音楽ナタリー PowerPush - 私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-

中村正人(DREAMS COME TRUE)×大森靖子

ポップス職人の見る景色

「サンキュ.は、キー、曲調、歌詞の全てが適度にさめていて、過剰にならずブルーの色気を増長させる素晴らしい楽曲です」

これはカバーアルバム「私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015開催記念 BEST COVERS-」に参加した大森靖子が、自身が選んだ楽曲「サンキュ.」について書いたコメントだ。これを受けて、今回ナタリーでは大森と中村正人(DREAMS COME TRUE)との対談を企画。2人は初対面とは思えない意気投合ぶりで、それぞれの音楽的視点をぶつけ合った。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 今村敏彦

 
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この曲のメロディと歌詞だったら大丈夫

中村正人 はじめまして。今回カバーしてくださってありがとうございます。

大森靖子 いえいえ、こちらこそありがとうございます。

左から中村正人、大森靖子。

中村 すごく大森さんらしくてよかった。涙が出ました。

大森 本当ですか? 私も泣きながら歌ったんです。

中村 え、そうなんだ?

大森 はい、中島みゆきさんが泣きながらレコーディングしてらっしゃるっていうのを人づてに聞いたことがあって。私もやってみたいなって思ってたんで、これはいい機会だぞって(笑)。「サンキュ.」はちょうどいいんですよね。

中村 ちょうどいいっていうのは?

大森 なんていうか、あの曲は泣きながら歌っても“メンヘラ感”が出ないんです。ほら、カラオケとかで失恋の歌を泣きながら歌われたら、聴いてるほうは引いちゃうじゃないですか。でも「サンキュ.」はそうならないで、ちゃんと魅力的でセクシーに表現できる曲なんで。この曲のメロディと歌詞だったら大丈夫だぞっていう安心感がありましたね。

中村 確かにそうかも。「サンキュ.」っていう曲は異常な曲なんですよ。楽曲としてはものすごく難しくて、どこから始まってどこで終わるんだかわかんないし、4/4拍子じゃないとこもあるし。

大森 ありますね。

中村 ちょっと洋楽っぽいテイストもあって。で、おっしゃるとおり、号泣じゃないんですよ。失恋の曲だし心の中はもうめちゃくちゃなんだけど、涙も出なくてすごく冷静で、自分をちょっと客観的に捉えてる。そこで友達とのやりとりを通して悲しさがじわじわとやってきてるんですよね。

大森 うんうん。

中村 その友達が男なのか女なのかも僕はわかんなくて。作詞した吉田美和も正解を言わないからね。でも主人公はその友達と会って髪を一緒に切りに行って、帰ったあとでなんかさめざめと泣いてるんじゃないかなって。その感じを大森さんがわかってくれて、コメントでも的確に表現してくれてて。ほんとありがたいです。

若いリスナーに刺さるヒットを狙ってる

大森 今回「サンキュ.」をカバーさせてもらって、父と母に初めて「ちゃんと音楽の仕事してます」って言えるなあと思ったんですよ。

中村 大森さんにとってのドリカムは、俺たちにとってのエルヴィス・プレスリーみたいな感じじゃない? 親の世代の音楽というか。

大森 そうかもしれないです。お父さんがCD買ってたから。中村さんはずっと売れる曲を作り続けてますけど、それってどういう気分なんですか?

左から中村正人、大森靖子。

中村 知らないよ(笑)。売れてないからね。

大森 いやいや(笑)。

中村 もっと大森さんの世代に刺さるヒット曲を狙ってるんだけどね。今のリスナーが聴いて「いいじゃんこれ!」って思う、その瞬間がどっかで欲しいんだよ。AC/DCが若い子にウケてるとか、AerosmithがRun-D.M.C.のおかげで復活したとか。

大森 そんな昔のイメージじゃないですよ(笑)。

中村 でもそういうのが欲しいのよ。10年に一度は欲しい。そこでキャリアを巻き戻したいんだよね。

大森 そういうのでいいんですか? じゃあアイドルの曲を作るとか?

中村 いや、アイドルに関わってるおじさんはたくさんいるからさ。みんなが歩いた道は歩きたくないよね。やっぱり吉田を抱えてる以上は、細道でも初めて歩く道がいいんだよ。

大森 でもヒットしたいんですね。

中村 ヒットしたいね(笑)。

V.A.「私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-」2015年4月1日発売 / 3146円 / EPICレコードジャパン / ESCL-4394
「私とドリカム2-ドリカムワンダーランド2015 開催記念 BEST COVERS-」
収録曲
  1. 何度でも / May J.
  2. うれしはずかし朝帰り / 西内まりや
  3. 未来予想図 II / 三浦大知
  4. 晴れたらいいね / LiSA
  5. The signs of LOVE / JUNHO(From 2PM)
  6. 眼鏡越しの空 / 片平里菜
  7. うれしい!たのしい!大好き! / クリス・ハート
  8. 決戦は金曜日 / NICO Touches the Walls
  9. サンキュ. / 大森靖子
  10. 朝がまた来る / Little Glee Monster
  11. やさしいキスをして / 川畑要
  12. 雪のクリスマス / JUJU
  13. a little waltz / MONGOL800
  14. LOVE LOVE LOVE / 徳永英明
DREAMS COME TRUE(ドリームズカムトゥルー)
DREAMS COME TRUE

吉田美和(Vo)と中村正人(B, Arrangement, Programming)による2人組バンド。1989年にメジャーデビューし、1992年発売の5thアルバム「The Swinging Star」は当時の日本記録となる300万枚以上のセールスを記録する。その後もシングル、アルバムともにミリオンヒットを連発し、ソウル / R&Bを基軸にしたサウンドが老若男女問わず幅広い層から支持されている。2014年にはデビュー25周年を迎え、同年8月に通算17枚目のオリジナルアルバム「ATTACK25」をリリース。なお1991年より4年に1回のペースで「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND」と題したイベントを実施しており、今冬7回目となるドリカムワンダーランドを開催。7月7日には“ファンが聴きたい曲”全50曲を収録したコンプリートベストアルバム「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」をリリースする。

大森靖子(オオモリセイコ)
大森靖子

愛媛生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が耳の早い音楽ファンの間で話題を集め、2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」発表後、5月に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを実施。レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウトさせ大成功に収める。その後同年12月に2ndフルアルバム「絶対少女」をリリース。このツアーでもファイナルの東京・LIQUIDROOM公演のチケットは売り切れ。2014年9月にエイベックスからメジャーデビューし、12月にメジャー1stアルバム「洗脳」をリリース。現在、「♥爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー♥」と題した全国ツアーを実施しており、追加公演の広島・広島CLUB QUATTRO、沖縄・沖縄Output以外の公演はすべてソールドアウトしている。