壁ドンの衝撃でヒビが入ったかのように見える壁。男性の力強さと思いの丈の強さ、およびサイコキネシス能力(?)をアピールするにはぴったり。
コミックナタリー PowerPush - 築島治「私たちには壁がある。」
デイリーポータルZが「新しい壁ドン」を提案!受けて立つ少女マンガ家の妄想力と創作意欲
築島治がデザート(講談社)で連載している「私たちには壁がある。」は、幼なじみ2人が織り成すラブコメディ。毎話ごと、これでもかとさまざまな壁ドンシーンが登場する「壁ドンマンガ」としても名を馳せている。しかし築島は最近、「そろそろ壁ドンのバリエーションを考えるのもネタ切れ……」と弱気になっているらしい。
そんな折、おもしろ記事を毎日更新し続けるデイリーポータルZが「新しい壁ドン」を開発するという情報をコミックナタリーはキャッチ。築島とともにその現場に密着し、どんな壁ドンが提示されたのか、そして築島がそれを作品にどう活かすのかを追った。
取材・文/坂本恵
11月某日、講談社の社内スタジオに、3つの壁が搬入された。まだ誰も見たことがない壁ドンを具現化すべくデイリーポータルZの皆さんが制作した、以下の壁たちだ。
崩れてくる壁から女子を守る!──ヒビ割れ壁ドン
──きょうはデイリーポータルZさんが作った壁ドン装置をご覧いただきましたが、率直な感想から伺えればと。いかがでしたか?
いやー、面白かったです。実演なさっているときは私も夢中になってしまって、いろんなポーズをリクエストしちゃいました。
──せっかくの「新しい壁ドン」なので、築島先生にはぜひ作品に活かしていただけたらと思っているんですが、何かアイデアが思い浮かんだりは……。
そうですね、最初の「ヒビ割れ壁ドン」は……、なんかギャグになってしまいそうで難しいですね(笑)。ただ、そうだな、うーん、事故が起こって、男の子が崩れてくるヒビの入った壁から女の子を守ろうとドンって手をついて覆ってくれるとか……? あ、これ結構使えるんじゃないですか!? それで瓦礫の下から女の子を助けるとか。
──状況的にもシリアスな感じで、キュンとくるシチュエーションだと思います。
意外にあり得ない壁からアイデアが降ってくるものですね。あと「ヒビ割れ壁ドン」は女の子をドンする側に入れ替えてみると、すごくいいと思います。壁が壊れるほどのパワーで男の子にやられるって考えると、単純に怖いというか恐ろしいけど(笑)、力づくで攻める姿勢の女の子ってなると、ギャップがあっていいんじゃないでしょうか。ところでさっき気づいたんですが、事前にデイリーポータルZさんから見せていただいた企画書には、このヒビ割れ壁ドンってなかったと思うんですけど……。
──ああ、最初は壁ドンすると壁が崩れてなくなる、という「壁ドン解体工事」だったように記憶していますが……。
ああ、そうでした! でも、そうか、壊してしまったら1回きりですから、撮影したり何度も試せるように配慮して、企画を見直してくださったんでしょうね。
キス待ちしてると相手がいない!? ── 回転壁ドン
──次はドンした男の子が消える「回転壁ドン」です。これはどんなシチュエーションになりそうですか?
そうですね……、男の子と女の子が両思いでいい雰囲気になって、いまからキスしてくれるのかなって女の子が目をつぶって待ってる。待ってるんだけど男の子がなかなか決めきれなくて、ふと目を開けたら彼が消えてる、とか(と言いながら、消えていくシーンをサラサラとスケッチしはじめる)。
──それ、壁が回転しなくても使えそうです!
いや、せっかくだし壁は回転してほしい。でも壁が回転するってどんな状況だろう……。
──回転壁がある場所……。忍者屋敷?
あ、じゃあ2人で旅行に行って、そういう観光名所的なところを巡っているストーリーはどうでしょう。忍者屋敷で、ちょっと薄暗いしいい雰囲気になっちゃって、不謹慎にもそんなことをしようとしたらからくりが作動してしまうっていう。バカだなー(笑)。よし、(編集担当に向かって)忍者屋敷ってどこにありますか? 取材に行きましょう!
作業の途中で告白タイム! ── モールス壁ドン
──最後は「モールス壁ドン」。築島さんは撮影時にすでに、シチュエーションを思いついてリクエストなさっていましたね。
ははは。最初はモールス信号のスイッチが付いてる場所ってどこだよ、って思ってたんですけど、スタジオで撮影しているのを見ていたら、そうか、テレビ番組みたいな収録のスタジオには付いていてもおかしくないかなーって。
──なるほど。
だとしたら、2人はスタジオで撮影アシスタントのバイトをしている同僚、とか。もしくは制作会社の新米ADとか……。なんかモールス信号をネタにしたバラエティの番組の収録があったとして、その撤収の作業をしているバイト2人が、片付けの途中に告白タイムになってしまい……って、どうですか?
──だいぶ特殊な状況だとは思いますが、限定されているぶん現実味があると思います(笑)。
周りに人がいてもいいし、ちょっと薄暗いところでうっかり2人っきりになっちゃうでもいいんですけど。あれプロジェクターで文字を映してましたよね。学校の視聴覚室とかでそんな状況作れたりしないかな……。あ、扉ページで使えそうじゃないですか? 壁に映し出されている文字をタイトルにしたりして。
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※2巻は人気声優・宮野真守(菊池怜太役)と中村悠一(安孫子祐介役)の「壁ドンボイス」が手に入る特典付き!!
「そんなに彼氏欲しいならさ 俺が付き合ってやってもいいけど?」
菊池怜太と桜井真琴は、家が隣で親どうしが仲が良い、いわゆる「幼なじみ」。女の子にはモテるけどナルシストで俺様な怜太が、ある日突然真琴の「彼氏」になって……!? 俺様幼なじみと山あり谷あり壁あり、ときめき青春ラブコメ!
築島治(ツキシマハル)
デザート2006年1月号増刊のデザートスペシャル1100冬号(講談社)に掲載された「面食いでいこう!」にてデビュー。その後「鬼カレ」「好き・嫌い・好き」「泣かんもん!」などを執筆し、デザート2014年2月号より「私たちには壁がある。」を連載中。