ナタリー PowerPush - 榎本くるみ

生まれた意味を探す歌 「冒険彗星」がくれた自信と強さ

凛とした強さの中に悲しみや憂いを匂わせる歌詞、そして一度聴いたら忘れられない歌声で独特の世界を構築するシンガー榎本くるみ。2007年から2008年にかけては「リアル / She」「夕陽が丘 / みんな元気」「未来記念日」といったシングル3部作や、映画主題歌「イエスタデイズ ~大切な贈りもの~」といった楽曲を立て続けに発表し精力的に活動してきた。

そして11月26日にはTVアニメ「テイルズ オブ ジ アビス」のエンディングテーマ曲「冒険彗星」というこれからの彼女の新たな展開を予感させる新曲をリリース。プロデューサーにMOTOO FUJIWARA & MORを迎えたこの作品でより表現の幅を広げつつある榎本くるみ自身に、新作「冒険彗星」について詳しく聞いてみた。

取材・文/相川真由美

私にとって歌は、人とコミュニケーションをとっていくうえでいちばん大事なもの

——「冒険彗星」を聴かせてもらって、すごい名曲だなと思いました。この曲に出会って、くるみさんは最初どう感じましたか?

榎本 まず思ったことは、素晴らしい歌に出会えて本当によかったということで。自分がこの歌に対してなにをやるべきかって考えたんです。それで背伸びをしないで、今できることを一生懸命やろうって決めました。

——その、自分がこの歌に対して今できることとは一体なんだったんでしょう?

榎本 書かれている歌詞の内容がとにかく深いから、自分なりに曲の世界観をイメージして歌うってことでした。今回、藤原基央さんと MORが作詞作曲をしてくださったので、私はボーカリストとして参加しました。自分で作詞をして歌う前から「こういう曲なんだ」と断定できないぶん、歌うときの自分の想いとか、そのときに感じたことをいちボーカリストとして素直に、正直に出していくしかないなって思っているんです。

——なるほど。断定できないのはこの歌が運命や人生などの、自分でなかなか操作できない部分で動くものがテーマだからというのもあるのでは?

榎本 そうかもしれないですね。この歌の内容って本当に“人生”みたいですし。歌詞に「生まれた意味は生きてゆく意味など超えた場所にある」ってありますけど、私は“生まれた意味”という部分が大きいと思っているんです。歌を歌いながら私も“生まれた意味”を毎日探しているし、それを探す喜びも感じているので。

——“生まれた意味”を“歌”で毎日探しているんですか。では、その“歌”とは実際くるみさんにとってどういうものなんですか?

榎本 私にとって歌は、人とコミュニケーションをとっていくうえで一番大事なものですね。今までは曲をつくったり歌を歌ったりするのは、自分がしてきたことや生きてきたことを認め、まとめていく作業で、自分の中だけで完結していた部分があったんですよ。でも今回はそれプラス“他者へ向けて”という要素が加わって。聴いてくれた人がどんなふうに受け止めてくれるのかが、大事な部分なんですね。だからいろいろな人とコミュニケーションをとって、この曲といっしょに冒険していきたいなって思っているんです。

——その“冒険”という言葉はタイトルにも入っていますよね。ところで同じく曲名にある“彗星”に対してはなにかイメージはありますか?

榎本 彗星は自分の“心”というか……。“自分自身”のことなのかなとは思いますね。私はこの曲を歌いながら、聴きながらいろんなことを感じている途中なんですよ。この先に何が見えるのかはまだわからない。でも今、一時一時、歌を歌うってことに対して向き合いたいという想いはあって。表現を通して日々得るものが、どんどん増えていけばいいなと感じているんです。

——まさに歌詞にもある“冒険の途中”なんですね。それとともにこの曲では「自分の軌道と光度で心は燃えて声に変わって 繋がって生まれた偽りのないメロディー その鼓動と周期を把握して生まれた意味は 生きてゆく意味など超えた場所にある」という部分がキーワードになるのかなとも思ったのですが。

榎本 そこの2行はすごいハッとさせられた部分だったんですよね。初めて歌詞を見たときに、把握するってことがすごく大事なところなんだなって気づいて。この曲を把握、理解することは簡単にはできませんけど、そのキーワードを大事にしながら歌っていきたいんです。ただ私は不器用だし、一度でパッと完璧にできる人ではないので……まぁ私の個人的な話なんですけど。でも理解して飲み込んでいく中で感じることもあるし。この曲が意味するものは無限にあるから、それを少しずつ見つけ、ゆっくりでもいいので自分でちゃんと理解して歌に乗せていきたいんです。

ニューシングル『冒険彗星』 / 2008年11月26日発売 / フォーライフミュージックエンタテイメント

初回生産限定盤 [CD+DVD] 1500円(税込) FLCF-4263 / 通常盤 [CD] 1200円(税込) FLCF-4264

CD収録曲
  1. 冒険彗星
  2. 朝顔
  3. ぼくのうた
初回限定盤DVD収録内容
  • 「冒険彗星」Music Clip
  • 「冒険彗星」アコースティック スペシャル ライブ映像
  • 「冒険彗星」Special Music Clip(TVアニメ「テイルズ オブ ジ アビス」Version)
プロフィール

榎本くるみ(えのもとくるみ)

1981年名古屋生まれの女性シンガー。デビュー前から雑誌「ROCKIN'ON JAPAN」で紹介されたり「BARFOUT!」の表紙を飾るなど、さまざまな方面から注目を集め、2006年4月にシングル「心のカタチ」にてメジャーデビュー。3rdシングル「RAINBOW DUST」がドラマ主題歌に起用され、新たなファン層を開拓する一方、2006年末の「COUNTDOWN JAPAN 06/07」では新人ながら堂々としたステージを披露。実力派シンガーとしての評価を確実なものとする。

2007年5月には初のフルアルバム「NOTEBOOK I~未来の記憶~」を発表。2007年秋には「リアル / She」「夕陽が丘 / みんな元気」のシングル2作を連続リリース。2008年2月に発表したシングル「未来記念日」はTBS系「CDTV」エンディングテーマに起用される。

2008年10月には、シングル「イエスタデイズ ~大切な贈りもの~」を発表。この曲は映画「イエスタデイズ」の主題歌に決定し、自身初の書き下ろし映画主題歌としても話題となる。

ケータイ小説サイト「おりおん☆」では自身初の携帯小説「未来記念日」を連載。アクセスが殺到しチャート上位にランクイン。携帯SNS「GREE」でのブログは、日に1万を超えるアクセスで注目を集めている。