ナタリー PowerPush - aiko
3つのインタビューで紐解く「時のシルエット」
あ~ちゃん(Perfume)インタビュー
自他共に認めるaikoファンで、aiko好きアーティストの筆頭とも言えるあ~ちゃん。aikoを好きになったきっかけから本人とのエピソード、楽曲、ライブについてまで、さまざまな観点から、あふれるaiko愛をたっぷりと語ってもらった。
aikoさんのおかげで「歌うのってこんな楽しいんじゃ」って思えた
──まず、あ~ちゃんがaikoさんの音楽に出会ったきっかけを教えてください。
最初は12歳か13歳の頃、アクターズスクール時代に歌のテストでaikoさんの曲を選んだことですね。歌の実力を見るセレクションテストっていうのがあって「今度までには」を歌ったんです。もちろんその前からaikoさんのことは知ってたんですけど、私たちの中でaikoさんの曲は歌のうまい人が歌うものっていうイメージがあって(笑)。選ぶとみんなから「おっ、挑戦するの? いくねえ!」って言われる、みたいな。だから知ってはいたけど手を出す勇気がなかったんですよね。
──挑戦してみて、結果はいかがでした?
先生が、「あ~ちゃんの『今度までには』が一番良かった」って言ってくれて。100人以上の生徒の中でaikoさんを歌う人たちっていっぱいいたのに、褒めてもらったことがすごいうれしくって、「歌っていいんだ」って自信が付いて、そこからaikoさんをすごく聴いたり歌ったりするようになりましたね。
──じゃあ、自分の歌に自信を持てたのもaikoさんの曲がきっかけだったりする?
そうですね。アクターズのときは、好きなものを楽しんで聴くというより「これが自分に合ってるかも」っていうアーティストさんの曲を練習するために音楽を聴いてたので、私の中で「音楽」の概念が違ったんですよね。だから自分から本当に音楽を好きになって「歌うのってこんな楽しいんじゃ」って思えたのはaikoさんのおかげです。
「こないだあ~ちゃんに会ったよ」を画面メモ
──その後、Perfumeで上京してきてaikoさんと会うわけですよね。初対面はいつどんな場面だったんですか?
音楽番組に出させてもらったときですね。まず出演が決まった時点で「うわあ一緒だ」っていろいろ震えました(笑)。で、お会いしたときに「本当に好きなんです」って言ったら「ほんまにー? サインさせてー」ってサインしてくださったんですよ。そしたらそれを後日aikoメール(※aikoオフィシャルモバイルサイトのメールサービス)で「こないだあ~ちゃんに会ったよ」って書いてくれていて。もうそれはそれは感動して「はあー……! これは……!」って。
──「こないだあ~ちゃんに会ったよ」というメールがあ~ちゃん自身のケータイにも送られてきたんですか(笑)。
送られてきたというか見た、というか……。もう画面メモしたり、記念にケータイの画面をケータイで撮るみたいなこともして(笑)。私はもちろんその出来事を覚えてますけど、aikoさんの日常の中でもトピックになったんだって思うと本当にうれしくて!
──ちなみに、お会いしたときaikoさんはPerfumeについて何かおっしゃってました?
会う前からPerfumeを知ってくださっていて、「踊り、すごいなぁ!」「ヒールもそんな高いんやねえ。私なんか普段でもヒール履くの大変やのに」みたいなことを言ってましたね。
私もこう思える人と出会わなきゃ心決めちゃダメだなって思ってる
──あ~ちゃんの中で、特に思い入れの深いaikoさんの楽曲は?
「あの子へ」(2001年 / シングル「ロージー」収録)っていう曲があるんですけど、あれはすごい歌だと思っていて。寝てて、起きたら目の前に“あなた”がいてドキッとして、「ああ好きだわ」と思うんだけど、この「好き」って言葉を今すぐ伝えたくなるくらい好きで、曲の最後には「少し頼りないけど すべてあたしが守ってあげる」ってあって。
──ええ。
そこで私が思ったのが、目が覚めて、目の前にすごい好きな人がいるっていう事実から、「守ってあげる」っていうところまで思うなんて……みたいな。しかも「あの子へ」って2分くらいしかない短い曲なのに、すごい濃厚な思いが詰まっていて。だから私も、ふとした瞬間にそこまで思える人と出会わなきゃ心決めちゃダメだなって、なんとなく自分の中の決め事として思ってるんです。
──もはや恋とかを超越した感情ですよね。
そうですね。ニューアルバムにも究極な曲ありましたよね。「あなたに出逢えた事があたしの終わり」っていう。
──「ずっと」ですね。
「優しく笑う向こうに 絶望があったとしたら 全部あたしにください それでも平気だから」っていう歌詞を読んで、すっごい!と思って。そんなことまで言い切れる、そんな深い気持ちってあるのかなって。でもそう思えるくらいの人と出会いたいし、そういう感覚を「ずっと」って言うんだな、と知って。だからaikoさんの曲は聴けば聴くほど、読めば読むほど、知れば知るほど本当に深いなと思います。
──なるほど。ほかにもありますか?
昔の曲を聴いてもすごいと思っちゃいますねえ。例えば「気付かれないように」とか「深海冷蔵庫」(共に2006年 / アルバム「彼女」収録)とか「初恋」(2001年)とか、何年前の曲だとしても今共感できるフレーズが入ってるのも素晴らしいって思う。
aikoさんの曲って現場の意見超入ってる
──あ~ちゃんは、“aikoさんらしい曲”ってどういったものだと思いますか?
新曲の「くちびる」にも、「たった今すぐ逢いたいってあなたが思っていて欲しい」っていう詞があるじゃないですか。自分の相手への気持ちの量がすごいってわかってるから、相手もそれ以上に想っててほしい。だからこそ気持ちがあんまりないと感じたときの不安ったら、みたいな(笑)。そういう良くない方向へ妄想しちゃう感じは、どのアルバムにもあると思うんですよね。そこが私はaikoさんらしいなって思うし、みんな聴いていて「うわ、わかる」って感じるんじゃないですかね。だって現場の意見、超入ってるじゃないですか!
──現場の意見!?(笑)
日焼け止めが落とし切れてなくって腕から夏の匂いがする(「恋のスーパーボール」)、とか。「深海冷蔵庫」の「ガムの味がなくなって~口の中ざらざらになる前には捨ててしまおう こんな簡単に決められない あなたの事は痛いまま」とか! すごい! それから「桃色の汗」ってフレーズは何回か出てきてると思うんですけど、そういうaikoさんならではの言葉選びも好きですね。「耳」とか「唇」とか「まつげ」とか「親指」とか「星のリング」とか。もうこっちとしては「星のリングに何があったんだー!」みたいな(笑)。
──あ~ちゃん、本当に聴き込んでますねえ。確かに歌詞によく出てくるワードってありますよね。
そういうときは「あ、同じ男の人かな」とか「お揃いのアクセサリーなのかな」とか「ハマってたアイテムなのかな」とか考えちゃいますね(笑)。聴いてる人が共感できる部分を踏まえつつ、想像させてくれるところがたくさんあるから、aikoさんの曲は聴いていてこっちもドキドキしちゃいます。
ライブの考え方はaikoさんから影響を受けてる
──aikoさんのライブについてはどう思いますか?
ライブももちろん行かせていただいていて、DVDも持ってます♪ 私のライブへの考え方は、aikoさんのライブから影響を受けてるところがすごくたくさんありますね~。
──例えばどんなところですか?
ライブの中で、お客さんとたくさんコミュニケーションをとるところ。どんなに遠くにいる人も、見つけて、しゃべってくれるんですよね。あれだけの数のライブをやってて、モチベーションを維持するのって多分大変だと思うんですよ。にもかかわらずあそこまでファンサービスしたいと思う気持ちって……! だから自分もそうありたくて、昔からそのMCの時間は長かったんですが、お客さんと触れ合うコーナーは絶対に外したくなくて。いくら長いと言われても(笑)、そこだけはどうしても外せないなって思っています。
──うんうん。
あとメドレー。メドレーを作るときは、本当にaikoさんみたいなメドレーにしたい!って思って作ることが多いですね。aikoさんのメドレーって、前奏が鳴ったのに歌が始まったら違う曲になったりとか、Aメロから入るのかと思いきやサビから入る、みたいな構成で。「♪まばーたきー……違うのーー!?」みたいな。
──あはは(笑)。びっくりさせられますよね。
期待してたものを良い意味で裏切るっていう演出は、盛り込みたいですね。あと、その場でお客さんからキーワードをもらって即興で曲を作るとかは、aikoさんにしかできないことですよね。その日しか聴けないっていう特別感が生まれて、「曲の中に私の言葉が!」みたいな喜びをお客さんに与えてくれて……。そういう、そのときだけの思い出はPerfumeでも作りたいなって思っているので、MCの内容を決めないようにしたり、できるだけ今感じてることを伝えようと心掛けています。
「男子女子」コールがライブ中一番緊張する場面
──そして、aikoさんのライブを参考にされたであろう最大のポイントが、“男子女子そうでない人コール”なんですけど。
はい(笑)。
──あのコール&レスポンスをPerfumeのライブでもやり始めた経緯は?
元々私はあれをライブで観て「天才!」と思っていて。私たちはそれまで、お客さんに声を出してもらうのに「こっち側の人!」「ここの人!」って言ってたんですけど、もっと細かく分類して「お医者さん!」とか「弁護士!」とか言いたいなと思ったときに「それってaikoさんだ!」って気付いたんです。でもそれをやるのはちょっと申し訳ないからってずっと踏み切れなくて、一度だけイベントでやってみたあとにaikoさんにお会いする機会があったんですね。で、「実は『男子女子』っていうやつをこないだ初めてやらせてもらったんですよ」って話したら、「ほんまー? やってやってー。どんどん広めてってー」と言ってくださって。
──ご本人のお墨付きになったわけですね。
「なんて懐が深いんだろう……! なんて人っ……!」と思いました。しかも「どんどん広めてって」って言われたことで「広めなければ!」みたいな勝手な使命感が出てきちゃって(笑)。そこからはライブでも定番にさせてもらっていて、私としてもあそこはライブ中どこよりも緊張する場所です(笑)。
──しかも、その部分は「P.T.A.のコーナー」としてPerfume流にどんどんアレンジされ、進化してますよね。今やPerfume名物にもなりつつあると思います。
あはは。どんどん尺が長くなってきて(笑)。でもaikoさんという大先輩に「広めてって」って言ってもらえたのがきっかけでたくさんやらせていただくようになったので、Perfume名物と言うのもおこがましいですけど、うれしいです!!! お客さんにとってもあれがライブでの楽しみのひとつになったらいいなって思いながらやらせていただいています。
こんな人になりたい、私の憧れの人
──では、あ~ちゃんにとってaikoさんとはどんな存在ですか?
こんな大人になりたい、こんな女性になりたいっていう私の憧れの人です。aikoさんの曲も詞もそうだけど、何より人柄が本当に好きなんですよね。普通にファンとしてテレビとかで観ていて「こんないい人いるんだー」って感じてたのに、お会いしたらそれ以上にもっともっといい人で……「こんな人おるんじゃ~~(感涙)」って。こんなに何年もやってらっしゃるのにあんなに腰が低くて、いろんなことに研究熱心で、ずっと初心を忘れてないところもとても尊敬してますし、本当に魅力的すぎる人なんです。
──ひとりの人間としても、アーティストとしても尊敬していると。
音楽ももちろん好きなんですけど、私の中には、aikoさんの音楽がずっと今もこの形であり続けてくれて、ありがとうございます!って気持ちがあって。それにaikoさんって独自のブランド感があると思うんですよね。今回の新しいアルバムも「うわぁ~! aikoさん~!」っていう感じでうれしいです。そこに居続ける大変さもあると思うんですけど、いつまでもaikoさんはaikoさんの音楽を発信し続けてくれて、それがうれしいし、やっぱりすごいなって思いますね。
──でもあ~ちゃんも、すごく腰が低くて、初心をずっと忘れていなくて、共通する点はたくさんあると思いますよ。
いやー(笑)……どうですかねえ。もう本っ当に憧れの人なので、そんなこと言われると申し訳ないです。ヒーです(笑)。でもうれしいですね~こんな人になりたいです。30代になっても、こんなにかわいらしくて、こんなに乙女で、こんなに周りの人を気遣えて、感謝の気持ちをどんなときでも忘れていなくて、いつだって人のことを考えて生きてる。何気ない普通のこともとっても楽しく感じ取って、明るく過ごせる人でありたいなって思いますね、私も。
あ~ちゃん(西脇綾香)
1989年広島県出身。かしゆか(樫野有香)、のっち(大本彩乃)とともにPerfumeのメンバーとして活動する。2005年9月にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビュー。以後、幅広い活躍で多くのファンの支持を得る。2011年3月に発表した4thアルバム「JPN」はオリコンウィークリーチャート1位を獲得。2012年8月にライブDVD「Perfume 3rd Tour『JPN』」をリリースする。
収録曲
- Aka
- くちびる
- 白い道
- ずっと
- 向かいあわせ
- 冷たい嘘
- 運命
- 恋のスーパーボール
- クラスメイト
- 雨は止む
- ドレミ
- ホーム
- 自転車
初回限定仕様盤
カラートレイ&初回限定ブックレット
aiko(あいこ)
1975年大阪出身の女性シンガーソングライター。1998年にシングル「あした」でメジャーデビューを果たす。その後「花火」「桜の時」「ボーイフレンド」などのシングルがヒットを記録し、2000年に「NHK紅白歌合戦」初出場を果たすなど、トップアーティストとして人気を不動のものとする。女性の恋心を綴った歌詞と絶妙なコード進行によるポップなメロディで幅広いファンを獲得している。2011年には、デビュー13年目にして初のベストアルバム「まとめI」「まとめII」を2枚同時リリース。2012年6月に10thオリジナルアルバム「時のシルエット」を発表した。
2012年6月22日更新