「キャプテン翼 ライジングサン」高橋陽一インタビュー|通算100巻達成!サッカーマンガのレジェンド、その軌跡をたどる

岬とは違う形での翼の相棒

「キャプテン翼 ライジングサン」のカラーカット。

──「キャプテン翼」は一度完結するものの、「ワールドユース編」を経て、掲載誌をヤングジャンプ、グランドジャンプと移しながら、プロでの戦いを描いています。掲載誌が青年誌になって意識することはありますか?

特に青年誌だからこうしようというのはないですね。単純にキャラクターが成長していくので、雑誌もそれに合わせて移っているイメージで、やっていることは少年誌時代とほぼほぼ一緒だと思いますよ。ただ翼も大人になりましたし、自然と家族の話などが増えてはいますけど。

──「キャプテン翼」といえばサッカーの楽しさを描いた作品というイメージが強いですが、プロになるとどうしてもつらい部分も描かざるを得ません。

「キャプテン翼 ROAD TO 2002」2巻より。バルセロナに入団した翼は、10番を背負うリバウールとのボジション争いの末、監督からサテライトチームで経験を積むよう言い渡されてしまう。

キャラの成長とともに、彼らの悩みも変わっていくので、サッカーを続ける上でのつらさは当然描かなけれいけませんね。契約の話だったり、翼がチームに入ることで、誰かが1人クビになるという現実だったり。

──「キャプテン翼」を少年ジャンプ時代しか知らない人も多いと思うんですが、そういう人たちに今の作品を読んでほしいとアピールするならどの部分でしょうか。

「キャプテン翼 ライジングサン」4巻より。マドリッドオリンピックグループ予選、日本対アルゼンチンの試合で、ディアスは自陣アルゼンチンのゴール前から、日本のゴールまで100mをドリブルで独走しシュートを決める。

昔のシリーズから出ているキャラクターの成長ですかね。最近だとディアスが活躍してますし、このあとシュナイダーも出てきますので。できれば読んでいないところから、手に取っていただければうれしいですけど結構長いですからね(笑)。

──ヒット作の続編ものは、どうしても1作目のキャラが中心になることが多いと思うんですが、「キャプテン翼」は初代のキャラも描きつつ、「ワールドユース編」以降のキャラも立っている印象です。

そう言ってもらえるとありがたいです。まさに「ワールドユース編」から登場している葵新伍やナトゥレーザは描きやすいキャラクターですね。最近だとブラジル代表キャプテンのリバウールも、描いていて楽しいかな。

──逆に当初は予想していなかったような成長を遂げたキャラもいるんでしょうか。

石崎くんは最初出したときには、ここまで残るキャラだとは思っていなかったですね。自分の想像以上にずっと生き続けています。

──第1話から出ていますし、コメディリリーフとして欠かせないですよね。

翼にとって、岬くんとは違った形の相棒ですね。今では日本代表にまでなってますから。

今後「ワールドカップ編」は……

──通算100巻に到達した今年はさまざまなメディア展開が行われると思うのですが、8月には舞台版「キャプテン翼」が上演されますよね。この取材の前日が舞台の記者会見でしたが、身体能力の高い役者さんを揃えたと伺いました(参照:舞台「キャプテン翼」では、演出に併せリアルな振動をお届け!高橋陽一も興奮)。

「キャプテン翼 ライジングサン」のカラーカット。

動きの多い作品ですからね。舞台以外にもこれまでに実写化の話はあったんですが、「キャプテン翼」の世界観を実写で描くっていうのは難しくて、ハードルの高い作業だから実現しなかったんですね。今回も「いろんなマンガの舞台化が流行っているからって、その二番煎じみたいな感じでやるのは嫌ですよ」ということは伝えました。そうしたらスタッフの方が「流行に乗っかるわけではないです。世界に打って出れるようなエンタテインメントを作りたいと思っています」とおっしゃってくれたので、OKを出しました。

──原作のいろいろな必殺技も登場するんですよね。

双子である立花和夫・正夫が、中学生時代に編み出した脅威の空中技がスカイラブハリケーン。兄弟のどちらかがフィールドに足を上げて仰向けに寝転び、そのスパイク裏を射出台として飛び上がって空中からシュートを撃つ。2人の身体の成長にともなって封印されていたが、「GOLDEN-23」におけるオリンピックアジア最終予選のオーストラリア戦では選手生命をかけて「ファイナルスカイラブハリケーン」を敢行した。

昨日の会見でも説明していましたが、ドライブシュートは映像で再現して、スカイラブハリケーンは実際に役者さんが飛ぶらしいです。

──どこまで再現できるのかすごく楽しみです。ちなみに今後、「ライジングサン」もしくは次のシリーズで描いていきたいお話はありますか?

「ライジングサン」はマドリッドオリンピックの話なので、さしあたっての目標はそのオリンピックを描ききることです。

「キャプテン翼」36巻より。第1回フランス国際ジュニアユース大会で、西ドイツJr.ユースを破り優勝した際の翼のスピーチ。同エピソードが描かれた10年後、1998年のフランス大会で現実の日本代表は初めてワールドカップのピッチに立つ。

──なるほど。今後の展開についてなのですが、翼は初期のころから「世界一のサッカー選手になる」「ワールドカップで日本を優勝させる」という目標を掲げているじゃないですか。

言い続けてますね。

──サッカーマンガにもいろいろな作品がありますが、フィクションの世界ですら日本がワールドカップで優勝したことはほぼないと思うんですよ。簡単に「マンガなんだから優勝させていいじゃん」とはならないということだとは感じているんですが……。

連載開始の頃は、日本がワールドカップに出場すること自体が夢のまた夢だったんです。でも今はワールドカップに出場するのが当たり前だし、ベスト16までは来ているので、現実でもベスト8、ベスト4、優勝という段階も踏めなくはないと思いますし、マンガの中でワールドカップ優勝を描くことは、ありえないことではないんじゃないかな。

──やはり読者としては、「キャプテン翼」で日本がワールドカップ優勝するシーンが見たいんですが、今後「ワールドカップ編」は予定していないんでしょうか。

高橋陽一

歳も歳なので……ワールドカップを描くとしたら相当な覚悟が必要なんですよ。とりあえずオリンピックの話を描き終えたとき、「これ以上はいいや」と感じるのか、「いや、今度はワールドカップを描こうかな」と思えるのかは、今の自分では想像がつかないというのが正直なところではあります。ですが「ワールドカップ編」が描けるように、応援してもらえるとうれしいですね。

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マドリッド五輪予選グループ最終戦。ナトゥレーザ、サンターナ、リバウール……3大エースを擁するサッカー王国・ブラジルvsワールドユースでの大敗のリベンジに燃える若き皇帝・シュナイダー率いるドイツ!!! 世界最高峰の対決の行方は──!?

高橋陽一(タカハシヨウイチ)
高橋陽一
1960年7月28日東京都生まれ。1980年週刊少年ジャンプ(集英社)にて読み切り版「キャプテン翼」でデビューを果たす。翌年同誌にて「キャプテン翼」の連載がスタートするや日本中にサッカーブームが巻き起こり、アニメ化、映画化、ゲーム化と幅広いメディアミックス展開が行われた。同作はアニメの海外放映をきっかけにその人気が世界にまで広がり、国内外問わず、「キャプテン翼」がきっかけでサッカーにのめり込んだプロ選手も数多い。2013年からはグランドジャンプ(集英社)にてシリーズ最新作「キャプテン翼 ライジングサン」を発表している。なお「キャプテン翼」を原作とした舞台「超体感ステージ『キャプテン翼』」が、8月18日より東京・Zeepブルーシアター六本木にて上演される。