音楽ナタリー PowerPush - FOLKS

フロントマン岩井郁人の目覚め

2014年2月にミニアルバム「NEWTOWN」でメジャーデビューしたFOLKS。彼らのメジャー2ndミニアルバム「SNOWTOWN」が完成した。バンドが拠点を置く北海道の“冬”をテーマに作られた本作は、全編を通して凛とした空気が漂う、彼らにしか作り得ない1作となった。

今回はフロントマンでありメインコンポーザーである岩井郁人(Vo, G)にインタビューを行い、デビュー1年を経ての心境や変化を語ってもらった。

取材・文 / 小野島大 撮影 / 須田卓馬

共同生活によって共通言語が増加

──メジャーデビューからちょうど1年が経過して、新しいミニアルバムが完成しました。1年経って音楽活動に変化はありましたか?

去年の3月から恵庭市に家を借りてメンバー全員で住んでます。そこで曲を作ったり、Ustreamで配信ライブをやったり。音楽の話をしたり、一緒に映画観たり、ゲームしたりしてますね。バンドメンバーとして活動するオンのときと、友だちとして酒飲んだりするオフのときの切り替えもちゃんとしながら過ごしてます。

──そういうのは音楽に反映されてますか?

岩井郁人(Vo, G)

はい。共有できるスピードが早いですね。曲の原型ができてそれをメンバーに聴かせるときも、別々に住んでるとデータで送ったり家に来てもらったりしなきゃならないけど、一緒に住んでれば、その場で声をかけて俺の部屋に来てもらって聴いたりとか。その場で何か思い付いたメンバーがそのまま自分の部屋に持ち帰って、ワンコーラスだったのをフルサイズにしたりとか。そういう作業は早いですね。思い付いたらすぐやれちゃう。好きな音楽も紹介しあって聴いてるし、共通言語が増えてきてる。

──バンドとしての意思疎通がスムーズになったと。

ただ原曲作りは完全に僕1人でやることにしたんですよ。今まではみんなに作ってもらいたくて活動してきたんですけど、そうじゃなくて僕自身がしっかり核になる部分を作っていこうと。それがデビューの頃とだいぶ変わったところですね。

──なぜそうすることにしたんですか?

以前はメンバー全員で一緒に住んで、全員のことを尊重して、1人ひとりがクリエイターとして曲を作るという体制にしたいなと思ってたんですよ。

──前のインタビュー(参照:FOLKS「NEWTOWN」インタビュー)でもそういうことをおっしゃってましたね。

ええ。それは最終的に目指していきたいんですけど、その前に僕がしっかり曲を書いて、みんなを引っ張っていかないといけないなって最近は思って。メジャーで1年間活動してうまくいかないこともいろいろあったんです。最終的に僕がフィニッシュしないと次に進まないときとかもあって。全員が曲を作る形は僕が望んでたことなんだけど、うまく回らないことも多かったんです。インディーズのアルバムは僕1人で作ったんですけど、あの頃の感覚に立ち戻ろうと思ったんです。アレンジはみんなに任せるんですけど、核となる部分は僕が作っていくっていう。

──バンドの基本的な方向性は、誰かが引っ張っていかないと決まりにくいってことなんですかね?

そうですね、うん。あと……何曲かリリースしてきて、メンバーなりスタッフなりお客さんなり、いろんな人にいいって言ってもらえる曲が、わりと僕の個人的な気持ちを歌ったパーソナルな曲であることがすごく多かったんです。FOLKSとして何を歌うべきかみんなで考えて、みんなの意見を取り入れて作ったような曲が、案外響くことが少なかったんですよ。

──それは歌詞に関してですか?

そうですね。歌詞と……メロディですね。歌の部分。

──それは興味深いですね。

例えば今作に入ってる「冬の向日葵」って曲なんですけど、「Take off」というインディーズ盤を作る前からあった曲で、僕が個人的に書いた曲だったんです。バンドでやるとか考えずに。だからデビューした当初はバンドでできるとは思ってなかった……というかやろうとすら思っていなかったんです。

──個人的な曲だから、ということですか?

そうです。かなり具体的だしストレートだし。……それが「HOMETOWN STORY」の中に入っている「パラダイス」という曲とか、歌詞の中で僕の個人的なことをノンフィクション的に書いた部分がいいって言われることが多くて。徐々に曲を作るモードがそっちのほうに変わっていったんです。

──それまではバンドでは自分の個人的な部分は出してはいけないし、理解もしてもらえないだろうと思っていたわけですか?

岩井郁人(Vo, G)

なんかこう……よく見られたかったというか(笑)。外面を取り繕っていた部分があったんです。「FOLKSとしてこういう感じに見られたい」とか。そういうところがあったんです。背伸びをずっとしてて。

──(笑)。なるほど。カッコつけてたわけだ。

そう。でもそういうのが響かないってことがわかって、悔しい思いもしましたね。「冬の向日葵」はメンバーもスタッフも前から「いい曲だからリリースしよう」ってみんな言ってくれてたんですけど、俺が「リリースしたくない」って言い張って(笑)。

──恥ずかしいって感じですか?

そうですね。でも活動をしていく中で自分もいろいろ気持ちが変わってきて。ライブを重ねるにつれて歌い手としての面白みもわかってきたし、僕個人の歌がいいって言ってもらえることで、今ならこの曲を出したいと思えたんです。なので「冬の向日葵」を中心とした作品を作りたい、と。

ミニアルバム「SNOWTOWN」 / 2015年2月25日発売 / 2376円 / Ki/oon Music / KSCL-2654
ミニアルバム「SNOWTOWN」
収録曲
  1. CAPITAL MORNING
  2. CARVE OUT
  3. Northern Lights
  4. 冬の向日葵
  5. それぞれの日々へ
  6. UNIVAS
  7. キャスカ
FOLKS "In Bloom" Tour 2015
2015年5月5日(火・祝)愛知県 APOLLO BASE
2015年5月6日(水・祝)大阪府 Shangri-La
2015年5月9日(土)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
2015年5月15日(金)北海道 Sound Lab mole
FOLKS(フォークス)

FOLKS

2013年1月に結成された岩井郁人(Vo, G)、岩井豪利(G, Vo)、高橋正嗣(Programming, Syn, Cho)、野口一雅(B, Cho)、小林禄与(G, Syn, Per, Cho)からなる5人組。メンバー全員が楽曲制作を行い、ライブではサポートドラムを加えた6人編成でパフォーマンスを行う。2013年3月に初ライブを開催し、同月に自主制作盤「Take off」をリリース。一般公募枠で「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」にも初出演し、北海道内で着実にその名を広める。2014年2月にキューンミュージックよりメジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」を発表。2015年2月に地元北海道の冬をモチーフにしたミニアルバム「SNOWTOWN」をリリースした。なお岩井郁人と岩井豪利は兄弟で、メンバー全員が北海道恵庭市で共同生活をしながら音楽活動を行っている。