ナタリー PowerPush - Daft Punk

サカナクション山口一郎が語る Daft Punkのグルーヴとポップ

日本的感覚を音楽で表現したい

──このアルバムを元ネタにして、Daft Punkはセルフリミックスアルバムを、電子音楽感バッキバキのものとして作るんじゃないかという噂もありますけど。一郎は彼らに何を期待しますか?

山口一郎

どうなんだろう……このアルバムの世界をライブでやるのは難しいかなと思うんで。どういうライブをやるのかなっていうのはすごく気になりますね。

──グラミー賞でのスティーヴィー・ワンダーと共演したアクトはご覧になったと思うんですけど、あれを観てどう思いました?

ズルいなって思いましたよ、あれは(笑)。スティーヴィー・ワンダー、ノリきれてなかったですけどね(笑)。でもそういうことができる存在っていうことですよね、Daft Punkが。彼らって見た目はロボットなわけじゃないですか。だから国境は越えた存在みたいな感覚ですよね。

──今回彼らがグラミー賞を獲ったのってすごく意味があることだと思うんですね。Daft Punkの音楽は越境性がある。そしてキャラクターにも越境性がある。それと同時に、フランスがアメリカンミュージックへのオマージュを捧げてたっていうことに対しての、アメリカンマーケットからの歓迎や絶賛っていうことがあったこともすごく意義があることだと思うんです。そんな音楽で越境していく姿を見ていると、自分も世界に飛び出したいと思いませんか?

んー……僕は世界に向けて音楽を作るつもりはないですからね。日本っていうものがいったいどういうものなのかっていうことを、日本人独特の侘び寂びだったり、日本人がわかることのできる米の味の違いとか、白身魚の油の味の違いとか……そういう日本的な感覚の音楽版を自分の中で消化したいと思うし、それをちゃんと構築することがイーストランド(極東の島国=日本)でできたら、世界にどう聴かれるかな?っていうことを意識するとは思いますけどね。日本の音楽に対するルール感って、世界とすごく違うと思うんですよ。すごく政治もあるし……特に表面に出てるところなんて政治のカタマリですから。その中で、僕らが政治を利用せずに世に音楽を届けているっていうことが、いい違和感になってるわけで。今のスタンスが変化しない限り作る音楽は変わっていかないと思うし。日本人を満足させること……きゃりーぱみゅぱみゅちゃんとか相当ですよ。あの人は別に海外に向けてやっているわけじゃなくて、日本人が面白いと思うものだったり、日本が思う“キモカワイイ”ものを提唱したことで、ヨーロッパで受け入れられてるっていうだけですからね。

──Daft Punkときゃりーぱみゅぱみゅの共通性ってとてもあると思うんですね。きゃりーぱみゅぱみゅって、実は音楽的にはすごくルーツ的なものがあって。ただ単に奇天烈な新しい音楽をやっているわけじゃなくて、曲を作ってる人間(中田ヤスタカ[CAPSULE])にクラブミュージックへのオマージュ意識があるじゃないですか。Daft Punkの音楽も見え方も含めて考えると、けっこう奇天烈なものだけど、音楽的にルーツと普遍性に基づいていて。その二重構造を両者が持っているのは面白いと思うんですよね。

そうですよね。Daft Punk自体、今回の作品が初めてアメリカで評価されたわけではなくて。「Homework」っていうアルバムは、アメリカ、ヨーロッパ各国で評価されてましたよね。だから今回のアルバムでいきなりDaft Punkに影響を強く受けたっていう人はそんなにいないんじゃないかと思ってて。ここまで積み重ねてきた作品の本質的な素晴らしさ的なものも相まって、しかもそれが新しくて、なおかつグルーヴとルールがあるもので、だから今回の作品が評価されたような気がしますけどね。……簡単に言えば、モンスターだっていうことですよ。結果出してきたわけですからね。クラブミュージックで素晴らしい人なんてたくさんいますよ。有名って言われてる人もたくさんいるわけですけど、みんなDaft Punkほど売れてないですからね。The Chemical BrothersだってFour Tetだってすっごい人だけど、セールス的に言ったらDaft Punkにはるかに及ばない。

ものすごい嗜好品としての音楽

──グラミー賞の授賞式に行ってわかったのは、少なくともこの「Random Access Memories」というアルバムは、40代50代にも認知されて、そしてわりと愛されているということ。この感覚はかなり驚くものだった。

ですよね。音楽的にもアンダーグラウンドでしっかり評価されて、世界的にも認められてて、エンタテインメント的なところでも認められてるし、裏の部分でも……すごいと思いますよ。理想ですよね。日本人ってミュージシャンと芸能人を一緒くたにするというか、そういう傾向とか風習があるのかもしれないですけど、そこを切り離してくことが大事だと僕は思ってて。ミュージシャンはあくまでミュージシャンで……まあそこからタレントをやる人がいてもいいと思うけど、そこの差別化みたいのがしっかりつかない限り、音楽っていう文化はちゃんと向上しないと思うし、正当に評価されない気がする。世界に対して戦えるようなものを作る……坂本龍一さんはアカデミー賞を取って素晴らしいって言われるようになったけど、取らなったらどうなっていたのかって話で。もちろんあれは素晴らしい音楽でしたけど、そうやって肩書きによって評価が変わるような日本的感覚っていうのは、今オリンピックを観ながらも感じていて。演技やなんやかんやで、素晴らしかったのに得点が違うじゃねえか、評価がおかしいってみんな言ったりするじゃないですか。それと同じように、このアルバムが評価されないのはおかしいじゃないか、この音楽は素晴らしいじゃないかって簡単に騒げるぐらい、音楽の聴き方をちゃんと日本の中で構築すべきだと思うし、それが当たり前になるために自分たちができることってないかなって思ってるんですよ。

山口一郎

──そういう意味合いでDaft Punkのアルバムが日本人のリスナーに対して訴えかける力って大きいですか?

でもこの音楽は難しいと思う、日本人には。売れないと思う(笑)。素晴らしいんですけどね。

──だからこのインタビューの企画が生まれたわけだし、わざわざツアー中にサカナクションのプロモーションでもない貴重な時間をいただいているわけです。

ひたすらアルバムを聴くしかないんじゃないですか? 最高にカッコいいですから。でもお酒飲んでみんなでワイワイ聴くものじゃないから……「One More Time」とは違うからね。でもちゃんとリズムを追いかけてグルーヴを楽しむっていう、嗜好品としてはものすごいものですけどね。でもこのファンキーなノリは日本人好きだと思いますよ。要するに盆踊り的なノリですから可能性はあるんですけどね。……でもみんな歌を待っちゃうからさ、歌が入るまで音楽として聴かないわけですからね。もうそこから音楽は始まっているのに、イントロのグルーヴを感じようとしないんですよね。そこがすごく難しい。……だからこそ、いつかインストアルバムは作りたいですね。それが評価されるような時代が来たらいいなって思うし、そういう時代を作りたい。何を聴きたいかって、人それぞれなわけですよ。でもね、「歌の次に何を聴くかバージン」なわけですよ、日本人の多くは。だからドラムなのか、シンセなのか、ギターなのか……どの音を聴いて、音と音の間にある感情や心理を感じられるのかっていうところまでをちゃんと音にしたいです。Daft Punkがそれを世界中でやっているわけですからね。そういうのを意識して作れるときが来たらいいなって思いますね。

Daft Punk 最新アルバム「Random Access Memories」 / 2013年5月22日発売 / 2520円 / ソニーミュージック / SICP-3817
「Random Access Memories」
収録曲
  1. ギヴ・ライフ・バック・トゥ・ミュージック
  2. ゲーム・オブ・ラヴ
  3. ジョルジオ・バイ・モロダー
  4. ウィズイン
  5. インスタント・クラッシュ
  6. ルーズ・ユアセルフ・トゥ・ダンス
  7. タッチ
  8. ゲット・ラッキー
  9. ビヨンド
  10. マザーボード
  11. フラグメンツ・オブ・タイム
  12. ドゥーイン・イット・ライト
  13. コンタクト
  14. ホライズン ※日本盤ボーナストラック
サカナクション 9thシングル「グッドバイ / ユリイカ」 / 2014年1月15日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD+DVD] / 1890円 / VIZL-607
通常盤 [CD] / 1260円 / VICL-36857
CD収録曲
  1. グッドバイ
  2. ユリイカ
  3. 映画(AOKI takamasa Remix)
初回限定盤DVD収録内容
  1. 「ユリイカ」 MUSIC VIDEO
  2. Behind the scenes of SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction -LIVE at MAKUHARI MESSE-
サカナクション
サカナクション

山口一郎(Vo, G)、岩寺基晴(G)、江島啓一(Dr)、岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)からなる5人組バンド。2005年より札幌で活動開始。ライブ活動を通して道内インディーズシーンで注目を集め、2006年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2006 in EZO」の公募選出枠「RISING★STAR」に868組の中から選ばれ初出場を果たす。2007年5月にBabeStarレーベル(現:FlyingStar Records)より1stアルバム「GO TO THE FUTURE」、2008年1月に2ndアルバム「NIGHT FISHING」を発表。その後、初の全国ツアーを行い、同年夏には8つの大型野外フェスに出演するなど、活発なライブ活動を展開する。2009年1月にVictor Records移籍後初のアルバム「シンシロ」をリリース。2010年3月に4thアルバム「kikUUiki」を発表し、同年10月に初の日本武道館公演を成功させる。2011年には5thアルバム「DocumentaLy」をリリースし、同作のレコ発ツアーの一環で初の幕張メッセ単独公演を実施。約2万人のオーディエンスを熱狂させた。2012年は「僕と花」「夜の踊り子」という2枚のシングルを発表。2013年3月に約1年半ぶりとなるアルバム「sakanaction」をリリースし、全国ツアー「SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction」を開催した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。