コミックナタリー PowerPush - 真田ジューイチ「危ノーマル系女子」

ストーカー、殺人鬼、電波系、ドM… アブノーマルなヒロイン集う、「ヒャッコ」作者の新境地

かしまし女子たちによる学園コメディ「ヒャッコ」で知られる、真田ジューイチの最新作「危ノーマル系女子」。冷めた性格の男子高校生と、ストーカー、殺人鬼、電波系、ドMなど、それぞれがアブノーマルな属性を持つ、7人の女子との日常をサスペンスタッチで描く物語だ。

コミックナタリーは1年半ぶりの新刊となる3巻の発売を記念し、真田にインタビューを敢行。「キャラクター造形が自分の強み」と語る真田が生み出した7人のヒロインたちを大解剖するとともに、「危ノーマル系女子」立ち上げの経緯や、カトウハルアキという「ヒャッコ」時代のペンネームを改名するに至った理由についても聞いた。また特集の後半では担当編集の葛西歩氏も交えて、「危ノーマル系女子」が連載されているCOMICメテオの特色にも迫る。

取材・文・撮影/宮津友徳

危ノーマル系女子とは

「危ノーマル系女子」より、主人公シンヤのカット。

冷めた表情で毎日を過ごすシイナシンヤは、「“女”っていうものは、まったくロクなもんじゃない。少なくとも俺には」と語る男子高校生。彼の周囲にはストーカーの美女や殺人鬼の幼なじみ、自身をシンヤの騎士だと称する妄想電波女など、一癖も二癖もある危なげな7人の少女たちが集っている。そんな彼女たちを冷ややかな目で見つつも放っておけないシンヤの日常を、サスペンスタッチで描いていく。

シンヤを取り巻く“危女”たち

翼十華
翼十華
つばさとおか
「アイドルなんて目じゃない」と評されるほどの美貌を持つシンヤのストーカー。シンヤの盗撮や盗聴は欠かさない。
威刈さつき
威刈さつき
いかりさつき
虚ろな瞳が特徴的なシンヤの幼なじみ。その正体はシンヤたちが住む如月市を騒がせる殺人鬼。
万壌夜子
万壌夜子
ばんじょうよるこ
前世でシンヤと、領主と守護騎士の関係にあったと自称する妄想電波女。シンヤに対し従順な態度で接する。
色村雅美
色村雅美
しきむらまさみ
学校では優等生を演じるマゾヒスト。シンヤにその性癖を知られたことから、欲求不満解消のため彼とさまざまな“遊び”に興じる。
内田夢路
内田夢路
うちだゆめじ
起きていることができない体質のため、1日の大半を学校の保健室で眠って過ごす少女。校内では「眠り姫」と呼ばれている。
奥居赤鐘
奥居赤鐘
おくいあかね
人の血を啜って生きる吸血鬼。シンヤの血を美味いと好み、彼に血をくれとせがんでいる。
御種迷
御種迷
みたねめい
シンヤに対して強い独占欲を持つ彼の妹。常にシンヤを束縛し、ヤンデレともとれる発言をすることも。

真田ジューイチインタビュー

ヒロインに殺人鬼がいるのに、コメディにはならないだろうって

──「危ノーマル系女子」は、2012年のCOMICメテオ創刊当初からの連載作です。連載立ち上げにはどのような経緯があったんでしょうか。

真田ジューイチ

「危女」の前に「ヒャッコ」という作品を連載していたんですが、諸事情ありましてしばらく描けなくなってしまったんです。暇になってしまうのも嫌だったので、すぐ次の作品に取りかかろうということになって。作品のアイデアは常に考えていたので、それを形にして担当編集者さんに見せたのが始まりです。

──「危ノーマル系女子」は、サスペンスやミステリーの比重が大きい作品ですよね。

この作品を立ち上げる少し前は、ちょうどミステリー小説にハマっていたんです。なので、ミステリー要素のある作品をやってみたくて。いろんな小説を読んで参考にしましたよ。目指したイメージは、乙一さんの「GOTH」や米澤穂信さんの「〈小市民〉シリーズ」のような作品です。大雑把に言ってしまうと主人公とヒロインの女の子が、日常の裏でいろんな事件に巻き込まれるというお話なんですが、その雰囲気がすごく好きで。

──真田先生というと、「ヒャッコ」や「夕日ロマンス」といったコメディの印象が強かったので意外でした。

でも元々はコメディ色の強い作品にする予定もあったんです。いろんな属性の女の子に振り回される男子高校生を描くような。ただヒロインの中に殺人鬼がいるのに、どう転んでも普通のコメディものにはならないだろうなと思って。構想段階で自然に現在のような雰囲気に移行していきました。あとこれまでの作品と同じような内容のものを描いてもしょうがないし、僕自身が飽きてしまうだろうというのもありましたね。

「危ノーマル系女子」より、御種迷。

──これまでの作品ということで言うと、先生は「危ノーマル系女子」の連載開始にあたって、「ヒャッコ」で使用していた“カトウハルアキ”からペンネームを変更していらっしゃいますよね。

“カトウハルアキ”もそれ以前に使っていた“珈琲”もそうなんですが、これまで使ってきたペンネームって適当に考えたものだったんですね(笑)。そういう適当に付けた名前で作品を世に出してしまっているということに対して、後悔の念があって。それで今度こそちゃんとした名前でやっていこうと思ったんです。

──では、今後の活動はすべて“真田ジューイチ”名義で?

もうこれを変更することはないですね。ファイナルアンサーです。

真田ジューイチ「危ノーマル系女子(3)」発売中 / 616円 / ほるぷ出版 / Amazon.co.jp
真田ジューイチ「危ノーマル系女子(3)」

お待ちかねの第3巻登場!!
新キャラ登場で、複雑に絡み合う“危女”の面々。
「“狐”という名の男に遭った事はないか、少年。」

COMICメテオ

連載タイトル

真田ジューイチ「危ノーマル系女子」/宮場弥二郎「UNCOntrollable」/矢上裕「エルフを狩るモノたち2」/TOBI「お前ら全員めんどくさい!」/九段そごう「俺とヒーローと魔法少女」/藤原里「俺ともやしとお花屋さん」/由伊大輔「温泉幼精ハコネちゃん」/カヅホ「カガクチョップ」/緋呂河とも「神様桜木プロデュース」/将良「思春期ビターチェンジ」/氷川翔「篠崎さん気をオタしかに!」/ユキヲ「邪神ちゃんドロップキック」/森岡浩之、米村孝一郎「星界の紋章」/もりた毬太「宙のアポリア」/藤原里「にゃんこい!」/けものの★「人身御供の緋山さん」/犬星「ひまわり町サンロードガールズ」/吉永裕ノ介「ブレイクブレイド」/万丈梓「変則系クアドラングル」/山崎毅宜「ほしの女王様」/武川慎「道割草物語」/とこみち「ゆーあい」/三星めがね「恋愛暴君」

真田ジューイチ(サナダジューイチ)

真田ジューイチ12月19日生まれ。愛知県出身、大分県育ち。Webマンガ誌のCOMIC SEED!にてマンガ家デビューを果たす。その後「夕日ロマンス」などの作品を発表。カトウハルアキ名義で執筆した「ヒャッコ」はTVアニメ化、ゲーム化も果たしている。現在COMICメテオにて「危ノーマル系女子」を連載中。