「無学 鶴の間」第22回レポート
似た雰囲気の2人には「そういう役回り」が多い
ステージ横には、兵庫県尼崎を舞台とした映画「あまろっく」のポスター。写真には満面の笑みの鶴瓶が、にこやかに微笑む中条あやみとふてくされ顔の江口のりこの間に挟まれて写っている。
「人生に起こることはなんでも楽しまな」が口癖の能天気な父、それが鶴瓶の役柄で、「中条あゆみが俺の嫁はん(再婚相手)なんですよ。ちょっとおかしいじゃないですか。で、江口のりこが俺の娘なんですよね」と説明し、「江口はずっとこんな顔してましたわ。何が不満やねんっていう」と笑う。
さらには、今、鶴瓶は、自身が主演となる映画「35年目のラブレター」を撮影中で、「それは原田知世さんが奥さん役なんです。ふふふ。優しい人なんですよ。めっちゃええわ」と、なんともうれしそうな顔。
昨日も東京で遅くまで撮影を行い、今朝、ここ大阪へ。先ほどラジオのレギュラー番組「ヤングタウン日曜日」の収録を終えてから「無学」へ来たと言い、ハードなスケジュールが続いているようだった。
「でもありがたいことですよね。主役ですよ、大阪の平野から出た人間が(笑)。しかも楽しいんですよ。映画やってたら。うちのマネージャーも元気出さそうと思って言うてるのかもしらんけど、『次はベッドシーンですよ』って言わはんねん。そしたら病院で寝てるシーンやねん!」
次々と映画撮影のエピソードを語る鶴瓶。そんな話が導入となるのも、この日のゲストが俳優だからで、「今日は男です。これです」と、「あまろっく」のポスターに映った役者の写真を指差した。
「松尾諭です」
名前を呼ばれ、舞台に出てきた松尾に、「おお~!」という大きな歓声と拍手が起こった。
誰がゲストかわからないのが「無学」。
「多分、僕でハズレやって思ってるんじゃないかなと思ったんですけどね」と、思いがけない歓迎ぶりに松尾自身、驚いた様子で挨拶すると、「この系統が好きな人が多いんとちゃう?」と鶴瓶が笑う。
確かにどこか似ている雰囲気を持つ2人だが、実際「そういう役回り」が多いのだという。
映画「あまろっく」では、鶴瓶の若い頃の役を松尾諭が演じ、さらに遡れば、2018年に放映されたやしきたかじんの人生を描いたドラマ「なめんとんか やしきたかじん誕生物語」では、たかじんと親交の深かった「笑福亭鶴瓶」の役を松尾が演じ、「やしきたかじん」役を鶴瓶の息子・駿河太郎が演じるという、その配役の面白さも話題となった。
共演を重ねてフランクに話せる
まずはそんな2人の出会いから。
松尾 最初は映画の打ち上げなんですよ。そのときは芝居では全然絡んでなくて。でも、「笑福亭鶴瓶さん」と言ったら、もう僕は「パペポ(鶴瓶上岡パペポTV)」をずっと見てて、憧れの人やったから、わ、鶴瓶がいる!と思ったんです。そしたら打ち上げ会場で若手の女優にいじられまくってるんです(笑)。
鶴瓶 ワハハ!
松尾 いやいや、ちょっと! 鶴瓶やぞ!って思ってたんですが。
鶴瓶 ボロカスに言うてなあ、あいつら(笑)。
松尾 ボロカスにされてたんですよ。それで、なんというか、キャッチーな人なんやなと思って。その後がドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」で、鶴瓶さんが判事で、僕がその後輩判事の役で、お寿司屋みたいなカウンターでややこしい話をするんですよ。でも専門用語も多いから、鶴瓶さん、セリフが詰まり気味で「ごめんな」って、僕も「いや、全然気にしないで何回でもやってください」って言ってたんですけど、ついにセリフが全然出てけえへんから、湯飲みにセリフを貼って、やっぱりこういう専門的なセリフやから大変なんやなと思ってたんですけど、セリフ貼ったにもかかわらず、何回も噛む!!
鶴瓶 ウハハ!!
松尾 もう尊敬とかどっか行って、もうええ加減にせえ!って思って(笑)、そこからちょっとフランクに話せるようになりましたね。
鶴瓶 ワハハ。あれはよう噛んだなあ!
そんなふうにセリフを噛みまくる鶴瓶だが、なぜか映画の話が来る。「なんで俺なのかわからない」と首を傾げるも、「それはやっぱり芝居がいいからですよ」と松尾。
「上手いか下手かは置いといて、芝居がいいんですよ。『あまろっく』もよかったですよ。ただ、ちょっと長いセリフのときは、ちょっとドキドキしながら見てましたけど」と笑う。
著書の帯文を鶴瓶に頼んだが……
そして話は、松尾が自身の半生を描いたエッセイ本「拾われた男」の帯を鶴瓶に書いてもらったときのエピソードへ。
素晴らしい帯を書いてくれたと喜んだ松尾だが、「原稿を送って2日ぐらいで帯の回答が来たんで、これ、読んでないな」と疑ってもいた。今こそ真相を聞こうと、「けっこうボリュームがあるんですよ。読んでないですよね?」と投げかけると、鶴瓶、悪びれもなく「読んでない」と即答。
その告白に松尾も大爆笑。それでも、「読んでないのに、ピタッとした帯を書いてくださった。やっぱり天才だな」とつぶやいた。
帯の鶴瓶の言葉はこうだった。
縁 運 根
縁があって 運があって 根がある
縁は努力
松尾にはそれが備わっている
鶴瓶 「拾われた男」、読んでないからあれやけど(笑)、「拾われた」いうのは、なんか、航空券を拾ったんよな?
松尾 そうですそうです。飛行機のチケットを拾って、その落とし主が今の事務所の社長やったという話なんですけど。
鶴瓶 でも、そんなん拾たからと言って、事務所入れてくれへんがな。
松尾 しかもモデル事務所ですからね(笑)。
鶴瓶 ウハハ! で、たまたま拾って、どうやって渡したん?
松尾 拾って交番に持っていったんですけど、ホントはその前に、上京したばっかりでお金なかったから、スチュワーデスやってる友達に電話して、「なんとか払い戻しできひんか」って訊いたんですよ。
鶴瓶 おい! お前な、これ、生配信してるんやで!
松尾 「払い戻しできひんか」って訊いたらしいんです(笑)。
鶴瓶 (笑)。
松尾 そしたら「あんた犯罪者になるから、交番持って行き」って。
鶴瓶 えらいえらい。
松尾 持つべきものは友です。それで、交番持って行って、習得物なんちゃら届けみたいな紙を書いて、名前とか拾った場所とか書いて、最後に「お礼を望む、望まない」って欄があるんです。それで「望む」に丸したんです。
鶴瓶 たいがいあんなもんは「望まない」にすんねんや、普通。
松尾 いや、当時の僕は望んでましたね。
鶴瓶 金が全然なかったからな。
松尾 そしたら2日ぐらいして、女の人から電話が来て、「お礼がしたいので待ち合わせしましょう」となったんです。
鶴瓶 ええ人やな、社長。
松尾 表参道のスパイラルカフェっていうおしゃれなとこで待ち合わせして、待ってたら、小柄な50代ぐらいの人が来て。
その出会いから、松尾の俳優としての道が進み、人生が新たに動きはじめる。偶然が必然の出会いになっていくのだ。現実は小説より奇なり。エッセイに書いた自身の半生は話題となり、さらに2022年には豪華キャストでドラマ化されることになる。
「その“拾われた男”の役は誰がやったん?」と鶴瓶が訊くと、「仲野太賀くん。僕の妻の役を伊藤沙莉さん、社長の役を薬師丸ひろ子さん」と松尾。その配役を聞いて、「むちゃくちゃすごいやん! その本がやっぱりよっぽどよかったんやな」と言うと、松尾も「手前味噌ですけど、よかったんですよね」とニヤリ。
若かりし鶴瓶役がうまい
今でこそ個性派俳優として映画やドラマ、舞台にと引っ張りだこの松尾だが、いくつかの話題作に恵まれながらも、なかなかブレイクせず、バイトをしながら役者を続けていた時期も長い。
一方、鶴瓶は若い頃からずっと、多くのレギュラー番組を抱えている。
「ずっとキープし続けているじゃないですか。しんどくないですか?」と松尾が訊くと、鶴瓶は「しんどいと思ったらもう終わりや。今年73歳で、俺と同じぐらいの年の人が見て、『元気もらうわ』言うてはんねんから、こっちも元気出さなあかんし。『家族に乾杯』でいろんなところ行っても、めっちゃ喜んでくれはるやんか」と、自身の原動力について、そう語る。
「家族に乾杯」での鶴瓶を見ていて、「あの形は僕の憧れですよ」と話す松尾。
松尾 コミュニケーション能力がやっぱすごいじゃないですか。それがやっぱり顔から滲み出ている。
鶴瓶 お前に言われたくないわ(笑)。
松尾 いやいや、僕、そこまでありがたくないですもん。毎朝鏡見ても、チッて思いますもん。イヤな顔してるなって。
鶴瓶 イヤな顔ということないよ。もう世間に認知されだしたから、よくなんねんって。顔なんてそうやて。俺、よう拝まれるで。
松尾 わかる。拝みたくなりますもん。
鶴瓶 あ、そう?
松尾 通天閣にいますよね?
鶴瓶 ビリケンさんやん!
松尾 東京の恵比寿の駅前にもいます。
鶴瓶 でもうれしいよ、そう言われるのは。
松尾 それはやっぱり滲み出てきてるんですよね。今回、僕、「あまろっく」で鶴瓶さんの役してるじゃないですか。一応2回目なんで寄せたつもりではあるんですけど、僕、若かりし鶴瓶さん役、ちょっとうまいなって、珍しく自画自賛したんです。
鶴瓶 だんだん合うてきたんやろうな。
松尾 そうですね。ちょっとだけ汚い声でしゃべってるんですけど。
鶴瓶 やかましわ!
「あまろっく」には駿河太郎も出演しており、ポスターに写っている太郎の写真を指差し、「ほんまは、この人が俺の若い頃やんか。うちの息子が」と鶴瓶が言うと、松尾も「そうですよね」と笑う。
松尾 やしきたかじんさんのドラマやったときも、たかじんさん役を太郎くんがやって、僕が鶴瓶さんだったんですけど、太郎ちゃんはやっぱり鶴瓶さんのことよく知ってるから、僕にすごい演技指導してくださって、走るシーンとか、「松尾さん、親父はそんな早く走れません」とか。
鶴瓶 ワハハ!
松尾 「親父はそんな早くしゃべれません」とか。とにかくゆっくりゆっくりって。
鶴瓶 なんの情報や! そうか、俺の情報入れとったんか。なんかあいつから電話かかってきたな、「たかじんがどんなんやったか」とか。昔からずっと一緒やったからな、たかじんとは。
松尾 そうですよね。だから、太郎ちゃんから、実家(うち)に、鶴瓶さんがたかじんさんをおんぶしてる写真があるから、「それと同じ写真撮りましょう」って言われて、当時の鶴瓶さんのオーバーオールにアフロヘアという扮装をして、太郎ちゃんもたかじんさんの格好して、その写真を鶴瓶さんに送ったら、すぐに返事返ってきて、「これ、うちにあるぞ!」って(笑)。それ、よく覚えています。
鶴瓶 そうやそうや(笑)。でもしょっちゅう遊んでたわ。あいつとは。
松尾 あ、太郎ちゃんと?
鶴瓶 いやいや、太郎じゃない(笑)。たかじんと。でも、こないなるとは思ってなかった。俺とたかじんのドラマを、たかじんを息子がやって、俺を松尾がやるって、すごいことやで、考えたら。
松尾 それでちょっと縁を感じたから、帯のお願いしたのもあったかもしれないです。
鶴瓶 ああ、そんなん、全然。読んでへんけど書けるで。ふふふ。
松尾 読まないでしょ。今から送っても読まないですよね?
鶴瓶 いや、もうほとんど読まない。
松尾 読み聞かせましょか!
鶴瓶 ワハハ!
台本読むより、周りと仲良くなる
「でも、自分の人生がドラマ化するなんて、びっくりするやろ? 社長も喜んでたやろ。社長役は誰がやったんや?」
「薬師丸ひろ子さんです」
確かさっきも同じ話を聞いたはず……と、そのやりとりに、観客がドッと笑う。
その笑い声で気づいた鶴瓶、「すいません! すいません! すいません!」と苦笑。
「会話が成立していると思ってたんですけど、聞いてなかったんですか!?」と松尾からは鋭いツッコミが入った。
松尾 仕事しすぎじゃないですか?
鶴瓶 あいつ(マネージャー)が入れよるんや。「ベッドシーン」が。
松尾 ベッドシーンかと思ったら病院のベッドやったっていう、その話も聞きましたけど、台本、全然読んでないですよね、ほんまに。
鶴瓶 お前知ってるやろ(笑)。まあ、全然、ではないけれど、迷惑かけない程度に、俺のところだけは読んでるがな。
松尾 原田知世さんとの映画も、「自分のところしか読んでない」って言ってて、「意外にタイトルも知らないんちゃいますか?」って言ったら、「そうや、350日の」って、「35年」でしょ!
鶴瓶 ワハハ!
松尾 タイトルくらい覚えてくださいよ!
鶴瓶 「350日のラブレター」って、薄っぺらいな(笑)。
松尾 ワハハ!
鶴瓶 でもまあな、俺は台本読むとかより、周りと仲良くなるから。
松尾 それは僕もそうですけど、台本読んでいきます。でも読まずにあれだけできるっていうことは、もう読まないほうが……。
鶴瓶 それ言うたらあかんって。絶対怒られる(笑)。これ配信や、みんな見てはる!
マイクを挟んで2人でのトークは初めてという松尾だが、さすが同じ関西人同士。鶴瓶の天然のボケへの松尾のツッコミがまた絶妙で、2人のやりとりが自然と漫才のようになっている。
「家族に乾杯」出演を鶴瓶に直接交渉
話はさらに、「あまろっく」での銭湯シーンでの話や、役柄での方言の話、憧れの俳優の話などが飛び出し、話は再び、「家族に乾杯」へ。松尾は鶴瓶に「出してほしいんですけど」と直接交渉する。
松尾 「拾われた男」もNHKだったから呼ばれるかなと思ってたんですけど、全然声かからなかったので。
鶴瓶 ふふふ。じゃあ、「出たい」言うてたって、ふわっと言うとくわ(笑)。
松尾 空けておくんで。
鶴瓶 あの番組はほんまにいいで。お前、絶対合うよ。
松尾 ああいう番組じゃないと、いろんな土地の人と話せないじゃないですか。いきなりカメラもないのに行って、「どうも!」言うて話したら、ちょっと変な人でしょ?
鶴瓶 俺らは逆に、あんなん出てるから、カメラ撮ってなくても、なんぼでも話かけられる。ものすごく親しくしゃべってきはるで。「鶴瓶ちゃん! 鶴瓶ちゃん!」って肩叩いてきはるから、なんやろ?って思ったら、「帽子かぶりや! 熱中症なるで!」って。
松尾 ワハハ! でも「ありがとう」って言うんでしょ?
鶴瓶 「ああ、かぶります」って(笑)。
松尾 こんだけすごい人やのに、みんなちょっと友達みたいな感覚になるっていうのが。
鶴瓶 まったくすごくはないけれど、でも、しゃべってもらうってやっぱうれしいで。
松尾 うれしいですよね。だから羨ましいです。いつからあんな人懐こくなったんですか。
鶴瓶 いや、ずっと人懐っこい(笑)。ずっと人懐っこいけど、テレビやから人懐っこいみたいにせんと、普段からそうやから。テレビやからどうこうじゃないと思うわ。
松尾 心に刻んでおきます。
通帳を拾って成長実感
「何かやらかしたことないの?」と切り出す鶴瓶。というのも、鶴瓶自身、最近、自分のダメさ加減に拍車がかかっているというのだ。マンションのエレベーターで一緒になったUber Eatsの人を、同じマンションの住人と間違い、「おかえり」と声かけたり、コンビニでアンパンを探していて、コンビニの制服とよく似た服を着た人に「すみません、アンパンないですか?」と声をかけたり。
それを聞いて、松尾は「年末にやらかしましたね。財布と家の鍵を失くしました」と、そのときのことを話しはじめる。
乗ったタクシーの中に忘れたのだと気づいたがすでに遅し。その後、タクシー会社に電話してももうなかったというのだ。
松尾 でも、もしかしたらタクシーに乗るときに落としたかもしれないなと思って、家に帰って、家の前の道を下を見ながら歩いていたんですよ。そしたら隣の家の前に、ゆうちょの通帳が落ちていたんです。
鶴瓶 え!?
松尾 中見たら、1000万近く入ったんです。
鶴瓶 どういうことや!?
松尾 ないでしょ、こんなこと。でも通帳やから別にね。
鶴瓶 あかんあかん!
松尾 いや、違います違います。だから翌日に警察署に持ってって、僕の落とし物届けを出して、「あ、ついでにって言ったらなんですけど、これ拾いました」って通帳を出したら、警察官も「え?」っていう顔してましたけど。今度はあれですよ、習得物なんちゃら届け。「お礼を望む、望まない」の「望まない」に丸したんですよ!
鶴瓶 ワハハ!
松尾 成長したでしょ?
鶴瓶 成長したなあ(笑)。
2人のトークは「ある意味、『パペポ』や」
最後はもう一度、2人が出演した「あまろっく」の話に戻り、尼崎ロケでのエピソードなども飛び出した。とはいえ、自分が出演したドラマや映画はほとんど観ない鶴瓶。「観たの?」と問いかける。
松尾 観ましたよ。本人目の前に言うのもなんですけど、鶴瓶さんがすごくよくて。
鶴瓶 俺が!?
松尾 「すごい」はちょっと言い過ぎですけど、よかったですよ。
鶴瓶 俺、意識ないからやわ。
松尾 意識なかったんですか?(笑)
鶴瓶 意識なかった(笑)。
松尾 僕、江口のり子ちゃんの芝居が好きなんです。のりちゃんが吐く関西弁が。なんか、唯一無二ですよね、あの感じ。
鶴瓶 そうやな。いつもボヤいてるけどな。
この夏、松尾は江口と一緒に舞台をやることが決まっているそうだ。この2人が出演するなら絶対に面白い、と、鶴瓶はそう期待する。その言葉こそ、2人への信頼だった。
その上で、「ほかに何に出んねん?」と鶴瓶が訊くと、「そうですねえ、『家族に乾杯』くらいですかね。今のところ決まってるのは」という松尾の返しに、鶴瓶もフフフフと笑わずにはいられない。
1時間半、しゃべりっぱなしだった。
「あっという間でしたね。夢のような時間でした」と松尾。
「ある意味、『パペポ』や」と鶴瓶。
なんともいいコンビだった。2人の笑い顔が、役を越えて重なった。
「無学 鶴の間」、22回目のゲストは、俳優・松尾諭。どんな役どころでも、その存在感が記憶に残る役者だが、それは、松尾自身、1つひとつ、出会ってきた人や役を大切にしてきているからだと知る。そして何より、自分から運や縁を掴もうとする姿勢、それを面白がる姿勢、そして、このどこか憎めない笑顔が、その先の流れを引き寄せてきたのだと思えた。
そういう意味で、鶴瓶が書いた「拾われた男」の帯の言葉は真意をついていたのだろう。
だからこそ、「拾われた男」のその続きを、私たちはまた見てみたいと願うのだ。そして、こういう男だからこそ、役者として、これから何をどう演じ、体現していくのか、松尾諭が出る作品をますます楽しみにしてしまうのだろう。
プロフィール
笑福亭鶴瓶(ショウフクテイツルベ)
1951年12月23日生まれ。大阪府出身。1972年、6代目笑福亭松鶴のもとに入門。以降、テレビバラエティ、ドラマ、映画、ラジオ、落語などで長年にわたって活躍している。大阪・帝塚山の寄席小屋「無学」で、秘密のゲストを招いて行う「帝塚山 無学の会」を20年以上にわたって開催してきた。
松尾諭(マツオサトル)
1975年12月7日、兵庫県生まれ。2000年俳優デビュー。その後ドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」のメインキャストに抜擢。その他の出演作に、映画「進撃の巨人」「シン・ゴジラ」「牛首村」、ドラマ「ノーサイド・ゲーム」「よだれもん家族」「ラストマン-全盲の捜査官-」「うちの弁護士は手がかかる」、NHK連続テレビ小説「てっぱん」「ひよっこ」「わろてんか」「エール」「舞いあがれ!」、NHK大河ドラマ「天地人」など多数。映画「あまろっく」は4月19日より全国ロードショー。著書「拾われた男」ほかで文筆家としての評価も高い。