コミックナタリー Power Push - 「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」

戦争嫌いで怠け者の女好き“昼行灯”は主役の鉄板? 小説、マンガ、アニメと広がるファンタジー戦記

電撃文庫より刊行され「このライトノベルがすごい!」で3度トップ10入りを果たすなど、高い人気を誇る小説「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」。電撃マオウ(KADOKAWA)では川上泰樹によるコミカライズ版が展開されており、この7月からはテレビアニメも放送がスタートした話題作だ。

コミックナタリーではアニメ化のタイミングに合わせ、原作者・宇野朴人、コミカライズ担当・川上、テレビアニメ版のプロデューサー・中山信宏による鼎談を実施。3種のメディアで違った魅力を放つ「アルデラミン」の見どころを聞き、「皇国の守護者」「海皇紀」など宇野が影響を受けたマンガについても語ってもらった。

取材・文 / 小笠原智洋

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン

隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国・カトヴァーナ帝国。その一角に、とある事情で嫌々ながら高等士官試験を受験しようとしている1人の少年がいた。彼の名はイクタ。戦争嫌いで怠け者で女好き、そんなイクタがのちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。

戦乱渦巻く世界を、卓越した才で生き抜くイクタ。そして彼を取り巻く、優しく心強い仲間たち。彼らの波乱万丈の半生を描く壮大なファンタジー戦記!

イクタ・ソローク(CV:岡本信彦)
イクタ・ソローク(CV:岡本信彦)

17歳。怠け者で女好き。だが戦略や戦術に関する手腕は他の追随を許さず、後の世において「常怠常勝の智将」と呼ばれることになる。また「科学」という概念を提唱したアナライ・カーン博士の弟子であり、その考え方を踏襲しているため、独特の哲学を持つ。ヤトリとは旧知の仲で、絶対的な信頼関係を築いている。

ヤトリシノ・イグセム(CV:種田梨沙)
ヤトリシノ・イグセム(CV:種田梨沙)

17歳。旧軍閥名家筆頭「忠義の御三家」の一角を担うイグセム家の長女で、愛称はヤトリ。「白兵のイグセム」の通り名がつくほど武芸に秀でた血筋だけあり、彼女もまた2刀を振るい鬼神の如き強さを誇る。イクタとは旧知の仲で、彼の良き理解者。イクタの才能を誰よりも理解し、評価している。

シャミーユ・キトラ・カトヴァンマニニク(CV:水瀬いのり)
シャミーユ・キトラ・カトヴァンマニニク(CV:水瀬いのり)

12歳。カトヴァーナ帝国第3皇女。まだ子供ではあるが、帝室の人間らしい威厳を漂わせる一方で、媚びない愛らしさを併せ持つ。ある出来事をきっかけにイクタたちと出会い、運命を共にしていく。イクタの戦術や戦略など、軍事に関する才能の非凡さに絶大の信頼を寄せている。後の世において「カトヴァーナ帝国最後の皇女」となる。

トルウェイ・レミオン(CV:金本涼輔)
トルウェイ・レミオン(CV:金本涼輔)

17歳。旧軍閥名家「忠義の御三家」の一角を担うレミオン家の三男坊。爽やかで見た目通りの好青年。代々の通り名である「銃撃のレミオン」の名に恥じぬ高い射撃能力を持っているが、生物を傷付けることに対する忌避感が根強く、近距離からの銃撃は命中率が低い。一方で遠距離の標的に対してはその弱点が生じないため、エアライフルを用いた150メートル以上のロングレンジ狙撃をも可能とする。

マシュー・テトジリチ(CV:間島淳司)
マシュー・テトジリチ(CV:間島淳司)

17歳。旧軍閥であるテトジリチ家の長男。イクタとヤトリの同輩で、ことあるごとに2人をライバル視しているが、それも含めて長いことイクタにからかわれてきた。人一倍負けず嫌いで上昇志向が強いが、イクタやヤトリ、トルウェイといった英才との歴然とした能力の差に嫉妬し、劣等感を抱いている。しかしイクタたちと行動をともにするにつれて、着実に軍人としての成長を見せるようになっていく。

ハローマ・ベッケル(CV:千菅春香)
ハローマ・ベッケル(CV:千菅春香)

19歳。愛称はハロ。心優しい性格で、騎士団では唯一の衛生兵。高等士官試験行きの船で偶然イクタ達と居合わせ、行動をともにすることに。かなりの天然で、無自覚の失言で相手を落ち込ませることがある。

原作者・宇野朴人、コミカライズ担当・川上泰樹、アニメ版プロデューサー中山信宏鼎談

「銀英伝」のヤン・ウェンリー然り、昼行灯キャラならではの人生哲学

──電撃文庫を原作とする「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン(以下「アルデラミン」)」のことを、まだ知らないという方もコミックナタリー読者の中にはいるかと思います。アニメをプロデュースする中山さんから、本作の紹介をお願いできますか。

原作小説のカラーカット(イラスト:竜徹)。

中山 とにかく面白いんですよ! うちの会社(ワーナー・ブラザーズ・ホームエンターテイメント)でもアニメ化のプロジェクトが始まってから読みはじめた人間が、途中から止まらなくなって「続きは? 続きは?」と言うぐらいなんです。

──それほどまでに、読者が作品にのめり込むポイントはどこなのでしょうか。

中山 キャラものと戦記もの、どちらの魅力も併せ持っているところですね。昨今のライトノベル……という呼称を電撃文庫さんは使用されていませんが、その手のジャンルの中では珍しい骨太な作品だと思います。

──確かに、ライトノベルはキャラが先行する作品が多いですよね。でも、戦記ものというと難しそうなイメージもあるのですが……。

中山 僕も、時代ものなんかは実は苦手なんですよ(苦笑)。でも「アルデラミン」は、そこまで敷居が高くない。だからといって看板倒れでもなく、あくまで戦記ものの骨子に乗ったうえでキャラクターがドラマを作っているんです。

川上 実は私もマンガを最初に描かせていただくことになったとき、「戦記もの、やれるのかな……」と思っていたんです。でも苦手なジャンルだと思っていたにも関わらず、読みはじめたらキャラクターたちの魅力に引き込まれていって。

──なるほど。ではまずそのキャラクターについて伺っていければと思います。主人公のイクタ・ソロークは、怠け者の女好きで英雄嫌いという、あまり主人公らしくない性格ですが。

アニメ版のイクタの設定画。

宇野 軍事国家ということもあり、作品の舞台となるのは武力がものを言う世界なんです。その中で、一見して強そうには見えない人間が活躍するということ自体に魅力があると僕は思っていて。

中山 主人公らしくない、というギャップ自体が魅力になっているんですよね。イクタのように一見やる気のない“昼行灯”タイプが実力を隠し持っているという設定にも惹かれます。

宇野 そもそも“昼行灯”を貫くようなタイプは独自の人生哲学を持っている場合が多いので、キャラが立つんですよね。有名どころだと「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーなんかもそうですし、影響を受けています。独自の思想と、彼自身が持っている子供っぽさや人間味がいい感じにマッチしたキャラだなと。トリューニヒトさん(※権力に固執する、作中において強い存在感を残すキャラクター)がいい気持ちで演説していて「皆さん立って」というときに、ヤンは……。

中山 1人だけ座っていましたね(笑)。

宇野 あの行動は大局的に見ると、ヤンにとっていいことないんですよ。でもああいう感情的になるシーンがあると、キャラに人間味が出て魅力的に映る。イクタにしても目をつけられることは避けたいはずのに、全然合理的じゃないことをたまにやってしまう。そういう“弾ける瞬間”を大事にしています。皇女であるシャミーユに食ってかかったり、ただの怠け者だったらしない余計なこともしちゃいますからね(笑)。

テレビアニメ「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」

隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国・カトヴァーナ帝国。その一角に、とある事情で嫌々ながら高等士官試験を受験しようとしている1人の少年がいた。彼の名はイクタ。戦争嫌いで怠け者で女好き、そんなイクタがのちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。小説、マンガ、アニメの3メディアで展開される壮大なファンタジー戦記!

原作小説10巻、マンガ版5巻は2016年7月9日に発売。同時リリース記念の書き下ろし&描き下ろしの短編が、特設サイトにて公開中!

特設サイトはこちら

放送情報
  • TOKYO MX:金曜25:05~
  • サンテレビ:日曜24:30~
  • KBS京都:日曜23:00~
  • テレビ愛知:日曜26:05~
  • BSフジ:日曜25:30~
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原作小説はこちら

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宇野朴人(ウノボクト)

小説家。在学中より「神と奴隷の誕生構文」にてデビュー。現在は「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」を執筆中。同作は自身初のアニメ化タイトルとなる。そのほかの代表作に「スメラギガタリ」がある。

川上泰樹(カワカミタイキ)

マンガ家。代表作は「まおゆう外伝 まどろみの女魔法使い」。現在は「転生したらスライムだった件」「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」のコミカライズを担当している。

中山信宏(ナカヤマノブヒロ)

プロデューサー。ワーナー・ブラザーズ・ホームエンターテイメント所属。代表作に「とある魔術の禁書目録」「ロウきゅーぶ!」「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり などがある。