音楽ナタリー Power Push - 秦基博

ツアーメンバーと語る「スミレ」と音楽家としての魅力

秦くんはすごくいいプロデューサー

──ツアーのセットリストは、いつもバンドメンバーと話し合って決めるんですか?

皆川 いや、そういう打ち合わせは自分が知る限り初めてかな。

 そうですね。まあ、要は「飲みに行きましょう」ということなんですけどね(笑)。あと「青の光景」の楽曲をどこまで再現できるのかとか、ライブ用にアレンジが必要な曲を事前に把握しておきたかったんですよね。やってみないとわからないけど、それでも事前に準備しておいたほうがいいなと思って。

あらき あの打ち合わせはやってよかったです。アレンジ次第で用意する楽器も変わってくるので。

 1曲1曲の指針が決められたのもよかったですよね。「これはそのままライブで演奏できる」「これは工夫が必要」というのもわかったし。今はリハーサルを通して、それをさらにブラッシュアップしている段階ですね。

──「青の光景」は秦さん自身がアレンジ、プロデュースを手がけた作品だったわけですが、メンバーの皆さんはどんなふうに捉えていますか?

皆川真人

皆川 アルバムの収録曲で言うと、「ダイアローグ・モノローグ」が一番古い曲だと思うんですけど、そのときは「珍しく自分でアレンジするんだな」くらいに思ってたんですよ。でも、あの頃から「自分でやりたい」という気持ちは秦くんの中にあったんだろうなって思います。「Signed POP」(2013年1月発売)辺りから、僕がアレンジさせてもらう曲でも「完全にお任せします」と言われるよりも、秦くんが作った指示書みたいなものがあって、それに沿って作っていくことが増えてきたんですよね。秦くんの楽曲制作に対する欲が出てきたというのは感じていたし、その度合いが増して今回のアルバムに到達したのかなと。

──メロディだけじゃなくて、アレンジにも秦さんらしさを感じます。

皆川 歌を作る人の音作りなんだとは思いますね。アレンジャーやプロデューサーというのはバランスを取ることも考えるけど、秦くんの場合は「歌のためにこの音が必要」っていうだけで作っているというか。たぶん、わからないところは各々のミュージシャンに振ってる感じなのかなって。

 その通りです。わからないところはミュージシャンの皆さんにお願いしてます。

あらき 私は正直ビックリしたんですよね。「秦くんって、こんなに現場を仕切ることができる人だったんだ」って。作詞作曲して、歌も歌って、それが全部いい感じで。それで十分だと思うんだけど、今回はアレンジも自分でやりたいように持っていったわけですから。しかも、その中に私たちのよさもちゃんと取り入れてくれるんですよ。

 「青の光景」の制作に至るまでに、皆川さん、正人さんをはじめ、いろんなアレンジャーの方と仕事をさせてもらってきましたからね。ミュージシャンとのやり取りとか、エンジニアさんとの会話の仕方も含めて、「このやり方はいいな」というのを知らず知らずのうちに実地訓練させてもらってたんだと思います。

鈴木 秦くんはすごくいいプロデューサーだと思いますよ。あまり余計なことを言わないで、キモのことだけを伝えてくれるので。あと、デモテープのクオリティが昔に比べて上がってますよね。必要なことはそこに全部入っていて、「このフレーズはそのまま弾いたほうがいいんだな」というのもちゃんとわかる。 

皆川 “なんとなく”っていうのがないからね。「ここはこういうふうに弾いてほしいんだな」とうのがハッキリしているというか。

鈴木 そう、すごく明確。プロデューサーとしてもやっていけるんじゃないですか。

 いやいや(笑)。僕の場合、デモテープではやりたいことがわかればいいと思ってるんですよ。楽器のフレーズも、「ここはこれでいきたい」って決めている部分以外は皆さんにお任せすることも多いし。

あらき ちなみに新曲「スミレ」の冒頭のドラムフィルは、デモの段階から入ってました。レコーディングのときに違うフレーズを叩いたら「何か違う」って言われて(笑)。

 ははは(笑)。その逆もありますからね。「Sally」(「青の光景」収録)のときはゆうこさんのブレイクがカッコよくて、それをそのまま採用させてもらって。そういうこともいっぱいあるんですよ。

──弓木さんは「青の光景」を演奏してみて、どうでしたか?

弓木英梨乃

弓木 すごく緊張しましたね。秦さんのライブでギターを弾けることもそうだし、大先輩の皆さんと一緒に演奏できるのもすごいことなので。「皆さん、私の演奏についてどう思ってるのかな? 大丈夫かな?」って不安で……。

鈴木 そうは見えないけどね(笑)。

弓木 秦さんもギタリストだから、アルバムを聴いていて「このフレーズにはこだわりがあるのかな」って考えたり。そのフレーズをそのまま弾いても素敵だし、でも「何か違うことをやってほしいのかな」と思ったり……。リハーサル中に秦さんの背中を見ながら、試行錯誤してます。

 すごくいい感じですよ。弓木さんが入ってくれたことで、バンドに新しい風が吹いてるというか。

弓木 わあ! もっとがんばります! 私が言うのもアレですけど、これだけたくさんの曲を書き続けていて、さらにアレンジやプロデュースもされていて、そうやっていいものを追い求めて作り続けるのってすごいことだと思うんですよ。やっぱり秦さんは大好きなアーティストだなって思ったし、そういう方のライブでギターを弾けるのは幸せなことだなって感じています。

ニューシングル「スミレ」2016年2月24日発売 / アリオラジャパン
初回限定盤[CD+DVD]1836円 / AUCL-201~2
通常盤[CD]1300円 / AUCL-203
CD収録曲
  1. スミレ
  2. 野ばら
  3. 季節が笑う(Live at 三内丸山遺跡)
  4. ダイアローグ・モノローグ(Live at 三内丸山遺跡)
  5. トレモロ降る夜(Live at 三内丸山遺跡)
  6. Q & A(Live at 三内丸山遺跡)
  7. スミレ(backing track)
初回限定盤DVD収録内容
  • Sally -みんなでつくるMUSIC VIDEO-
ツアー情報
秦基博「HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2016-青の光景-」
  • 2016年3月5日(土)福岡県 福岡サンパレス
  • 2016年3月11日(金)岡山県 岡山シンフォニーホール
  • 2016年3月12日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2016年3月19日(土)秋田県 秋田県民会館
  • 2016年3月30日(水)京都府 ロームシアター京都
  • 2016年4月3日(日)北海道 ニトリ文化ホール
  • 2016年4月10日(日)香川県 アルファあなぶきホール 大ホール
  • 2016年4月17日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2016年4月24日(日)新潟県 新潟県民会館
  • 2016年4月28日(木)神奈川県 神奈川県民ホール
  • 2016年5月3日(火・祝)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2016年5月11日(水)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
  • 2016年5月18日(水)大阪府 オリックス劇場
  • 2016年5月19日(木)大阪府 オリックス劇場
  • 2016年5月26日(木)石川県 本多の森ホール
  • 2016年6月3日(金)東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2016年6月4日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
秦基博(ハタモトヒロ)
秦基博

オフィスオーガスタに所属する、1980年生まれ宮崎県出身のシンガーソングライター。横浜を中心に弾き語りでのライブ活動を開始し、2006年11月にシングル「シンクロ」でデビュー。柔らかな声と叙情豊かな詞、耳に残るポップなメロディで大きな注目を浴びる。2007年9月に発表した1stフルアルバム「コントラスト」が支持を集め、2009年3月に初の東京・日本武道館公演を実施。2011年には自身3度目の武道館公演を全編弾き語りで成功させた。2013年10月に自身が選曲したセレクションアルバム「ひとみみぼれ」をリリース。2014年8月発表の3DCGアニメ映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌「ひまわりの約束」は100万ダウンロードを超える大ヒットを記録し、10月発売の弾き語りベスト「evergreen」も今なおロングセールスを続けている。2015年7月に青森県の縄文遺跡群の魅力を伝える「あおもり縄文大使」に任命され、三内丸山遺跡での野外公演で4000人を動員。12月には全曲セルフプロデュースの5thアルバム「青の光景」をリリースした。2016年2月にシングル「スミレ」を発表。3月より3年ぶりとなるバンド編成での全国ツアー「HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2016-青の光景-」を開催する。