演歌歌手・大石まどかの30周年記念シングル「茜の炎」が8月4日に発売される。この中にボーナストラックとして収録される「愛が生まれた日」は、同じサンミュージックに所属している大石まどかとダンディ坂野のデュエット曲だ。これは1994年に発売されたヒット曲「愛が生まれた日」(藤谷美和子、大内義昭)のカバーで、ダンディが男性パートのハモリを担当している。なぜ今回、デュエット相手としてダンディに白羽の矢が立ったのか? そしてダンディの歌声とは? お笑いナタリーがレコーディング現場に密着すると共に、2人へのインタビューを実施した。
取材・文 / 成田邦洋撮影 / 辺見真也
2021年5月、大石まどかとダンディ坂野が都内スタジオで「愛が生まれた日」のレコーディングに臨んだ。2003年のブレイク以降、歌手活動の経験もあるダンディ。このデュエットのため、事前にボイストレーニングをしていたという。レコーディングブースに入り、発声練習を始めると「リバーブがすごい!」と驚いて現場の雰囲気をなごませる。やがて「ジタバタしても、しょうがない!」と腹をくくったダンディのレコーディングは、第一声から甘い歌声を鳴り響かせるものだった。
「原曲からの全音下げ」というキーで始まったこのレコーディング。早々に歌入れを済ませた大石から「いいじゃないですか!」と褒められながらも「半音上げたほうが雰囲気がいい」と提案されたダンディは、結果的に「原曲からの半音下げ」のキーで歌うことになった。「ダンディの高音はどこまで出るのか」というのが最大の焦点となり、ダンディも「高いほうがいいですよね。がんばります!」と意気込む。
「愛が生まれた日」は男性がハモリパートを担当する楽曲で、レコーディングディレクターから「ハモリの声がめちゃくちゃいい」と太鼓判を押されたダンディは「とってもうれしいです!」と素直に喜ぶ。途中で大石からダンディに向けて本物顔負けの「ゲッツ!」が繰り出されるシーンも。一方で難関となったのは、サビの中でも特に高音が必要とされる「君がいるなら それだけでいい」のパートだ。ディレクターや大石の意見を聞きながら試行錯誤を重ねたダンディのハモリと高音は、果たしてどんな仕上がりとなったのか?
本職の人と一緒に歌えてうれしいなあ
──レコーディング、おつかれさまでした。はじめに「愛が生まれた日」を選曲された理由を教えていただけますか?
大石まどか 私は普段演歌を歌っているんですけど、ダンディさんと歌わせていただけるなら演歌じゃないな、ということで選ばせていただきました。
──ダンディさんとのデュエットありき、の選曲なんですね。
大石 そうです!
──では、なぜダンディさんとデュエットすることになったのでしょうか?
大石 私は今年デビュー30周年で、ずっとサンミュージックにいまして、ダンディさんも同じサンミュージック。ダンディさんがYouTubeで「だんさかch」をやられているのを見せていただくと、80年代の歌謡曲を歌われていて、お好きなんだなということは知っていました。それでお願いしたところ快く受けていただきました。
──オファーを聞いたときのダンディさんの心境は?
ダンディ坂野 いつも家のパソコンで音を作って、歌って、ピッチを合わせて、とやっていたんですけど、「ちゃんと本職の人と一緒に歌えるんだなあ」と思いました。うれしいなあというのが率直な感想です。
──同じサンミュージックに所属されているお二人ですが、もともと交流は?
大石 ゴルフを一緒にやらせてもらったことがありました。
ダンディ それも同じ組でしたね。あまり交流はないんですけど、よくしていただいて仲良しです。
──先輩後輩の関係性というのはありますか?
大石 特にないですよね?
ダンディ 大石さんのほうがサンミュージックでは長いですし、デビューも先です。年齢は僕のほうが上なんですけど、そんなに意識したことはないです。お互い大人なので。大人の関係……そう言うと意味深だな(笑)。
ボイストレーニングの素晴らしい成果が出た
──レコーディングのご感想は?
大石 ダンディさん、バッチリでした。YouTubeも観ていますし、もともと歌がお好きだというのはスタッフからも聞いていました。すごく真面目で努力家の方なんですね。ご自身でボイストレーニングをやってくださったようで、なんでも快く引き受けてくださいました。年下の私の言葉でも、素直に聞いてくださる。すごく感謝しています。ボイストレーニングの素晴らしい成果が出ていたと思います。
ダンディ はい。何事にもストイックなんです、お笑い以外(笑)。昔は何がなんでも売れてやろう、ってお笑いもストイックにやっていましたけどね。他人がやっていないことをやろうって。ブレイクしたあとは、ただただ時代に流されてここまでやってきました(笑)。
──ボイストレーニングについて詳しく聞かせてくださいますか?
ダンディ その筋の人に聞いてみないと、と思って。我流でやっていても一定レベルしかできない。それでプロの方に歌唱法や発声法を教えてもらって、短い期間ですけど一生懸命やらせてもらいました。本当は「愛が生まれた日」は、もう半音下げる予定だったんですけど。
大石 なんとかキーを上げましたね。
ダンディ 最後のほうは、もうヒーヒー言ってました(笑)。
大石 男性パートは難しい曲なんですよ。音域も広いですし。
ダンディ ボイトレの先生曰く、僕は低音がすごく出るらしいんですよ。ただ、昔からハイトーンボイスにすごく憧れていたので、それを今回なんとか出そうとレッスンしてもらいました。昨日も今日もレコーディング前に声出しはしていないんです。声がかれてしまう可能性もあったので。実際、ディレクターさんに「最初のほうのテイクがよかった」と言っていただきました(笑)。
──ディレクターの方にも「ハモリがいい」って褒められてましたし、大石さんもレコーディング中、ダンディさんに向けて「ゲッツ!」をやられていました。
ダンディ 悪い気はしないです(笑)。
大石 普段、私がディレクションすることは一切ないんですけど、ディレクターさんもダンディさんとの仕事は初めてで、どこまで踏み込んでいいのかわからないかなと思っていたんです。私は練習から見ていたので、ちょっとだけディレクターさんの横に座っていました。ダンディさんに指示を出したらわかっていただけて、思わず「ゲッツ!」と。私がやるとゲッツが雑になっちゃって申し訳ないんですけど。
ダンディ ゲッツに雑も丁寧もないです(笑)。僕が思う昭和の歌謡史には男性の皆さんの“上ハモリ”が多くて好きなんです。女性のきれいな声を邪魔しないように、というイメージもあって。でも、また機会があれば、もう少し僕に優しい曲でお願いします(笑)。
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