音楽ナタリー Power Push - 「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」水島精二×川本真琴×ZAQ

奇才&新鋭、2人の女性SSWと語る“超人”と“正義”と“正義の味方”

ホントに使えんのけ? そんなこと許されるの?

──一方、川本さんは第1話の劇中歌「あの素晴らしい愛をもう一度」のカバーでアニメに参加なさっています。

水島 これには僕もビックリしました。

──へ!? 挿入歌って監督が決めるものなんじゃないですか?

水島精二

水島 いや、會川(昇)さんが勝手に挿入歌として使うって脚本に書いてたんですよ(笑)。僕が昭和41年生まれで、會川さんが40年生まれなんですけど、今回の作品ではそんな僕らが実際に見てきた昭和を描いている部分もあって。ただ「この世界は昭和40年代です」とかって感じで、僕らの子供時代の風景をそのまま描いても今の若い子たちからしたら古くさいだけで、なんの面白味もないだろうと。なので架空の“神化”っていう元号を設定してるんです。ノスタルジックではあるんだけど、ただの昭和ノスタルジーじゃない。ポップなビジュアルにしたり、現代的なアイテムや要素も盛り込んだりしていこうと思って。でもやっぱり実際の昭和とのつながりも欲しいよねって話をしてたら會川さんがシナリオに「この場面のBGMは『あの素晴らしい愛をもう一度』」ってサラッと書いてまして。それを見た僕は「ホントに使えんのけ?」みたいな(笑)。

──ははは(笑)。

水島 そんな話から始まり「誰が歌うのかなあ?」と思ってたら、今度は別のスタッフから「川本真琴さんに頼めることになりました」と聞かされ(笑)。「マジで!? そんなこと許されるの?」って、もう大喜びでしたね。

──川本さんはなぜ「そんなことを許した」んでしょう?

川本真琴 正直私の中では「最新のアニメとこの曲って合うのかなあ」ってすごく謎だったんですけど(笑)、そういうコラボも面白いかなって。アニメの中の時代や元の曲が発表された時代に合わせるんじゃなくて、今の自分がこの曲を歌ったとき、どうアニメとリンクするのか興味があって。でも、私すごく知りたかったんですけど、この楽曲を挿入歌に選んだのはどうしてなんですか? この曲ってすごく個性的だと思うんですよ、世界観とか。

水島 実は僕と會川さんがアニメの中で「あの素晴らしい愛をもう一度」を使うのは2度目なんです。それぐらい僕らに刷り込まれている曲というか、僕らが生み出したキャラクターの気持ちを代弁したり、アニメの世界の空気を表したりするときにハマる曲だと思っていて。で、刷り込まれてるのってたぶん僕らだけじゃないんですよね。実際ほかのアーティストさんもリバイバルしたりしているし、CMソングで使われたりもしているわけですし。今回は東京・新宿の思い出横丁みたいな、お世辞にもキレイとは言いにくい飲み屋街の、とある店のラジオから「あの素晴らしい愛をもう一度」が流れている中、主人公とヒロインがひさしぶりに再会するっていうシーンを想定していて。

めっちゃ「1/2」の声だ!

──そのけっこうベタな昭和感あふれるシーンで流れる「あの素晴らしい愛をもう一度」が、涼しげでアナログライクなシンセとアコギが絡むスタイリッシュな仕上がりになったのは……。

川本 私が実際にアレンジしたわけではないんですけど、おしゃれな人が好きな感じに仕上げようと思って。監督さんもそれでOKというふうにおっしゃってくれましたし。

水島 そうですね。僕からもいわゆるベタベタのカバーをするんじゃなくて、かなりアレンジをしたいって話はさせてもらっていて。“昭和”をリファインするのだから、挿入歌も今の若い子たちに聴いてもらいたいなっていう気持ちがありましたから。結果広がりがある、フワッとした感じの今のアレンジに着地していただけたのはすごくよかったですね。

川本 でもこの曲、再会の場面で使われるんですね。私、「あの素晴らしい愛をもう一度」って別れの曲なのか、再会の曲なのかどっちなのかな?ってずっと思っていて。録ってるときわからなかったんですよ。

水島 わからなくて全然いいんです! 川本さんが川本さんとして歌ってくれているということがすごく大事だったので。声を聴いて「あ、川本真琴さんだ」ってすぐわかる、そういうインパクトや、ある種の凄味がほしかったんです。

ZAQ 唯一無二ですよね。誰にも出せない。初めて聴かせていただいたとき「めっちゃ『1/2』の声だ!」「すごい! 本物の川本さんだ!」「アニメでご一緒できるんだ!」っていうミーハーな感動がすごい大きくて(笑)。

水島 「るろうに剣心」のオープニングで「1/2」が流れてきたときって本当にインパクトがありましたからね。実は僕、あの頃のアニソンにちょっと不満があったんです。「なんでこんなにマンガ的な、いかにもな歌しかないんだろう」って。「もっとポピュラリティがある音楽とアニメをくっつけることってできないのかな?」って思ってたところに「1/2」であったり、T.M.Revolutionの「HEART OF SWORD ~夜明け前~」であったり、それこそ普段歌番組で観ている人たちの曲が「るろうに剣心」とともに流れてきて。あの一連のタイアップと、西川貴教さんがアニメの制作陣とガッチリタッグを組んだ上で主題歌を作った「機動戦士ガンダムSEED」の存在が、今のアニメソングシーンを形成する上で重要なターニングポイントになってるんだと思いますよ。

──そしてその川本さんがまたアニメの関連楽曲を歌うことになった。

水島 だから初めて「1/2」を聴いたときくらいアガりました(笑)。

ZAQ しかも出会いの歌なのか、別れの歌なのかで迷ったっておっしゃってましたけど、声もトラックもノスタルジックなアニメの雰囲気とすごくリンクしていたのも本当に素敵で。

川本 よかったあ(笑)。私はホントにいつも通りというか、今の自分の感じで歌わせてもらっただけなんですよね。

水島 ただアニメって1話だいたい20分ぐらいだし、この作品はわりとシーンが細かく切れてるんで、映像の中では流せる尺が限定されちゃうんですよ……。

ZAQ もったいない! 尺を稼ぐためにBPMを上げますか?(笑) (早口で)「あの素晴らしい愛をもう一度!」

川本 アリですね、アリ(笑)。

水島 いや、それお蔵入りパターンですよ(笑)。

「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」

テレビアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」10月より放送開始

“神化”という架空の元号をもつ“もうひとつの日本”を舞台にしたSFアニメ。

戦後20余年、高度経済成長まっただ中の“神化・日本”は宇宙人、妖怪、ファンタジー世界の生命体、サイボーグなど、さまざまな“超人”と呼ばれる存在がときに日常を謳歌し、またときには素性を隠しながら敵対勢力との暗闘を繰り返す世界。その“超人”世界の秩序安寧のために組織された厚生省の外郭団体・超過人口審議研究所、通称“超人課”に所属する人吉爾朗(ひとよしじろう)の活躍を、「鋼の錬金術師」シリーズなどで知られる監督・水島精二、脚本・會川昇のタッグが描く。

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ZAQニューシングル「カタラレズトモ」 / 2015年10月21日発売 / Lantis
アーティスト盤 [CD+DVD] / 1944円 / LACM-14396
アニメ盤 [CD] / 1404円 / LACM-14397
川本真琴withゴロニャンず「ミュージック・ピンク」 / [アナログ] 2014年12月15日発売 / 1080円 / RHNS-702 / 雷音レコード / なりすレコード
川本真琴withゴロニャンず「ミュージック・ピンク」
水島精二(ミズシマセイジ)

1966年、東京都生まれのアニメーション監督。1998年の監督デビュー以来「シャーマンキング」、「鋼の錬金術師」シリーズ、「大江戸ロケット」、「機動戦士ガンダム00」シリーズなど、人気作・話題作を数多く手がける。そして2015年10月、「鋼の錬金術師」シリーズでもタッグを組んだ脚本家・會川昇とともに制作したオリジナルアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」がオンエアされる。またアニメ音楽誌「リスアニ!」で連載を持ち、アニメソング系DJとしてクラブイベントに出演するなど、音楽マニアとしての横顔も。

ZAQ(ザック)

ZAQ

3歳の頃からピアノを始め、音楽大学のピアノ科を卒業。音大在学中にテレビから流れてきたアニソンがきっかけでアニソンシンガーを目指す。2011年に行われた動画サイトのコンテストではファイナリストに選ばれた。そして2012年にテレビアニメ「未来日記」のキャラクターソングの作詞、作曲、編曲を行いクリエイターとしてデビュー。同年10月、テレビアニメ「中二病でも恋がしたい!」のオープニング主題歌「Sparkling Daydream」でアーティストデビューを果たす。2014年には1stアルバム「NOISY Lab.」を発売。そして2015年10月にテレビアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」のオープニングテーマを収録したシングル「カタラレズトモ」をリリースする。

川本真琴(カワモトマコト)

川本真琴

1974年生まれ、福井県出身。1996年に岡村靖幸プロデュースのシングル「愛の才能」でソニーレコードよりメジャーデビュー。テレビアニメ「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」のオープニングテーマ「1/2」が収録された1997年リリースの1stアルバム「川本真琴」はミリオンセラーを記録した。その後2002年にプライベートオフィスを設立。近年はmabanua、神聖かまってちゃんらとのコラボレーション作品を発表したり、ぱいぱいでか美、峯岸みなみ(AKB48)といったアーティストに楽曲提供をしたりと活動の幅を広げている。また2014年には三沢洋紀(岡林ロックンロール・センター、真夜中ミュージック、ラブクライほか)、植野隆司(テニスコーツ)、池上加奈恵(はこモーフ、真っ黒毛ボックス)、澤部渡(スカート)らとともにバンド・川本真琴withゴロニャンずを結成し、アナログ7inch盤「ミュージック・ピンク」を発売した。


2015年10月2日更新