ナタリー PowerPush - 福原美穂
挑戦、努力、前進の1年半 究極のソウルがここに
「The Soul Extreme」とは、その名のとおり“究極のソウルミュージック”に福原美穂が挑戦するシリーズ作品。2010年末のミニアルバム「Regrets of Love」リリース直後から取り組んできたこのシリーズで、福原はルーツを色濃く反映させた新曲、王道カバー、コラボ曲などを発表し、AI、和田アキ子、三浦大知、Chara、レオナ・ルイスとの強力な共演を実現させた。
今回のインタビューでは、その集大成となるニューアルバム「The Best of Soul Extreme」のリリースを記念してシリーズを振り返ってもらい、始動の経緯、コラボの醍醐味、自身の成長について訊いた。シンガーとしてたゆまぬ努力を続ける彼女の真意に迫る。
取材・文 / 鳴田麻未 インタビュー撮影 / 平沼久奈
「O2 feat. AI」を初めて聴いたとき、私1人じゃ歌えないなって思った
──今回のアルバムは、2010年末から取り組んできた「The Soul Extreme」シリーズの集大成ということで。そもそもこのシリーズを始めたきっかけから教えてください。
きっかけは、もっと自分の感覚で作品を作ろうと思ったことです。ほかの人の基準に合わせるんじゃなくて、自分が感動したり、自分が良いと感じてるものだけにこだわって挑戦したかった。で、私が音楽を始めたきっかけであり、一番影響を受けているのがやっぱりソウルミュージックなんです。そこを素直に表現してみたいなって思ったのが「The Soul Extreme」の始まりです。
──それまでの福原さんは軽快なポップソングをシングルとして発表することも多かったので、本格的なソウルナンバーで固めた作品を出すのは、かなり思い切った挑戦だったのでは?
はい、多分びっくりされた方も多いと思います。私はいろんなジャンルの音楽が好きで、ソウルミュージックの起源でもあるゴスペルだったり、ブルースだったり、はたまたラテンもレゲエもロックも……。今までの作品は、そういう自分のいろんな面を見せようと作ってきたんですけど、今回は自分自身のルーツであるソウルミュージックっていうのを突き詰めて、しっかりパッケージにできないかなと思いました。
──記念すべき1作目は「O2 feat. AI」でしたが、この曲でAIさんをフィーチャリングゲストに迎えたのはなぜですか?
この曲のトラックを初めて聴いたとき、私1人じゃこれ歌えないなって思ったんです。
──というと?
曲を聴いて、すぐAIさんのことが思い浮かんだんですよね。元々AIさんとコラボレーションしたいなとは思っていたんですけど、「AIさんとだったら、この曲がもっと意味のあるものになる」って直感的に感じたんです。それでやってみたら、面白くてもう1回やりたくなっちゃって、次は「日本のソウルディーヴァと言えば」っていうところでアッコ(和田アキ子)さんにオファーして、コラボが続くことになりました。
間をどう埋めるか、札を出し合っていくのがコラボの醍醐味
──AIさんやアッコさんのほか、三浦大知さん、Charaさん、レオナ・ルイスさんとも共演されましたね。こうしたコラボ相手の選定基準は?
第一に私が大好きなアーティストであるっていうことです。それから、やっぱりソウルって言葉を作品タイトルに入れてるので、ソウルミュージックを背負ってやっているアーティスト。もちろんコラボする前に「この人とやったら面白いかな」とか「この曲は今の時代にどういうふうに響くだろう」とかちゃんと考えるんですけど、結局は自分が一番楽しんでいるというか、レコーディング中一番ワクワクしていたのは多分私だなって(笑)。
──福原さんの考える、コラボの醍醐味ってなんですか?
「The Soul Extreme」でブラックミュージックの要素がある人とコラボレーションする場合は、かけ合いですかね。間(ま)を楽しむというよりは、その間をどう埋めるか、お互いに札を出し合っていくのが楽しいんですよ。だから何度レコーディングしてもそのたびに全く違うものができて面白かったです。実は3回くらい歌うと録りたい音が録れちゃうんですけど、「もう終わっちゃうの?」「もう1回記念にやっとこうよ」ってまた録ったりして、なかなか終わらないこともありました(笑)。
──もう1回記念に(笑)。単なる曲だけの共演ではなく、気持ちの面でも仲が深まりそうですね。
確かに、一緒に歌っていてどんどん仲良くなっていく感じはありましたね。なんか、私たちは多分音楽でしか会話できないものを持ってるんだろうなってすごい感じました。しゃべってわかるというより、歌ってみて「そういう感じね」って理解できて共鳴していく感じは、音楽家としてすごくうれしいなと。
自分にとって難しい曲に挑戦することが、今やらなきゃいけないこと
──「The Soul Extreme EP」「The Soul Extreme EP 2」「Dream On feat.三浦大知」と作品を重ねるにつれて、ご自身のスキルアップを実感することはありました?
成長を感じるときもあったんですけど、それは曲から引き出された部分も大きいと思います。特にAIさんと2度目にコラボレーションした「You Are My Reason feat. AI」と、レオナ・ルイスとの「Save Me」は、最初は「私これ歌えるかな」って不安だったんです。
──「私これ歌えるかな」っていうのは?
そのとき自分の持っている力に比べてはるかに高いスキルを要求されるバラードだったので、この曲を表現できるのかなっていう。で、このハードルを越えるには何をしたらいいんだろうってすごく考えて、やっぱり努力しかないと思ったんです。それからは海外のボイストレーナーに自腹で教わりに行ったり、去年6月に留学して向こうのクリエイターといっぱい曲を作ることで自信を付けたり、レコーディングに向けてものすごく練習しました。
──それはすごい。
自分にとって難しい曲に挑戦することが、今、私のやらなきゃいけないことだと思ってたんです。今できることと、できないことをちゃんと一緒に表現したかった。この1年は本当にいろんな人と出会って、いろんなことを教わって、すごく心が鍛えられた1年でしたね。
CD収録曲
- O2 featuring AI
- Get Up! feat. AKIKO WADA
- Open Eyes
- Dream On feat. 三浦大知
- STARLIGHT
- Regrets of Love
- DON'T TAKE IT AWAY
- Kiss! Kiss! Kiss! feat. Chara
- Cinnamon Dreams
- You
- Save Me feat. レオナ・ルイス
- Black Star
- You Are My Reason feat. AI
初回限定盤 DISC2収録曲
- SIR DUKE
- ENGLISHMAN IN NEWYORK
- Natural Woman
- I Wish I Was A Punk Rocker(With Flowers In My Hair)
- BEN
- Virtual Insanity
- One Day
- 恋人たちのクリスマス Live ver.(from「Live in Music Vol.3」2011年)
初回限定盤 DVD収録内容
- O2 feat.AI
- Get up! feat. AKIKO WADA
- Dream On feat. 三浦大知
- STARLIGHT
- Regrets of Love
- THANK YOU
- Appologies feat. sleepy.ab
福原美穂(ふくはらみほ)
1987年生まれ、北海道出身の女性シンガー。15歳のとき、地元のテレビ番組に出演したことがきっかけで北海道限定ミニアルバムを2作発表し、1万枚を超えるヒットを記録。2008年2月には、日本人として初めてLAの黒人教会にてパフォーマンスを披露。「奇跡の子」と称され、黒人教会220年の歴史を変えたと賞賛を受ける。同年4月にはシングル「CHANGE」でメジャーデビュー。その後数々のシングル、アルバムを発表し、2011年5月に初のミニアルバム「The Soul Extreme EP」、10月に第2弾「The Soul Extreme EP 2」をリリース。2012年6月には「The Soul Extreme」シリーズの集大成となるアルバム「The Best of Soul Extreme」を発表した。