ナタリー PowerPush - FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM
中野裕之×ダイノジ大谷 激論!バカカッコいいONE OK ROCKの魅力とは?
ONE OK ROCKが2013年10月から12月にかけて行ったワールドツアー「ONE OK ROCK 2013 "Who are you??Who are we??" TOUR」の模様を収めた映画「FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM」が5月16日より劇場公開される。ナタリーではこれを記念して、同作の監督である中野裕之と、自他ともに認めるONE OK ROCKファンである大谷ノブ彦の対談を企画。2人にONE OK ROCKというバンドの魅力、そして監督が映画で描きたかったものについて語り合ってもらった。
取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 佐藤類
FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM [Official Trailer]
記録映画のように
中野裕之 映画、ご覧いただいたんですか?
大谷ノブ彦(ダイノジ) はい、もちろん。素晴らしかったです。この撮影に関して、ONE OK ROCK側からの条件とかあったんですか? こういうのは撮らないでほしいとか。
中野 いや全然(笑)。好きなように撮らせてもらいましたね。でも僕はメンバーが嫌がることはしたくなかったんですよ。一度ライブ終わった直後の楽屋にカメラを入れたことがあったんだけど、みんなボロボロなわけ。Taka(Vo)は頭の後ろに氷を当てながらカメラに対して露骨に嫌な顔してるし、ほかの子たちは嫌そうな顔をする余力もないような状況で。だから僕はそういうのは極力撮らないようにしたんだけど、ONE OK ROCKのマネージャーさんは「いや、どんどんいってくださいよ」みたいな感じでしたね。そんなボロボロの状態は画的にも使えないから結局ほとんどそういうシーンはないんだけど、撮影についてはそれぐらいなんでもありな状況でした。
大谷 うわー、それはすごいですね。
中野 今回のツアーは移動→到着→リハーサル→楽屋でMC練習→合間のふざけ合い→メシ→ライブ→ボロボロ→爆睡→移動っていう感じだったんで、画素材が多いわりにバリエーション自体は意外と少なかったんです。だからネタを整理することは意識しました。例えばMCを覚えるシーンがあるんですけど、そういうところで国を移動した感じを出したり。
──この映画を撮影するにあたって、監督が最も意識した部分はなんですか?
中野 僕がバンドに介入しない、ということですね。演出をしない。要はドキュメンタリー映画というより記録映画に近いものを作りたかったんです。彼らが10~20年後にこの映画を観たとき、このワールドツアーの中にあった空気感を思い出せるように。この映画がタイムマシンのような存在になれたらいいというか。だから最悪カメラをいろんなところに置いて、それを編集するだけでもいいとすら思ってました。
二律背反した考えで成り立った作品
──監督は本作をなぜ記録映画のように撮りたいと思ったんですか?
中野 ドキュメンタリーって基本的にひたすらしゃべってるものが多いじゃないですか。そういうのにはしたくなかったんです。特に今回はアーティストを題材にしているし、だったら僕は話よりも曲を聴きたいと思ったんです。
大谷 ONE OK ROCKはライブを主戦場にしてると思うし、今回のワールドツアー自体が挑戦の道程だから、それをそのまま収めればトークなしでも物語になりますしね。
中野 そうですね。でもやっぱりライブの撮影はかなり大変だったよ。例えばTakaの「アーッ!」っていうシャウトを撮ろうとすると、彼はステージに設置した台に乗ってそれをやるから、上からのショットだと顔もマイクも映んないんです。
──Takaさんはちょうど前屈姿勢のような体勢でシャウトされますよね。
中野 うん。あの状態のTakaの顔とマイクと体を撮るためには、真横か真下プラス45度の角度にいないとダメなんです。
──真横はステージに上がることになるから無理ですよね。
中野 そう。だから真下に行くんだけど、客席とステージの間は本当に狭くて、しかもセキュリティがいたり、ファンの子が担架で運ばれたりしてて、なかなかベストポジションにたどり着けない(笑)。たどり着けてもそこから露出調整したり、会場の暑さでファインダーが曇っちゃったりもするし。そんなんだから、実はそのショットを撮るのに何回も失敗してるんです。
大谷 バンドと同じモードというか。ONE OK ROCKが命がけでやってるなら、撮ってる側も命がけでやんないとちゃんとした記録にはならないってことなんですね。
中野 命がけくらいの状況じゃないと撮ってるほうも楽しくないんだよ(笑)。
大谷 最初、監督は客観的な記録として撮ったって言ってたけど、今のお話を聞くとこの作品には監督の主観がすごい入ってますよね。この二律背反な考え方がちゃんと共存しているのは相当面白いですよ。そういう作品って僕、あまり知らないです。
ONE OK ROCK(ワンオクロック)
2005年結成。Taka(Vo)、Toru(G)、Ryota(B)、Tomoya(Dr)の4人からなるロックバンド。エモ、ロック、メタルの要素を取り入れた骨太なサウンド、激しく熱いライブパフォーマンスで若い世代を中心に支持を集める。2007年4月に1stシングル「内秘心書」でデビューし、2010年11月に初の東京・日本武道館公演を実施。2012年には台湾、韓国、シンガポールを回る初のアジアツアーも成功に収める。2013年3月に6thアルバム「人生×僕=」をリリースし、同年5月からアリーナツアー「ONE OK ROCK 2013 "人生×君=" TOUR」を開催。さらに10月から12月にかけてはアジア・ヨーロッパツアーを行った。2014年5月には中野裕之が監督を務めたドキュメンタリー映画「FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM」が公開される。
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中野裕之(ナカノヒロユキ)
映画監督 / 映像作家。1987年に日本初のビデオクリップ制作会社であるタイレルコーポレーションを設立し、国内外のアーティストのビデオクリップを制作した。1990年には自身が手がけたDeeelite「Groove is in the heart」のビデオクリップがアメリカのMTV AWARDで6部門ノミネートされ大きな話題に。1993年には“見る人をピースな気持ちにさせる映像を追求”するためピースデリックを立ち上げる。また映画監督としては布袋寅泰主演の「SF サムライ・フィクション」をはじめ、「SF・Stereo Future」「RED SHADOW 赤影」「TAJOMARU」「FLYING BODIES 青森大学男子新体操部」などを製作。2014年5月には最新作「FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM」が公開される。
大谷ノブ彦(オオタニノブヒコ)
1994年に大地洋輔とお笑いコンビ・ダイノジを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。音楽や映画などのサブカルチャーに精通。今年3月より、メインパーソナリティを務めている「大谷ノブ彦 キキマス!」がニッポン放送にて放送中。