コミックナタリー Power Push - 横山光輝「鉄人28号《少年 オリジナル版》復刻大全集」

元祖・巨大ロボットマンガが雑誌そのままに復刻 カラーイラストから付録まで、昭和の空気を再現

各界の「鉄人」ファンからも推薦コメント到着

横山光輝の代表作のひとつであり、数多くのロボットマンガに影響を与えた「鉄人28号」が復刊ドットコムより全7ユニットで復刻される。2016年11月から順次刊行されており、現在ユニット2まで発売中だ。「鉄人28号」生誕60周年を記念したこの復刻版は、月刊誌・少年(光文社)に掲載されていた当時の内容を初めて再現した単行本で、別冊付録や広告などもそのまま復刻されているのが特徴。コミックナタリーでは、復刊に際して届いた各界の「鉄人」ファンからの声や、復刻版の内容を紹介する。

各界の「鉄人28号」ファンから推薦コメントが到着!

今川泰宏

今川泰宏
プロフィール
アニメーション監督・脚本家。笹川ひろし事務所を経て、1985年に「ミスター味っ子」で初監督。代表作に「鉄人28号」「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日」「機動武闘伝Gガンダム」「真マジンガー 衝撃! Z編」。また「七人のナナ」では原作も手がける。

幼い頃の忘れもしない記憶の宝………それは近所の古本屋の湿気に包まれた本の山、その中から探し出してはむさぼり読んだ「鉄人28号」。現在の巨大ロボット・ジャンルの礎となったこの作品は、正しく明朗快活冒険活劇の決定版!!
どこまでもシンプルでストレートな娯楽作品。ところが思いもせずに自分の手でアニメ化したものは、戦後を舞台にホラー的要素をもたせ、原作とは対局になるようなシリアスな展開………確かにスポンサーの要請あっての方向ではあったものの、決して抵抗を感じた訳ではなかった………それはなぜかと自問すると、ひとつには鉄人の誕生が、横山先生自身が戦火の上空を飛ぶB-29を見上げたことからも、戦争と決して無縁ではなく、更にフランケンシュタインをイメージしたその姿が、更に私の心に小さなトゲのように残ったシーンを思い出させるからだ………。それはビッグファイア博士が鉄人を見て「やつは怪物だ」と言えば、大塚が「悪いことを企む人間には恐ろしい怪物に見えるかもしれん、しかし我々には正義の使者さ」と返す場面。それはおそらく操縦機がそうであるように、鉄人の瞳は見る者の心を写す鏡なのである。そして今回の復刊を機に、幼かった自分の心は今、どのように映るのかを見てみたい………。

高見沢俊彦(THE ALFEE)

高見沢俊彦
プロフィール
1974年、シングル「夏しぐれ」でデビュー。THE ALFEEのリーダー、楽曲制作を担当。「メリーアン」以降、2016年5月リリースの最新シングル「今日のつづきが未来になる」まで、チャート誌ランキングで50作品連続ベスト10入りを果たしている。2015年、第57回日本レコード大賞 企画賞を受賞。2017年も世界的指揮者・西本智実氏とのクラシックコンサート「INNOVATION CLASSICS 2017」を東京、大阪で開催。4月からはTHE ALFEEの全国ツアー「Best Hit Alfee 2017 春フェスタ」を行う。

〆切りなどで行き詰まった時、僕は必ずと言っていいほど、周りにあるフィギュアを手に取ります。さすがに子供の頃のように、それで遊びはしませんが、鉄人28号はかなりの頻度で創作迷路に陥った心を癒やしてくれます。今回の《少年 オリジナル版》復刻大全集は、そんなマニアにはたまりません! 今後、楽曲創作で行き詰まったら、これを読んでリフレッシュしたいと思いますが…実は現在〆切に追われていて、今すぐにでも読みたい衝動にかられています。

日野晃博(レベルファイブ)

日野晃博(レベルファイブ)
プロフィール
株式会社レベルファイブ代表取締役社長/CEO。福岡の開発会社でメインプログラマー、ディレクターを経て、子供たちにワクワクしてもらえるゲームを作りたいという思いから、1998年10月にレベルファイブを設立。世界累計出荷1550万本を記録した「レイトン教授」シリーズや、社会現象となった「妖怪ウォッチ」をはじめ「イナズマイレブン」「ダンボール戦機」各シリーズなどのクロスメディア作品で、企画原案、シナリオ制作、プロデューサーを務め、続々とヒット作を生み出す。現在、世界展開を予定しているクロスメディアプロジェクト第4弾「スナックワールド」や、第5弾「メガトン級ムサシ」を企画中。なお「妖怪ウォッチ」には鉄人28号を彷彿とさせる「ロボニャン28号」というキャラクターが登場する。

「鉄人28号」。私たちの世代だと、いつのころからか誰もがこの名前を知っている。もはや、それをいつ初めて聞いたのかもわからない。だが、このネーミング、改めて俯瞰で見てみると本当にスゴイ。 28号ということは、それまでに27体つくられていて、28番目ということなのだ。
ロボットという先進技術が、研究に研究を重ねられ、様々な用途で使われ、ついに28号というすごいロボットに行き着いたのだということを意味している。
科学技術に関しても、他国で発明されたものを、改良に改良を重ねて、さらにいいものを作り出すという、その当時の日本の国としての特性を物語っていたのかも知れない。
名前だけで、それらすべてを物語っているわけだ。実にすばらしいネーミングである。
もちろん、内容はロボットものの先駆けである。ロボットがリモコンで操縦され、人のために戦うという設定。
今でこそ、当たり前のことだが、コロンブスの卵のように、ロボットが操縦されて戦うこと、それ自体が新しかったのだと思う。
はじめてのものをつくるということはそれだけで価値がある。
我々も先人たちの誇り高きクリエイティブを見習っていきたいものだ。

安彦良和

安彦良和
プロフィール
1947年生まれ。北海道出身。1970年、虫プロに入社、アニメーターとして活躍の後、独立。以後アニメーターに加えキャラクター・デザイナー、演出家、監督として活動。「機動戦士ガンダム」をはじめ多数の作品に携わる。1979年に初の長編マンガ「アリオン」を連載開始、1989年以降は専業マンガ家として多数の作品を生み出す。現在はアニメ版「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」総監督として多忙な日々を送る。

「横山先生(さん)との縁」

僕は漫画家だが、漫画家になった(なれた)理由の半分は横山さんだと思っている。子供の頃横山さんの漫画、特に『鉄人28号』に憧れ、真似に真似を重ねた。その絵の魅力はとっつき易さと独特の「色気」にあると、取材に応えたり、文章に書いたりして、僕は既に何度も言っている。
そんな横山さんだが、生前にお会いすることはついになかった。だが「ニアミス」はあった。上京して最初に働いた写植屋さんは江古田から東長崎に寄った辺に在った。そこの従業員の1人が「近くに横山さんというマンガ家がいる」と教えてくれたのだ。「ああ、そうか」とは思ったが、子供のころの漫画家になる夢は遠のいていたから、それはそれっきりになった。
二度目のニアミスは神戸の大学で教えていた時だ。震災復興でつくり変えられた長田の街のシンボルとして『鉄人像』が建った。横山さんの出身地が近いということで、だ。
見に行ってみると像はかなり巨きい。大胆なポーズをとっていて、身長は18メートルだという。18メートルといえばガンダムと同じだ。「そうだったのか…」と、ここでも不思議な縁を感じたが、更に聞いてみると「ガンダムに合わせた」のだという。
お台場にガンダム立像が建ったのはそのあとだが、「サイズ」だけは鉄人に「真似られた」ということになる。

ゆうきまさみ

ゆうきまさみ
プロフィール
1957年北海道生まれ、B型。1980年、月刊OUT(みのり書房)に掲載された「ざ・ライバル」にてデビューし、1990年には「機動警察パトレイバー」にて第36回小学館漫画賞を受賞。代表作に「究極超人あ~る」「じゃじゃ馬グルーミン★UP!」「鉄腕バーディー」など。現在は週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「白暮のクロニクル」を連載しており、単行本は10巻まで発売中。また月刊!スピリッツ(小学館)でシリーズ連載中の「でぃす×こみ」は2巻まで発売されている。

ぼんやりと思い出すのは床屋さんの待合座敷の風景です。そこに何冊かあった古い月刊漫画雑誌を手に取り、その中の一冊「少年」で初めて「鉄人28号」と出会ったと記憶しています。「十字結社」編でした。「別冊ふろくにつづく」となっており、本誌でのページ数は多くなかったのですが、たちまち虜になりました。
 後になって僕は「機動警察パトレイバー」という漫画を描くことになるのですが、思い返してみると、あの時の10ページあったかなかったかの「鉄人28号」の断片から受けたワクワク感を、もう一度自分に与えてやろうと思いながら描いていたような気がします。
子供時代から感じていた横山光輝先生の漫画の魅力は、シンプルで見やすい絵、それから仄かに漂う大人気(おとなげ)でした。ビッグファイア博士の卑小な野望のリアルさや、鉄人の活躍で「保険金詐欺」を暴かれる犯罪組織といった地に足の着いた犯罪動機の数々。こんなものを教えてくれる子供漫画は当時なかったんじゃないでしょうか。そしてそして何よりもの魅力は、特に「鉄人28号」の中盤までで顕著なのですが、キャラクターをオーバーラップさせながら転がしてゆくストーリーテリングの絶妙さだったと思っています。1エピソードを独立した話としても読めるし、いくつかのエピソードを通しての大きなドラマとしても読めるという、この構成の見事さは、いつまで経っても漫画描きとしての僕の憧れです。

横山光輝(ヨコヤマミツテル)
横山光輝

1934年6月18日兵庫県生まれ。1955年、東光堂より貸本「音無しの剣」で単行本デビュー。翌年に少年(光文社)にて「鉄人28号」を連載開始。一躍人気作家となる。同作は1960年以降アニメ化や映画化、特撮化されるなど多メディア展開がなされた。以後も1966年にりぼん(集英社)にて「魔法使いサリー」、同年週刊少年サンデー(小学館)に「仮面の忍者赤影」、1967年には同誌にて「ジャイアントロボ」とヒット作を連発。いずれもアニメ、実写化されている。1967年に希望ライフ(潮出版社)にて「水滸伝」を連載し、1972年からは同誌にて「三国志」をスタート。長期連載となる。1991年、「三国志」にて第20回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。一方では1971年に週刊少年チャンピオン(秋田書店)にて「バビル2世」を連載し、大人から子供まで広い層に人気を博した。1994年にコミックトム(潮出版社)にて「殷周伝説」を連載。連載途中、心筋梗塞で入院し休載となったが、翌年に復活。連載終了後の2004年、自宅での火災のため4月15日に69歳で死去。