「1cmPOP!」の2つの意味

──bomiさん独自のポップミュージックがひとつの形を見たフルアルバムだと思います。

ありがとうございます。これまでインディーズを含めて3枚のミニアルバムをリリースして、作品ごとにそのときのモードを反映してきたんですけど。でもこうしてフルアルバムができてみると、共通した軸みたいなものがあったんだなって思います。このアルバムのキャッチフレーズとして「1cmPOP!（1センチメートルポップ）」という言葉を打ち出しているんですけど、まさにそんな感じだなって。

──そのキャッチにはどんな意味を込めているんですか？

最初にプロデューサーのwtfが「bomiの音楽を一言で表す言葉を考えよう」って言い出して。そのときに彼が「1cmPOP!」というキャッチを提案してきたんですね。私も「なるほど」と思って。普通に生きているんだけど、よく見ると1センチメートルだけ浮いている人の世界を私は歌っているんだなって。でもwtfは「1センチメートルだけポップな音楽」という意味で提案したみたいで（笑）。

──双方の定義に合点がいきますけどね（笑）。言葉の響きもいいし、結果オーライで（笑）。

フィクションとノンフィクションの間にあるもの

──bomiさんにとっての「1cmPOP!」の定義をもう少し詳しく訊かせてもらえますか。

私の定義としては、日常と地続きなんだけど、そこからフッと一瞬浮くような瞬間を曲に描いてきたなと思って。でも非日常のファンタジーにはなりすぎない感じ。リアルに心情を吐露するシンガーソングライターのようなアプローチではなく、かといってそれとは真逆のフィクショナルでぶっ飛びすぎた音楽でもない。その気持ち良いバランスをずっと追求しているんだなって思ったんです。今回、ジャケットとアーティスト写真を撮っていただいた川島小鳥さんの「未来ちゃん」という写真集があるじゃないですか。

──彼の代表作ですよね。

そう。あの写真集のモデルになっている未来ちゃんという女の子は、実際には未来ちゃんという名前ではないんですよね。小鳥さんが佐渡島には面白い子がいっぱいいるという話を聞いて、実際に佐渡島に行って彼女と出会って。それから1年間かけて彼女を被写体に作品を撮ることになったと。そのとき、小鳥さんは彼女に自分がイメージする“未来ちゃん”という架空の女の子を投影したらしいんです。

──そうだったんだ。

小鳥さんは、彼女が自分の思う未来ちゃんになったときだけシャッターを押したと言っていて。それもフィクションとノンフィクションの間じゃないですか。その話を聞いたときに私の考えている理想の音楽観に近いなあと思ったんです。

──bomiさんもあえて自分のリアルな像や感覚とは少し距離感のある主人公であり、物語を歌に描きたいと思っている。

そうですね。距離感はあるけど、芯の部分は同じというか。確かに私の書く歌詞って、実際の私がどうという感じではなくて、別の主人公を立てている。でもその主人公も私の要素を核に持っていて。そのバランスはwtfが引き出してくれるところも大きいんです。制作はいつもトラック先行なので。