ナタリー PowerPush - SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer

Aimer×澤野弘之対談

Aimer×澤野弘之対談

この人がロックを歌ったらどうなんのかなあ

──Aimerさんは以前、澤野さんと組むまでハードな楽曲はあまり歌ってこなかったって言っていましたよね(参照:Aimer「StarRingChild」インタビュー)。

SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer

Aimer はい。

澤野弘之 ぶっちゃけた話をしてしまうと、だから最初は僕も「どうなるのかな?」って感じでした(笑)。

Aimer あはははは(笑)。

──であれば素朴な疑問なんですけど、なぜ澤野さんは「機動戦士ガンダムUC episode 6」の主題歌「RE:I AM」(2013年)をAimerさんに歌ってもらおうと思ったんでしょう?

澤野 「ガンダムUC」シリーズの主題歌を手がけたのは「episode 6」が初めてだったんですけど、実は2009年のepisode 1の劇伴を作り始めた頃から「主題歌も澤野にやらせてみても面白いかも」っていう流れはあって。当時から発表こそしてなかったものの「RE:I AM」っていう曲はあったんです。で、改めて「UC」のスタッフの方から「episode 6の主題歌を作ってくれないか」って話をもらったとき「じゃあ『RE:I AM』で行かせてください」ってことになって、ボーカリストの候補の方の資料と音源をいくつかいただいたら、Aimerさんが群を抜いて魅力的だったんです。ただ、いただいた音源は確かにバラード中心。ちょっと激しめの曲を歌っているカバーアルバム(2011年のデジタルダウンロードアルバム「Your favorite things」)もあったものの、基本的にはしっとりした曲が多かったので「この人がロックを歌ったらどうなんのかなあ」とは思ってました。

──それでもAimerさんに白羽の矢を立てた理由は?

澤野 そのあとボーカルチェックをさせていただいたんですけど……あのときが初対面でしたよね?

Aimer そうですそうです。

澤野 で、歌っていただいたら「ああ、もう全然イケるな」って。

──「どうなんのかなあ」と言いつつも澤野さんの読みはバッチリ当たっていた、と。

澤野 そうなるんでしょうね。基本的に思い付きでしか行動してないんですけど(笑)、それでもAimerさんが素晴らしいボーカリストなのは間違いなかったので。第一印象はたぶん皆さんと同じ。このハスキーな声に魅力を感じていたんですけど、現場で「RE:I AM」を歌い出してもらった瞬間、それだけじゃないことに気付いたというか。Aメロ、Bメロには「ああ、やっぱりこうなるよな」っていう安心感があって、でもサビに入った瞬間、表情がガラッと変わる。聴いたことがない世界にガッと惹き込むんですよ。さっきも言った通り、最初は勝算なんか特になかったんですけど、あの瞬間「あっ、これは面白いものができるな」って思えましたね。

Aimer ありがとうございます。

また歌えるチャンスが巡ってきた

──一方「ロックチューンを歌ってください」っていう話を受けたAimerさんは?

Aimer 澤野さんが仮歌を歌っている「RE:I AM」のデモを聴かせていただいたときから、すごくワクワクしていた。それに尽きますね。確かにいわゆるロックはそれまで歌ったことがなかったんですけど、あまり不安はなくて。ある意味澤野さんと同じというか「この曲を自分が今歌ったら、どういう感じになるんだろう」ってすごく楽しみでした。あと、またこういう曲を歌えるチャンスをもらえるなら、ぜひつかみたいと思ってました。

──「“また”歌えるチャンス」?

Aimer 昔、そんなに声量がなかった頃に激しい曲を歌ってノドを潰した経験があって。そういう理由もああってしっとりとした曲を中心に歌っていたんですけど、また歌えるのであれば激しい歌も歌ってみたかったですから。

澤野 これで僕の曲をバンバン歌ったせいでまたノドの調子が悪くなったなんてことになったら、Aimerさんのファンの方からメッチャ責められますよね? 「澤野の野郎がAimerを!」って。

──あはははは(笑)。

Aimer いやいやいや(笑)。あの頃は本当に技術がなくて、ノドに負担をかけるような歌い方をしていただけなので。今は本当に楽しく歌わせていただいています。

結果を残せたのは巻き添えを食らったAimerのおかげ

──先ほど澤野さんは「勝算はなかった」と言っていましたけど、実際のところは「RE:I AM」にせよ、続く「ガンダムUC episode 7」の主題歌「StarRingChild」にせよ、きっちり勝ったわけですよね。チャートがすべてではないかもしれないけれど、それでも「RE:I AM」はオリコン週間シングルランキングで最高6位、「StarRingChild」は3位になったわけだから。

澤野 すべてはAimerさんと「ガンダムUC」のおかげです!

Aimer とんでもない(笑)。

澤野 でも「RE:I AM」ってものすごくエネルギーを注いで作った曲だったし、個人的にすごく納得いくものができたなって思えていたので「UC」の最終章、episode7の主題歌については本当にどこか他人事だったというか。そもそもepisode7の制作が始まった頃は「最終章の主題歌だし、誰かガンダムシリーズに縁のある人が作るのかな?」「誰なんだろう?」くらいの気持ちでいましたし。

──だからか、他媒体のインタビューで「episode 7の主題歌も」ってオファーがあったとき、episode 6の主題歌がラスボスだと思ってたのに真のラスボスがいた!ってビックリした、って言ってましたよね。

澤野 「マジですか?」みたいな(笑)。なんの準備もしていなかった上に、最終章の主題歌っていうことでプレッシャーは感じてました。でもちゃんと結果を残せたのはやっぱり、巻き添えを食らってくれたAimerさんのおかげなんじゃないかなっていう気はしてます。

Aimer 2ndアルバム「Midnight Sun」/ 2014年6月25日発売 / DefSTAR Recordst
「Midnight Sun」
初回限定盤 [CD+DVD] 3600円 / DFCL-2068~9
通常盤 [CD] 3200円 / DFCL-2070
CD収録曲
  1. WHEN YOU WISH UPON A STAR -prologue-
  2. 眠りの森
  3. 7月の翼
  4. words
  5. Cold Sun
  6. AM03:00
  7. 小さな星のメロディー
  8. VOICE
  9. RE:I AM
  10. StarRingChild
  11. 星の消えた夜に(Re-echoed by Genki Rockets × give me wallets)
  12. Iris
  13. WHEN YOU WISH UPON A STAR
初回限定盤DVD収録内容
  • 「眠りの森」MUSIC VIDEO
  • 「今日から思い出」MUSIC VIDEO
  • 「ポラリス」MUSIC VIDEO
  • 「RE:I AM(Live ver.)」
SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer アルバム「UnChild」/ 2014年6月25日発売 / DefSTAR Recordst
初回限定盤 [CD+DVD] 3600円 / DFCL-2068~9
通常盤 [CD] 3200円 / DFCL-2070
収録曲
  1. UnChild
  2. StarRingChild -English ver.-
  3. A LETTER
  4. Destiny
  5. But still...
  6. Just say good bye
  7. Next 2 U
  8. bL∞dy f8
  9. REMIND YOU
  10. EGO
  11. Because we are tiny in this world
  12. RE:I AM -English ver.-
Aimer(エメ)

女性シンガーソングライター。幼少期より両親の影響で音楽に親しみ、ピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始める。15歳のときに声が一切出なくなるアクシデントに見舞われるが、回復とともに独特の歌声を獲得。2011年から本格的に音楽活動を開始し、2011年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たす。以来、2012年8月発売のシングル「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」がテレビアニメ「夏雪ランデブー」のエンディングテーマに、2013年のシングル「RE:I AM」がアニメ「機動戦士ガンダムUC episode 6 ~宇宙と地球と~」の主題歌に採用されるなど、各方面から大きな注目を集める存在に。そして2013年11月にはスタジオ収録の新曲とライブ音源をパッケージしたアルバム「After Dark」を、2014年5月、表題曲が「機動戦士ガンダムUC」シリーズ最終章となる「episode 7 ~虹の彼方に~」の主題歌に採用されたシングル「StarRingChild」を発表。さらに6月には2ndソロアルバム「Midnight Sun」と、「ガンダムUC」シリーズの劇伴を手がけ、「RE:I AM」「StarRingChild」のプロデューサーでもある澤野弘之らとのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時リリースした。

澤野弘之(サワノヒロユキ)

1980年東京都生まれの作曲家、編曲家。幼少期よりピアノに親しみ、10代のうちに坪井伸親に師事。現在はテレビドラマ「医龍」シリーズや、アニメ「ギルティクラウン」、「進撃の巨人」、「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなどの劇伴を手がけるかたわら、室屋光一郎らとのプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]も始動させ、積極的にライブ活動を展開している。2014年6月には「機動戦士ガンダムUC episode 6 ~宇宙と地球と~|」の主題歌「RE:I AM」と、「同episode 7 ~虹の彼方に~」の主題歌「StarRingChild」を歌ったAimerとのコラボレーションアルバム「UnChild」を発表した。