お笑いナタリー Power Push - ナタリー×Netflix
恐るべし!水道橋博士がNetflixに脅威を感じる理由とは
闇夜のダークな世界を緻密かつ丁寧に撮っている
デアデビル
──ここからは作品ごとに感想を聞かせていただければと思います。まずは「デアデビル」から。
マーベルといえば、最近の大ヒット作「アベンジャーズ」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のCGを駆使した派手な光線銃が飛び交う宇宙規模のヒーロー像のイメージがあったんですが、こっちの舞台はニューヨークの片隅で主人公は盲目、しかもボクシングで闘うという、実に地味な世界観で驚きました。ただ、闇夜のダークな世界を緻密かつ丁寧に撮ってますよね。まっとうで重厚なクライムハンタードラマ。地味なことをやってるけど、それでも魅せられるっていう挟持を感じます。
──印象的だったシーンは?
盲目の正義のヒーローなので、やっぱり「座頭市」的な感じがします。そういう演出もしてあるし。相手の鼓動で嘘を付いているかどうかを見破るっていう。音の感覚や嗅覚を使って、とかね。
──シーズン2が制作されることも発表されていて、評価されている作品だと思います。
評価は高いと思うなあ。クオリティは本当にすごい。
──これまでご覧になってきた海外ドラマや映画と比べて「デアデビル」に特徴的な部分はありますか?
地味に語っていく、という部分で「アイアンマン」系なんかとは全然違うね。カーアクションがあるわけでもないし、派手なCGもない。CMもないから、ずっと緊張感のなか集中して観られる。一度、見始めるとヘルズ・キッチン(作中のスラム街)の中に閉じ込められるという感じがします。
「Sense8」はジェンダーも国境も克服している
Sense8
──「Sense8」についてもお聞かせください。
すごいよ。世界8カ国での撮影なんて、映画でもこの規模ってなかなか難しいだろうって思う。
──物語の進み具合からして、視聴者を置いてけぼりにしながら悠々と作っている感じがします。
メイキングを観ても、8カ所で俳優全員が入れ替わるとき、本当にその場でやってるんだって。合成でやってるんだと思ってたけど。新世代テレビのCMみたいな圧倒的なビジュアルでした。
──ほかにも「ここの映像がすごかった」という部分はありましたか?
ゲイパレードのシーン。よく撮ってるよね。セットじゃなくて全部ロケだからね。全話の脚本書いてないと撮れないだろうなと思う。アメリカのドラマは放送を流しながらその反応でストーリーを変えていくって聞いてたけど、今までと作り方が違うんだろうね。8カ国で物語が進んでいって、ジェンダーも国境も克服してる。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの「バベル」とかを思い出します。あれは4カ国でストーリーが交差するわけだけど、その倍ですからね(笑)。あまりにストーリーが壮大なので3話目を観てから1話目に戻って「これはこういうことだったのか」って思ったり。
──3話目くらいまでなんの話かよくわからないままというのは、「そこまで耐えられる」というアメリカの視聴者の成熟度に対応しているのかもしれません。日本でそのままやろうと思ったら離脱してしまう。もう少し説明を加えて、わかりやすくしたほうが視聴者が好むのかなと思います。
ドラマリテラシーが違うんだろうね。これまでにケーブルテレビとかで地上波ではない、新しいドラマを見せられてきたから慣れてきてるんでしょう。ハリウッド映画の「何分までに登場人物を紹介する」みたいなシナリオセオリーも破壊していいんだと思う。
──日本で公開する映画の予告編がアメリカ本国と違うっていう話もありますね。日本人って先がどうなるか知った上で観たい、というメンタリティがあるのかなと。
日本で高視聴率を取るドラマってフォーマットが決まってるよね。いわゆる「水戸黄門」スタイル。主人公が正義の味方で勧善懲悪かつ1話で完結する、という安定感があるものを求める国民性なんだろうね。「半沢直樹」とか「相棒」なんかの異常な視聴率もそうだし。それは今も「笑点」や「サザエさん」が視聴率を保っているという保守的なものがあるのかもしれない。
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水道橋博士(スイドウバシハカセ)
1962年8月18日生まれ。岡山県出身。オフィス北野所属。1987年に浅草キッドを玉袋筋太郎と結成した。「別冊アサ(秘)ジャーナル」(TBS)、「総合診療医 ドクターG」(NHK総合)、「チャージ730!」(テレビ東京)、「バラいろダンディ」(TOKYO MX)ほかに出演中。
2015年10月9日更新