水着姿でギターをかき鳴らし歌う“シンガーソングラドル”、あるいは“今一番脱げるシンガーソングライター”として世間の注目を集める藤田恵名。8月にリリースされた新作ミニアルバム「強めの心臓」ではジャケット写真に大胆なヌードグラビアを使用し、やはり大きな波紋を呼んだ。センセーショナルな一面が大きく取り沙汰されがちな彼女だが、骨のあるロックサウンドと執念や情念が詰め込まれた歌詞、絞り出すように歌う藤田の歌声は、人間が持つナイーブな側面を鋭くえぐってくる。彼女がいかにして音楽と出会い、自分なりの表現方法を獲得したのか。音楽ナタリー初登場となる今回の特集では、“シンガーソングラドル”誕生のヒストリーに迫った。
また本特集は、フォトグラファー・常盤響のWeb連載「常盤響の週刊ニューエロス」と連動した企画を用意。「常盤響の週刊ニューエロス」9月16日更新分では音楽ナタリー未掲載のセクシーショットが楽しめる。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 常盤響
- 藤田恵名「強めの心臓」
- 2017年8月9日発売 / KING RECORDS
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脱衣盤 [CD+DVD]
3780円 / KIZC-409~10 -
着衣盤 [CD]
3240円 / KICS-3511
- CD収録曲
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- 404 Not Found
- 6時のカタルシス
- 青の心臓
- 噂で嫌いにならないで
- 私だけがいない世界
- BIKINI RIOT / MCビキニ a.k.a 藤田恵名
- ヒロインになれない
- ライブドライブ
- 脱衣盤DVD収録内容
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- 私だけがいない世界(Music Clip)
- BIKINI RIOT / MCビキニ a.k.a 藤田恵名(Music Clip)
花火かなーと思ったら手榴弾だった
──藤田さんのニュース記事は、たびたび音楽ナタリーの「人気画像一覧」を独占することがあって……。
悪目立ちしていることは自覚しています(笑)。
──画像経由で藤田さんのことを知った人にもわかりやすいガイドになるよう、今日はいろいろとお話を聞かせていただけたらと思います。藤田さんが音楽の道を志したのは、何がきっかけだったんですか?
小さい頃から歌は好きで、ほかにやりたいこともなかったのでずっと音楽をやってたんですけど……あきらめどきがわからなくて(笑)。
──最初に「歌手になりたい」と思ったのは?
興味を持ったのは幼稚園ぐらいのときで、「美少女戦士セーラームーン」の歌を親の前で聴かせたり。世代的にはSPEEDさんがド真ん中ですね。歌って踊ることに憧れを抱いて、10歳の頃からスクールに通ってました。
──藤田さんの出身地である北九州は、国内でも有数の治安が悪い土地だと言われてますよね。
花火かなーと思ったら手榴弾だったみたいな(笑)。でも住んでいるぶんにはあまり自覚はなくて、「鳴ったねー」程度だったし、「あのビルのあたりは近付いちゃダメよ」みたいなことは親に習って育ったので、まあその程度で。東京に出てきて初めて「ああ、ヤバい街だったんだな」と思いましたけど(笑)。
──藤田さんのどこか肝の据わった感じは、北九州人ならではのソウルがあるのかなと思っていたのですが。
北九州で育ったからこうなったと言う自覚はないですね。上京して1人でやっていくことへの根性はあると思うので、後付けで考えるとそういうところもあるかもしれないです。
──地元が嫌で都会に飛び出したい、という気持ちはなかった?
退屈は感じてたと言うか、「ここにずっといてもパッとせずに終わるだろうな」とは芸能を志す身として思ってました。芸能をやるうえではやっぱり東京が絶対だと思っていたので、遅かれ早かれ行くだろうなとは思ってましたね。
ギターを手にして
“シンガーソングラドル”へ
──学生時代の学内ヒエラルキーはどうでしたか?
学校はやんちゃなところではなかったし、芸能コースに通っていたので、特別浮いたりすることはなかったです。ヒエラルキーは中ぐらいですかね。みんな満遍なく話してたし、普通だったと思います。
──藤田さんも参加した「ミスiD」の出身者は、学内ヒエラルキーが低いところからの下克上、叩き上げみたいな方がたくさんいますよね。
中1の頃は、いじめで誰にも口を聞いてもらえないみたいなことがありました。そうやって孤独を感じていた頃、人に言えない気持ちを書き留めてました。ポエムじゃないけど(笑)。だから「いじめた人を見返したい」という気持ちは大きいけど、「ちゃんと義務教育は出たい」とかそういうとこはちゃんとしてたので、「ミスiD」の子たちに多い引きこもりや不登校はなかったです。
──孤独な気持ちを書き記す作業はソングライティングの原点になっていますか?
そうですね。
──ではギターを持って歌うようになったのは?
あ、ギターはすごく最近で、3年ぐらい前に“シンガーソングラドル”を名乗るようになってからです。そう名乗るからにはわかりやすいようギターを持ったアー写にしようと思ったんですけど、弾けないのにアー写でギターを持つのは超ダセえなあと思って(笑)、ちゃんと弾けるように練習したんです。作曲はその前からやっていたんですけど、鼻歌か、すごくつたないDTMソフトの打ち込みしかできなくて。ギターを弾けないのにシンガーソングライターをやっているという負い目はあったんですよ。それでなんとかなってはいたんですけど、やっぱり自分の言葉や歌に説得力を持たせたくて。
──そうなんですね。先日のバースデーライブ(参照:藤田恵名、ビキニでギターかき鳴らす誕生日「ナンバガ向井&ヒロトになりたい」)でNUMBER GIRLやTHE BLUE HEARTSの名前を憧れとして挙げていたので、学生時代からバンド活動をしていたのかなと思ってました。ZAZEN BOYSやザ・クロマニヨンズじゃなくてそっちなんだ、と。
あー(笑)。でもそれもギターを持つようになった最近なんです。子供の頃のSPEEDさん、モーニング娘。さん、あやや(松浦亜弥)さんとかを経て、椎名林檎さんとかチャットモンチーさんは聴いてましたけど。NUMBER GIRLはガー子さん(藤田のライブでギターを務める田渕ガー子。藤田の楽曲全般で編曲も手がけている)に昔からオススメされてたんですけど、ずっと理解できなくて、ギターを弾くようになってからカッコよさがわかって、そこから昔の音源や映像を漁るようになりました。知識はホントにペラペラなので(笑)、好きな音楽について話すのは苦手ですね。
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曲作りを始めたのは「コスパが悪かったから」
- 藤田恵名(フジタエナ)
- 1990年7月7日生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。並行してグラビアアイドルとしても活動しており、“シンガーソングラドル”“今一番脱げるシンガーソングライター”のキャッチフレーズを持つ。福岡在住時より芸能活動を始め、2010年に上京。地道に音楽活動を続ける中、グラビアアイドルとしても注目を集め、2014年1月には「ミス東スポ2014」グランプリを獲得。2016年には「ミスiD2017」に選出された。同年8月にはミニアルバム「EVIL IDOL SONG」でアーティストとしてメジャーデビュー。ヌード写真を使用したアートワークが大きな話題を呼んだ。2017年8月にはメジャー2作目となるミニアルバム「強めの心臓」をリリース。収録曲「私だけがいない世界」は同月公開のホラー映画「血を吸う粘土」の主題歌に採用され、映画では自身が主演を務めた。毎週木曜深夜放送のフジテレビ関東ローカル「佳代子の部屋~真夜中のゲーム会議~」にレギュラー出演中。