「キャプテン翼 ライジングサン」高橋陽一インタビュー|通算100巻達成!サッカーマンガのレジェンド、その軌跡をたどる

翼がゴールを決める回は、絶対に人気を取らなきゃいけない間

──少年ジャンプといえば読者アンケートの結果次第で打ち切られるという話が有名で、特に「キャプテン翼」が連載されていた時代は発行部数が約400万部あったうえ、アニメ化作品も多かったので生き残り競争が過酷だったのではないかと思います。

「キャプテン翼」のカラーカット。

ええ。連載が長かったので時代によっても違いますけど、一緒にやってたのは当時だと、「キン肉マン」とか「北斗の拳」、あと「キャッツ・アイ」や「シティハンター」、それに「Dr.スランプ」だったり「ドラゴンボール」だったり。

──そうそうたるラインナップですね。

だけど「あの作品に勝ったらうれしい」というよりは、とにかく打ち切られたくないという気持ちのほうが強かったです。例えば全国大会を描いていて、準々決勝くらいで打ち切りになったら作品としてダメじゃないですか。

──ほかの作品と競うというよりは、自分との戦いという面が大きい。

そうですね。特に連載を始めてから3、4話は「どうやって人気を取ればいいんだろう」とすごく考えながら描いていました。ただ最初の10週を乗り切ったあとは、ストーリーが盛り上がるとアンケートの結果もよくなるんですよ。翼がゴールを決めた回は必然的に人気が上がるし、自分としても絶対に人気を取らないといけない回だと思って描いていました。逆にゴールを決めるような派手なことが起こらない谷間の回だとどうしても人気が下がるので、そのバランスを自分の中でどう取っていくかを考えていました。

──「キャプテン翼」は女性人気もすごいですよね。単行本巻末のおまけコーナーにも、女性からの「○○くんをもっと出して!」といったお手紙や、キャラが美化されたイラストが載っていたりして。当時はそういう女性ファンの声が多く聞こえてくる少年マンガは珍しかったので、驚いた記憶があります。

「キャプテン翼」最終37巻

ハハハ、そうですか。でも確かに、バレンタインデーにはキャラクター宛にチョコレートが段ボール箱で何箱も届いてましたよ。ジャンプだけだとどうしても少年が中心になりますけど、アニメ化されていろんな人に観ていただけたので、その影響が大きかったのかもしれないです。

──ちなみに女性人気はどのキャラが高かったんですか?

岬くんか日向くんですかね。翼よりも脇のキャラクターのほうが人気ありました。

サッカー先進国の人にも面白いと思ってもらえた

──「キャプテン翼」の人気が爆発したことで、日本のサッカー人口が増えたとも言われています。そしてアニメが海外でも放送され、世界的なサッカー選手も「キャプテン翼」からの影響を公言していますね。

高橋陽一

そこは本当にうれしいですね。やっぱり自分のサッカー観や描き方が、間違っていなかったという自信にもなりましたし。

──プロのプレイヤーから見ても面白いんだと。

ええ。僕は実際にサッカーを観ていて「こうなってほしいな」「こんなプレーできないかな」と思ったことを、作品の中で表現している部分があるんです。それを生まれたときから国にサッカー文化が根付いている、サッカー先進国のプロ選手の方々に面白いと受け取ってもらえるのは感慨深いです。

──「キャプテン翼」がこれだけ世界中に広まったのは、サッカーが世界で幅広くプレーされているスポーツということも大きいかもしれませんね。

僕が海外に旅行に行ったときにも、皆さん「翼」を知ってくれていますからね。やっぱりサッカーという文化自体が、世界を繋げているコンテンツだなと常々感じていますし、サッカーを題材にしたマンガを描いてよかったなと思いますよ。

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高橋陽一(タカハシヨウイチ)
高橋陽一
1960年7月28日東京都生まれ。1980年週刊少年ジャンプ(集英社)にて読み切り版「キャプテン翼」でデビューを果たす。翌年同誌にて「キャプテン翼」の連載がスタートするや日本中にサッカーブームが巻き起こり、アニメ化、映画化、ゲーム化と幅広いメディアミックス展開が行われた。同作はアニメの海外放映をきっかけにその人気が世界にまで広がり、国内外問わず、「キャプテン翼」がきっかけでサッカーにのめり込んだプロ選手も数多い。2013年からはグランドジャンプ(集英社)にてシリーズ最新作「キャプテン翼 ライジングサン」を発表している。なお「キャプテン翼」を原作とした舞台「超体感ステージ『キャプテン翼』」が、8月18日より東京・Zeepブルーシアター六本木にて上演される。