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“コンチクショー”が支えた音楽人生 徳永暁人が語る「WANTED」への道のり

作曲家・編曲家として多くのヒット曲を生み出してきた徳永暁人。彼が中心となって結成したdoaが、今年デビュー10周年を迎え、記念すべきニューアルバム「WANTED」を完成させた。そこでナタリーでは徳永に取材を行い、今日までの活動や制作の裏側を語ってもらった。

徳永のインタビューからはミュージシャンを志す若者たちはもちろん、仕事や日常に悩む人々にとっても、糧となる言葉を多く見つけることができるはずだ。

取材・文 / 田島太陽 インタビュー撮影 / 小坂茂雄

10周年を振り返って

──デビュー10周年おめでとうございます。振り返ってみていかがですか?

忘れてましたよ。人に言われて、もうそんなに経った?って。

──徳永さんはdoaを結成する前からさまざまなアーティストへの楽曲提供やB'zのサポートメンバーなどの活動をされていましたが、いずれはバンドでデビューしたいとずっと思っていたんですよね。

徳永暁人(Vo, B)

そうですね。18歳からバンドを掛け持ちで10個くらいやっていて、オーディションも何百回と受けたけどダメで。だから20代はずっと裏方で、このバンドでデビューしたのがもう30歳過ぎだったんです。当時は友達にも「その歳でロックバンド?」って笑われたし。でもそこから始めたから、逆に焦りもなかったというか、やりたいようにやれたのかな。だから10年経っちゃったというより、まだ10年っていう気持ちのほうが強い。もっと熟したいです。

──裏方として活躍していたとしても、バンドでの活動はまた別物ですか?

違いますね。寝グセのまま現場行っちゃいけないんだなとか(笑)、当時は新鮮でしたから。

──取材だと写真撮られちゃいますからね。

そうそう。あとは、音楽に対してこうして何かをしゃべるのも不思議だったんです。曲がすべてだから、これ以上何を語るの?って。それがバンドを始めて最初の驚きでしたね。10年経って多少慣れたけど、今日もドキドキですよ(笑)。よろしくお願いしますね。

──いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。doaでデビューする前から計算すると、もう音楽活動を始めて20年です。振り返ってみて、ターニングポイントというと?

作曲家としてZARDさんに提供させてもらったのが大きかったですね。それまでは何十曲デモを作ろうが誰にも使ってもらえなくて、もう辞めようと思っていた時期だったんですよ。25歳くらいでバイトしかしてなくて(笑)。そのときに坂井(泉水)さんが僕の曲を聴いてくださって、使ってくれたのが「永遠」だった。これがきっかけで活動できるようになったんです。あとはB'zさんのそばでサポートメンバーや編曲家として参加させてもらったのはすごく大きかったですね。

──徳永さんがTwitterで、B'zのお2人について「言葉にならないスピリッツをたくさん教えてもらった人」とおっしゃっているのを見たことがあります。それをあえて言葉にするとどういったものなんでしょう?

人間らしいところですね。というのも、スタジオに行くと音楽に関係ない話で盛り上がるんですよ。スポーツとかマンガの話題とか、どこのごはんが食べたいとか。音楽以前の部分で、すごく人間らしいのが一番尊敬しているところ。だってロック界のトップが、近所のラーメン屋がおいしいだけで感動する心をまだ持ってるんですよ。それでレコーディングを始めるから、とても人間味のある音になるんだと思います。そういう人間性、人の心が生きているところですね。

「求める」から「求められる」へ

──では今回のアルバム「WANTED」のコンセプトから教えてください。

毎回そうですけど、出かけたくなるアルバムにしたいと思ってるんです。僕はもともとウエストコーストのサウンドが好きで音楽を始めたから、ドライブに行きたくなる曲にしたくて。

──徳永さんもバイクに乗られますし、ボーカルの吉本(大樹)さんはプロのレーサーですもんね。ご自身が車に乗っているときに気持ちよくなれる音楽、というイメージですか?

それもありますね。実際曲をかけながら走ってみたりするし、電車で聴くのも好きなんですよ。

──「WANTED」というタイトルですが、この言葉を聞くとまず思い浮かぶのは指名手配ですよね。

そうなんですよね、でもほかに「求める」という意味もあって。10代20代の頃はやりたいことがたくさんあって、“want”が正義だったんですよ。それさえあればよかった。でも歳を重ねてくると、必要とされる場所に行って仕事をするようになるし、そのほうが充実感を得られることに気付くじゃないですか。人生の幸せはそういう瞬間にあると思っていて、それはすごくありがたいことなんですよ。そこに感謝していられれば、もう100点なんじゃないのかなって。最近は、居場所を見失ってる人が多いと思うし、もちろん僕だってあるんですよ。「自分じゃなくていいんじゃない?」とよく思っちゃうから。

──徳永さんでも思うんですか?

しょっちゅうですよ! 大人になると褒められることって減ってくるし、「必要とされてたんだ、よかった!」と思えることは少ないですよね。10代だったら「おまえすごいな!」ってよく言われると思うけど、社会人になってそんなこと言われるのは1年に一度あるかないかでしょ。努力が足りないのかなとか悩むけど、本当はみんなそれぞれ特徴があるし、無駄な人なんていないんですよ。

──ただ徳永さんは、誰かに必要とされているからこそ、さまざまなアーティストと一緒に活動されてきたと思うんです。

うん、そうだったとしたら幸せですね。

──常に誰かに求められるために、気を付けていたことってありますか?

仕事をするときに考えているのは、まず聴いてもらう人のことなんです。普通の生活をしている皆さんが、曲を聴いて何を感じてくれるのか。踊りたいでも、泣きたいでもいい。求めているものがあるなら、僕はなんでもする。そこが一番だから、一緒に仕事をするアーティストさんには合わせないようにするんです。こういう人だからこの音にしよう、とは考えなくて、全然違うサウンドを持っていったり。すごくロックテイストな曲を倉木麻衣さんが気に入ってくれたこともあったし、常にアーティストさんの先にいる誰かに向けている気はしますね。

ニューアルバム「WANTED」/ 2014年1月22日発売 / GIZA / GZCA-5260
3059円 / GZCA-5260
収録曲
  1. GIMME FIVE
  2. Something
  3. テキサスホールデム
  4. 誰よりも近くにいるのに
  5. Bring Me Back My Freedom
  6. WANTED
  7. TO BE FREE
  8. Rock'n'Roll Life
  9. コンビニマドンナ
  10. クライマー
  11. I'll Take You Anywhere
  12. 連絡はナッシング
ライブ情報
doaプレライブ "unlock"2014
  • 2014年1月31日(金)
    大阪府 hillsパン工場
doa LIVE Tour 2014 -WANTED-
  • 2014年2月8日(土)
    愛知県 ElectricLadyLand
  • 2014年2月15日(土)
    福岡県 DRUM Be-1
  • 2014年2月22日(土)
    大阪府 umeda AKASO
  • 2014年2月28日(金)
    宮城県 仙台MACANA
  • 2014年3月2日(日)
    東京都 日本橋三井ホール
doa(どあ)
doa

吉本大樹(Vo)、大田紳一郎(Vo, G)、徳永暁人(Vo, B)からなる3ボーカルバンド。2004年に徳永を中心に結成し、同年7月にシングル「火ノ鳥のように」でメジャーデビュー。メンバー全員がメインボーカルを担当するスタイルで、叙情的な楽曲と美しいハーモニーを武器に活動している。ユニット名は吉本大樹(大樹)のd、大田紳一郎(大田)のo、徳永暁人(暁人)のaからとられたもの。これまでに15枚のシングルと7枚のアルバムをリリースしており、デビュー10周年にあたる2014年の1月22日に8thアルバム「WANTED」を発表する。