕もそれをやりたいです」「私もそう思ってました」って集まってきているだけ。日笠さんが「私はこういうことをやりたいんです」ってちゃんと発信しているから「あっ、それ僕もやりたいんです」「僕の知り合いにもこういう人がいるんですよ」っていうふうに人が集まってくる。日笠さんは「日笠のために」って言ってたけど、実はライトスタッフが日笠陽子のもとに集められたんじゃない。単に日笠陽子に賛同しているだけなんです。
日笠 そうかもしれませんね。今いるスタッフは皆さん発信してましたから。「こういうことをやりたい」って。私はお芝居をするのも歌うのも好きー! 表現するの大好きー!って発信しているのと同じように、監督は映像を作るのが大好きー! メイクさんはメイク好きー! 衣装さんもホンットに洋服を作るのが大好きー!ってオーラを出してたんですよ。そういう人ってなんかわかりますよね。
長濱 うん。で、オレを誘ったのと同じように、日笠さんはそういうタイプとちょっとでもすれ違うと「すごくいいじゃん!」「今度なんかやろう」みたいな話をしちゃう。しかも現場スタッフだけじゃなくて、プロデューサーさんやマネージャーさんみたいな中間に入ってくる人、コーディネイトする人たちも発信しているから。日笠さんの「こういうものがやりたい」っていうメッセージを受信して「そういうことをやりたいんなら、こういう人がいたなあ」とか「こういう人はどうだろう」ってことでいろんな人を連れてくる。必ずしも日笠陽子本人が見つけてこなくてもいい。自然と集まって来ちゃうんです。
「……いや、長濱さんは今回限りなんで」
日笠 だから私がプロジェクトの頂点にいて、みんなが“ついてきてくれる”っていうんじゃなくて、“一緒に走ってる”感覚なんですよね。……でも今はそれが怖くて。できあがったものを観ていると「最高のスタッフさんと最高のものを作れて幸せだなあ」とは思うんだけど、それと同時に、長濱さんがいてくれたことで自分に伝える能力がないこともわかってしまったので……。
長濱 オレの責任かい!(笑)
日笠 次、長濱さんはいないのにどうなるんだろう?って不安になっちゃうんですよ。
長濱 へっ!? オレ「今回だけですよ」とか言ってないよね?
日笠 でもなんか暗黙の了解みたいな空気があるのかなって思っていて……。
長濱 いやいやいや。暗黙の了解って何? このあいだも日笠さんが「やりきっちゃいましたわ」って言ってたから「やりきってないだろう! まだやることあるでしょう!」って話をしたじゃん! それともレーベルの人が(視線を下に落としながら)「……いや、長濱さんは今回限りなんで」とかやってた!?
──あはははは(笑)。
日笠 もちろんやってないんですけど……。「日笠陽子プロジェクト 3カ月連続リリース」って言われてたから「ああ、このプロジェクトは一回これでおしまいなんだな」って思うじゃないですかー! だから「Glamorous days」を書いてくれたTom-H@ckさんとも、もう二度と会えないんだと思ってましたもん。
──日笠さんが演じた澪のリードボーカル曲こそ書いてないものの「けいおん!」当時からのお付き合いなのに?(笑)
日笠 そうなんですけど、なんか私の中では「新しいものを作りましょうね」って言われると「新しいものってことは新しい人と一緒にやるのか」って気がしていて……。新しい=Newだから。
長濱 今の発言でちょっとわかったんですけど、PVを撮って以来、なんかよそよそしかったんですよ。「おはよー!」とか言っても「……あっ、……ざいます」みたいな感じで。「惡の華」の現場でも共演の伊瀬茉莉也に「伊瀬ちゃん、すごいPVができたんだよ!」とか話してるのに、その後ろにいるオレとは目を合わせてくれなくて(笑)。「あれっ? 撮ったのオレなのにその話には混ぜてもらえないの?」みたいな空気を感じてたんだけど、あれはそういうことだったのか。
日笠 もう独り立ちしなきゃいけないんだと思ったんですよ!
──失礼ながら被害妄想ですよね、それ(笑)。
長濱 完全なる被害妄想ですよ! オレは日笠さんから「やろう!」って言われたらまたやりますからね!
日笠 絶対ですよ!? (ICレコーダーを指さし)今これ録音してますからね!
長濱 オレはやる気まんまんだよ!
日笠 よかったあ。なんか心がスッとしました(笑)。
- コラボレーションアルバム「Glamorous Songs」 / 2013年7月17日発売 / PONY CANYON
- 初回限定盤[CD+DVD] / 2800円 / PCCG-01345
- 通常盤[CD] / 2300円 / PCCG-01346
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CD収録曲
- Glamorous days
(作詞:稲葉エミ / 作曲・編曲:Tom-H@ck) - BALLOON
(作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:渡辺和紀) - Rhythm Linkage
(作詞・作曲:永野椎菜 / 編曲:永野椎菜、熊本克也) - Through the Looking-Glass
(作詞:leonn / 作曲:小室哲哉 / 編曲:渡辺徹) - Reclusive
(作詞・作曲・編曲:Powerless) - Neo Image
(作詞:こだまさおり / 作曲:前澤寛之 編曲:yamazo) - めざまし時計
(作詞・作曲:YADAKO(Myu) 編曲:Masse(Myu))
初回限定盤DVD収録内容
- Glamorous days(Music Video)
- Glamorous days(Music Video)
絵コンテ動画比較版
- Glamorous days
日笠陽子(ひかさようこ)
神奈川県出身の女性声優、ボーカリスト。テレビアニメ「けいおん!」の秋山澪役など、数多くの人気作で主役級のキャラクターの声を多数担当。また、メインボーカルを務めた「けいおん!」のエンディング曲「Don't say "lazy"」がゴールドディスクを獲得し、自ら考案したギャグ「てへぺろ(・ω<)」が流行語となるなど、アニメ業界外でも注目を集める。2013年5月「日笠陽子ソロプロジェクト」を立ち上げ、デビューシングル「美しき残酷な世界」をリリース。6月には2ndシングル「終わらない詩」を、7月には小室哲哉らが参加するコラボレーションアルバム「Glamorous Songs」を発表した。