音楽ナタリー Power Push - Def Tech

10年目に迎えた原点回帰

Def Techが2年ぶりとなるアルバム「Howzit!?」をリリースした。彼らは今作で自らの原点に立ち戻るべくハワイでのレコーディングを実施。ブルース・シマブクロやアーニー・クルーズJr.といった現地の腕利きミュージシャンとのセッション楽曲を含む、ナチュラルな雰囲気が漂う1枚を届けてくれた。今回の特集では、デビューから10年目を迎えた彼らに、新作のレコーディングにまつわるエピソードや、解散~再結成を経て新たに築き上げたというお互いのパートナーシップなどについて語ってもらった。

取材・文 / 望月哲 撮影 / 小坂茂雄

原点としてのジャワイアン

──今回のアルバムを聴かせていただいて、日常の中にすっとサウンドが溶け込んでいくような、すごくリラキシンな雰囲気を持つ作品だと思いました。制作に取りかかるにあたって、2人の中で青写真みたいなものはあったんですか?

Def Tech

Micro ここ数年、テクノロジーの進化によって世界中でいろんな音楽が生まれていますよね。それこそエレクトロミュージックも年々飛躍的に進化してるし。そんな状況の中で、僕らにとって一番新しく聴こえる音楽ってなんだろう?って考える時期がしばらくあって。そこで行き着いたのがDef Techの原点でもあるジャワイアンだったんです。

──いわゆるハワイアンレゲエですね。

Micro はい。ハワイの音楽に流れる、ゆったりとしたフィーリングがすごく新鮮なものに感じられたんですよね。そこが作品の指針になったところはあります。

──制作はいつぐらいからスタートしたんですか?

Micro 2月にツアーが終わってから早速作業に取りかかったんだけど遅々として進まなくて。それで4月にハワイに渡って現地のスタジオで一気に作業を進めていったんです。

──ハワイにはどれぐらい滞在したんですか?

Micro 1週間ですね。そのうちの5日間でレコーディングをして。かなりタイトなスケールでしたね。

──ハワイでのレコーディングっていうと、のんびりしたイメージを勝手に思い浮かべてしまいますけど。

Micro 全然でした(笑)。

Shen 今回、ハワイのミュージシャンたちに参加してもらったんですけど、僕も最初はのんびりしたレコーディングになるのかなと思ってたんです。でも、むしろ作業自体はスピーディで。みんな僕らがやりたいことをすぐに理解して的確に表現してくれるんですよ。

Micro エゴイスティックな人がいないんだよね。プレイはもちろん人格も素晴らしくて。

──1日のスケジュールはどんな感じだったんですか?

Micro 朝10時にみんなでスタジオに集合して、そこから集中して作業して19時にはレコーディングを終わらせる感じでしたね。そこからおのおの夕食に出かけたり、ライブを観に行ったり。ハワイのミュージシャンって仕事とプライベートをきっちり分けてるんですよ。普段の生活をすごく大切にしてる。日本でレコーディングしてると、途中から昼も夜もわからなくなっていくじゃないですか。でも彼らは全然そういう感じじゃなくて。時間がきたら、きっちり作業を終えるんです。そういう仕事のやり方が自然でいいなって。

Shen 僕らにもハワイのバイオリズムが合ってた気がするよね。

Micro

Micro うん。むしろこういうやり方のほうが効率的なのかなと思ったし。日本でレコーディングすると、作業を延々やり続けちゃうから。時間をかけることでいいものができることも確かにあるけど、根を詰めすぎて逆に煮詰まっちゃうことも多い。最初にきっちり終わりの時間を決めて、そこに向けてガーッて集中して作業したほうがいいんじゃないかって。それで、そこから自分の時間を楽しむっていう。

Shen みんなでおいしいものを食べに行ったり。

Micro 日本だとレコーディング中って食事も大体、出前になっちゃうから。

──スタジオが決まると、まず出前表をチェックするミュージシャンってけっこう多いみたいですね。

Micro そうそう。出前の豊富さが作品のクオリティを左右するところもありますから(笑)。

Shen でもそれって重要なポイントだよね(笑)。

テレビ局の中にあるレコーディングスタジオ

──ちなみにハワイのスタジオはどんな感じだったんですか?

Micro テレビ局の中にあるすごく変わったスタジオで。

──テレビ局ですか?

Micro ええ。作業を中断して、トイレに行こうとすると隣のスタジオでニュースの生放送をやってたりするんですよ。

Shen 窓の向こうでニュースキャスターが普通にデスクワークしてたりね(笑)。

──独特の緊張感がありそうですね。

Micro テレビ局特有のピリっとした空気があって。逆にそれがよかったのかもしれないです。作業中も眠くならないし(笑)。

──今回、あえてそのスタジオを選んだんですか?

Micro いや全然知らなくて。単純に使用料が安かったんですよ。

──で、行ってみたらテレビ局の中だったっていう。

Micro そうなんです(笑)。機材も日本に比べて充実してなくて、最初は不安だったんですけど、いざレコーディングを始めたら、格段に音がいいんですよね。ギターの音1つ取ってもそうだし。決してマイクがいいわけでもないんですけど。

Shen

Shen それと、やっぱりあのほどよい緊張感もよかったよね。

Micro そうだね。海の近くにある、のんびりしたスタジオとかでレコーディングしてたら発売延期になってたかもしれない(笑)。

Shen 実際、日本で作業してる時点で、もしかしたら間に合わないかもしれないって話をしてたんですよ。

Micro 7月に延期しちゃおうぜって。

──そこでハワイに行っちゃったら、もっとヤバいんじゃないか、みたいな気持ちはなかったんですか?

Micro もちろんありました。でも、あのハワイの雰囲気をどうしても作品に入れたかったんですよね。

──そこは1つの賭けですよね。

Micro はい。ミュージシャンも、スタジオにオンタイムで来るわけないだろうと思ってましたし。でも、みんなきっちり時間通りに現れて。

Shen それで最高のプレイをしてくれてね。

──そういう意味ではスタジオもミュージシャンも大当たりだったという。

Micro はい。むしろ僕らの期待以上でしたね。

ニューアルバム「Howzit!?」2015年6月3日発売 / [CD+DVD] 2500円 / 2VOX / 2VOX-001 / Amazon.co.jp
「Howzit!?」
CD収録曲
  1. B-3
  2. Freeing Ur Pain
  3. One Day with Jake Shimabukuro
  4. Tell Me
  5. Gone Surfin’
  6. Summer Ends
  7. Talkin’ 2 You
  8. ふしぎだね?
  9. Gone Surfin’(Jawaiian Ver.)
DVD収録内容
  • Marathon PV
  • 2VOX tour(Teaser)
Def Tech 10周年記念 スペシャルサマーライブ2015
  • 2015年7月12日(日)山梨県 河口湖ステラシアター
  • 2015年7月18日(土)大阪府 大阪城野外音楽堂
Def Tech(デフテック)

Def Techハワイ出身のShenと東京出身のMicroによる“Jawaiianスタイル”のユニット。2005年にアルバム「Def Tech」でデビュー。200万枚を超えるセールスで当時の国内インディーズの売り上げ記録を塗り替えた。以後、活動休止や一時解散を経ながらも、自由なスタイルの音楽活動を繰り広げ、6枚のオリジナルアルバムをリリースししている。そして2015年6月、ハワイアンミュージックを大胆に導入した約2年ぶりのアルバム「Howzit!?」を発表した。