「東京アディオス」大塚恭司&横須賀歌麻呂インタビュー|構想から15年、下ネタを貫き続けた“地下芸人”が映画になるまで

「地下芸人大集合!!極限生活ぶちまけ上映会」レポート

映画「東京アディオス」のPRイベント「地下芸人大集合!!極限生活ぶちまけ上映会」が過日都内で開かれ、約70名の“地下芸人”が事務所の壁を超えて集結した。上映後のトークショーには大塚監督、キャストの横須賀歌麻呂、チャンス大城、柴田容疑者が登場。舞台上で地下芸人が自由にボケまくり、客席からも地下芸人のガヤが飛ぶ異様な空間となった。このページでは、大塚監督がTwitterで「舞台の上から客席の芸人を見る、っていう視線逆転現象は凄い経験だった」と振り返った混沌のイベントをレポートする。

主な出席芸人
えずれひろゆき / エンジョイまめ / ヲタル / 菓子めたる / 加藤ミリガン / 元旦ゲリラゴリラ / かんちゃま / けいじ / 小声くん / 根菜キャバレー / ジジ・ぶぅ / しゃばぞう / シルキーライン / スーパーエース阿久津 / スペシャルワン / トンペー / 比嘉モエル / 本田静丸 / 錦鯉 / 魔族 / 街裏ぴんく / マッハスピード豪速球 / 真夜中クラシック / 三浦マイルド / 見た目が邦彦 / みつまJAPAN' / ミニ沢光晴 / 三平×2 / MORIYAMA / ゆきおとこ / ゆってぃ / ユンボ安藤 / よしえつねお / ラブセクシー乙羽屋 / らりるRIE / ルサンチマン浅川 / 冷蔵庫マン / ワクワクタイル ほか

トークショーの冒頭では「地下芸人の定義とは?」という話題になり、大塚監督が「芸人というのは、昔はなること自体が難しい職業だった。その後、ネタ番組と養成所の増加により爆発的に人数が増えるんですが、食っていけるのは一握り。そんな流れの中で、売れる売れないを考えるよりも、自分の個性を磨くことを最優先にする芸人たちが出てきたんです。それが地下芸人とネーミングされていると思っています」と解説した。すると横須賀たちは、個性を磨きすぎてネタ見せにまったく通らなかったというエピソードを次々と披露。チャンス大城は「『エンタの神様』のオーディションで炊飯器暴走族というネタをやったんです。五味(一男)プロデューサーに『君の目的はなんだ?』と言われました」と振り返った。

左から大塚恭司、横須賀歌麻呂、チャンス大城。

その後も哀愁漂うエピソードは止まらない。横須賀が「映画にも実話がたくさん出てきます。居酒屋のアルバイト中に伝票をなくして罰金10万円を支払わされたのも、看板持ちをやっているときに絡まれたのも全部本当」と語ると、チャンス大城も「バイト中はよく絡まれるんです」と同意。続けて「看板持ちのバイト中にホームレスに胸ぐら掴まれて『おい! お互い死んでから悩もうぜ』って言われたんですよ。意味わからなかったです」というエピソードを明かし、会場の爆笑を誘った。

大塚監督は地下芸人の魅力の1つにブッキングの容易さを挙げ、「今日は70人くらいが集まってくれたんですが、仕込み始めたのが先週の木曜日くらい(笑)。今日が水曜日だから1週間足らずでここまで集まったんです。長いことテレビをやってブッキングの大変さを知っているので、本当にすごいと感じています!」と熱弁する。そして「『大手事務所にいながらその恩恵を受けていない』『賞レースで優勝しているのに地下で活動している』という地下芸人の2冠王みたいなすごい奴がいる」と客席の三浦マイルドを紹介。舞台上に呼び込まれた彼は「地下芸人さんはみんな優しくて居心地がいい」とコメントしながら、“闇営業”を絡めた際どいトークで場を盛り上げる。

左から三浦マイルド、ゆってぃ、柳ゆり菜、横須賀歌麻呂、チャンス大城。

続いて舞台に上がったゆってぃは「僕は地下芸人グループじゃなくて一発屋グループなのでは? 今日の楽屋の顔ぶれを見て、ここにいてもいいのかなと思いました。知らない人たちが多い」と困惑気味に発言。その後も「映画を観たときに『こんな世界もあるのか!』と勉強になりました。生き方がハードコアでカッコいい」と“非地下芸人”として作品の感想を語るが、チャンス大城は「出演者全員が挙動不審の『挙動不審寄席』というライブがある。ぜひ出てほしい」と地下の世界にゆってぃを引きずり込もうとしていた。

イベントにはスペシャルゲストとして柳ゆり菜も登場した。ここでは彼女を楽しませるべく、柴田容疑者が過激な下ネタを取り入れた漫談、チャンス大城が「セミを食べるエンヤ」なるコント、飛び入りの三平×2が裏社会を彷彿とさせるアウトローな歌ネタを展開。横須賀は思わず「このイベント、どのマスコミが取り上げるんだ!? やる意味あんのか!?」と声を荒げる。また「我こそはという芸人はいないか?」という呼びかけには、ピン芸人のトンペーが素早く挙手。勢いよく壇上に上がるとマリリン・モンローを自分の体に降ろすというオカルティックな芸を披露し、「めちゃいい映画でした! ありがトンペー!」と言いながら再び客席へ。嵐のごとく過ぎ去った彼のアピールタイムに大塚監督が「立派な地下芸人になれる素質がある」とコメントすると、トンペーは「ちょいちょい! 日の目浴びたいです!」と言い返し、周囲を「(あの芸で)日の目を浴びたいんだ……」と騒然とさせた。

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左から柴田容疑者、横須賀歌麻呂、柳ゆり菜、チャンス大城、大塚恭司。

最後は横須賀が「見どころは全部。主要キャストの皆さんがそれぞれの見せ場でガツンとかましてくれていますし、映画自体にも仕掛けがありますし、何回観ても楽しめる映画だと思います。2回、3回と劇場に足を運んでいただきたい」と作品をアピール。大塚監督は「“地下芸人”は自由を獲得した人たちで、ものすごくカッコいいんだと思ってもらえるんじゃないかと。今日ここに集まってくれた人たちの生き様を参考にすると、自分の人生も楽しくなるかもしれません」と熱弁し、会場内は大きな拍手に包まれていた。


2019年10月7日更新