「ほかの人はやってないことをやってるよね」と言われるのが目標
──この公演に限らず、ヒコロヒーさんが自身の単独ライブについて「これはだけはやる」とか逆に「これだけはやらない」みたいなルールがあれば教えていただけますか?
コントをずっとやってきているので、「コントをしっかりお伝えしたい」みたいなことはあります。ただ、逆にそういうことを決めてしまうと、つまんなくなっていくというか。形が決まってしまうと、ワクワクしない。なので、あんまりこだわらず、決めつけすぎず、柔軟にやっていきたいなとは思っています。
──先輩芸人の単独ライブで目指しているものや、影響を受けているものはありますか?
もちろん先輩方はいっぱいいて、私もいろんな単独を見てきたので、影響を受けられていたらいいな、というのは多かれ少なかれあると思うんですけど、「この人みたいな単独ライブをしたい」とはあんまり思わなくて。ちゃんと自分の中から出てくるもので、自分にしか作れないものを出していきたい。何かと比べてとか、そういうことじゃなくて、ちゃんと自分の中でいいと思えるものを丁寧に出していく、という作業に集中したいです。
──「影響を受けたくはない」くらいの心持ちでしょうか?
憧れる人たちはいっぱいいますけど、そこに憧れて影響されていてもしょうがないな、みたいなことは、ずっと最初から思ってやってきています。音楽から舞台美術から内容から、「ほかの人はやってないことやってるよね」と言われるところが目標です。
「知っていただく、見ていただく」が一番うれしい
──「括れば踊れば」をまだ観ていない人もいると思います。今回のDVDや配信で観た人にどういう反応をしてもらえるとうれしいでしょうか?
反応は期待していないんですよ。芸人からすると「委ねる」ということになるんです。舞台には舞台のよさがあるので、できれば劇場に来て楽しんでいただきたい。ただ、どうしても地方の方だったり、体が不自由な方だったり、いろんな事情のある方がいらっしゃるので、「それでも見たい」と言ってくださる方たちに届けたい。そういった方々へ届けるまでが私の役割ですから、そこから先はどう思っていただいてもいいんです。「面白かったな」でも「つまんねえな」でも、なんでも。知っていただく、見ていただく、が一番うれしいです。
──今後も単独ライブを続けていかれるかと思います。どういう形にしていきたい、というような夢や野望などあれば教えてください。
ピン芸人のコントだと、どうしても会場のキャパが広くなりすぎると届きづらい、ということがあると思います。あんまり会場ばっかり大きくしても、そこに来てくださる隅々まで、丁寧に届かないような気がしています。なのでキャパは今ぐらいの感じのまま、自分がやりたいと思えることや、「今、自分が何を面白いと思っているのか」を伝えたい。わざわざお客さんが劇場まで来てくださる、というのは当然のことじゃないので。来てくださる皆さんに何を見せたいと思っているのか、というところにちゃんと丁寧に向き合ってからネタを作って、「来てよかったな」とか「見に行ってよかったな」とか、そういうふうに思ってもらえる単独であることが一番です。それは簡単なことじゃないとも思っています。
──「括れば踊れば」は1会場のみでの開催でした。たとえば「全国ツアーをしよう」という感じではあまりないでしょうか?
そう言ってくださる声はすごく増えたし、全然やってみたいな、という気持ちはありますけど、1つの箱じゃないとなると、考えることがすごく多くなるんです。「ここの箱だったら?」「この椅子だったら?」「この反響で防音だったら?」「ライティングは?」「ものをどこに置く?」とか。そこを会場ごとに変えたくなってしまうので正直面倒くさいです(笑)。
──たしかに1会場ずつ考えていくと作業が膨大になりそうです。
もちろんお笑いが好きなので、単独ライブはお客さん1人ずつに「来てよかったな」と思ってもらえるものにしたい。お笑いとしてもそうなんですけど、お笑い以外でも、いろいろと「あ、そういう考え方もあるよね」という“気づき”とか、気持ちが楽になるようなものをしっかり届ける、というところしか今は考えていないです。これからもコントが好きな方とかピンネタが好きな方に観ていただきたいです。
プロフィール
ヒコロヒー
1989年10月15日生まれ、愛媛県出身。大学在学時より芸人活動を始め、2011年にデビュー。2013年に単独ライブを開始した。齊藤京子との冠番組「キョコロヒー」(テレビ朝日)など多数のテレビ・ラジオ番組にレギュラー出演している。2025年1月期ドラマ「トーキョーカモフラージュアワー」(ABCテレビ・テレビ朝日系)の脚本も手がけた。松竹芸能所属。