音楽ナタリー PowerPush - angela

現状を打破する“高校野球+合唱+四つ打ちトランス”

昨年、アニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」でダークトランスと行進曲のマッシュアップという新機軸を打ち出し、アニメソングファンの度肝を抜いたangela。そんな彼らがこのたびシングル「騎士行進曲」を発表した。

シングル表題曲は「シドニアの騎士」の続編「シドニアの騎士 第九惑星戦役」のオープニングテーマ。この曲で彼らは、三三七拍子調のリズム、ド派手に鳴り響くブラスとコーラス、そしてクールながらもハードな四つ打ちビートとマシンボイスをマッシュした「シドニアの騎士」主題歌の“正統”進化バージョンにして、“異色”のアニメソングを作り上げている。

さらに5月20日にはニューアルバム「ONE WAY」の発売を控え、そのタイトルに込められた意味の通り“後戻りせず、真っ直ぐにこの道を突き進む”angela。彼らのディスコグラフィ、そしてアニメソングのあり方をも更新するかのような「騎士行進曲」はいかにして生まれたのか? atsukoとKATSUに聞いた。

取材・文 / 成松哲

“悩まない”ではなく“悩めない”

──昨年5月にリリースされた第1期のテーマソング「シドニア」って去年のアニメソングシーンのアンセムの1つだと思ってるんです。

angela

atsuko(Vo)KATSU(G) ありがとうございます!

atsuko 今度の(「騎士行進曲」)はいかがでした?

──ビックリしました(笑)。「この人たち、『シドニア』を発表したことによって自らに課したハードルを、とんでもない高さまでジャンプして飛び越えたなあ」って。「シドニアの騎士」のテーマソングなるもの=トランス+行進曲・応援歌をさらに突き詰めていましたから。

KATSU それはうれしいなあ。「『シドニアの騎士』の新シリーズのオープニング主題歌も」ってお話があったときはぶっちゃけスゲー怖かったですから。

──じゃあ制作は難航した?

atsuko いや悩まなかった……じゃないな。今回は悩めなかったんですよ。

──悩めなかった?

atsuko 「次の『シドニアの騎士』のオープニングもangelaで」って決まったのが去年の秋頃。半年くらい前に急きょ決まったことなので。

──「シドニアの騎士」の新シリーズ「第九惑星戦役」が今年4月からオンエアされることはずいぶん前からアナウンスされてましたよね?

atsuko でも特にお話がなかったから「あっ、次の『シドニア』のオープニングは別の人が歌うんだな」って油断してたら、秋にお話をいただいて。「もうちょっと早く言ってくださいよ! キング(レコード)さん」って感じだったんですけど(笑)、時間がなかったのが逆によかったのかな、とは思ってますね。「もうこの音しかない!」って感じで突っ走れましたから。

ソ連、「サクラ大戦」、高校野球

KATSU ただホントに偶然の産物としか言いようがないというか、奇跡的にできあがった曲ではあるんです。というのも、その「次のオープニングも」っていう話があったとき、アニメの監督(瀬下寛之)からソ連の国歌(「祖国は我らのために」)の音源が届いて。だから怖かったんですよね。「『シドニア』以上のものを」って待っててくれているangelaファンと「シドニアの騎士」ファンの期待と、監督の難題の両方に応えなきゃいけなかったから。

──しかも制作期間はあまりないし。

KATSU そうそう。「どうしよう? どうしよう?」って考える時間もないような状況だったんだけど、奇跡的に曲のイメージが降りてきて。

──どういうイメージが?

KATSU 監督からいただいた音源が生まれた時代背景をイメージするところから始まり、「あの曲を日本的、しかもポップなものに置き換えるなら(ゲーム「サクラ大戦」シリーズのテーマソング)『檄!帝国華撃団』かな」っていうところを経由して、より日本的でポップなものっていうことで行き着いたのが高校野球の応援歌なんです。「あれって学校という組織をまとめあげてモチベーションを高める音楽だよな」ということで、イントロやサビの三三七拍子的なリズムが浮かんできた感じですね。

「機動戦士ガンダム」と「宇宙戦艦ヤマト」

──そしてもう1人のコンポーザーであるatsukoさんもKATSUさんのアイデアに乗った?

atsuko いや、今のはあくまでKATSUさんのイメージで、私はまた別のイメージをスタジオに持っていってますね。「どういう曲にしようかな?」って考えてたときに、ある方にカラオケに誘われたんですよ。そしたらその人が「めぐりあい宇宙」……。

KATSU 劇場版「ガンダム」?

atsuko うん、その主題歌の(井上大輔)「めぐりあい」。「♪Believe!」から始まるやつをカラオケに誘ってくれた人が歌ったんです。もちろん以前から知ってはいたんですけど、カラオケで人が歌ってる曲って普段以上にちゃんと聴こうとするじゃないですか。それで図らずも改めて聴き直すことになったんですけど、実はあの曲って構成が面白いんですよね。

──Aメロは跳ねた感じのメロディなのに、サビになったらすごい後ノリになる、不思議なんだけどキレイなメロディラインですよね。

atsuko しかもちゃんと「ガンダム」のテーマソングしてるじゃないですか。だから「あっ、面白い!」ってなったっていうのがまずあって。あと、ちょうどその頃「シドニアの騎士」って戦艦が舞台のアニメで、戦艦といえば「宇宙戦艦ヤマト」っていう、すごくシンプルなイメージも浮かんでいて。「ささきいさおさんの『ヤマト』の主題歌みたいに最初から最後までみんなで一緒に歌える曲がいいよな」っていう感じというか。あと前作の「シドニア」から続く四つ打ち、イマドキの音楽に通ずる部分もあったらいいなっていうイメージを持っていった感じですね。

ニューシングル「騎士行進曲」2015年4月29日発売 / 1296円 / スターチャイルド / KICM-3289 / Amazon.co.jp
「騎士行進曲」
収録曲
  1. 騎士行進曲
  2. 愛、ひと欠片
  3. 騎士行進曲 off vocal version
  4. 愛、ひと欠片 off vocal version
angela(アンジェラ)

岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニング主題歌「シドニア」を発表。この曲がアニメファンが選ぶ2014年のアニメーション神戸賞の主題歌賞を受賞する。そして2015年4月には「シドニアの騎士」の続編となる「シドニアの騎士 第九惑星戦役」のオープニング曲「騎士行進曲」をリリースした。