エレキコミックインタビュー「わかりやすい批判からインスタ女子を救う」
エレキコミックのDVD「エレキコミック結成20周年記念!~3公演まとめてお得パック~『等等』『東京』『金星!!』」には、パッケージ化されていない2014年から2016年の発表会、「等等」「東京」「金星!!」の様子が収められている。エレキコミックのメールマガジン「エレマガ。」では配信されてきたが、形として残るものが欲しいというファンの声を受けてこのたびDVDに。やつい扮する“やっつん”と今立扮する“だっつん”の掛け合いが騒がしいコントからストーリーで引き込む味わい深いコントまで、色とりどりのネタ19本を楽しめる。エレキコミックとしての活動に加えて片桐仁とのユニット・エレ片でも次々と新ネタを生み出し続けているやついは本作収録の過去ネタについてほとんど記憶にないようだったが、40歳を超えた今、どんな思いがネタ作りに反映されているか分析しながら語ってくれた。
愛に溢れちゃった
──エレ片では何度かお話を伺っているのですが、エレキコミックのインタビューとしては、2010年の第18回発表会「R」から7年ぶりなんです。その際は「コントを自分の経験から作るようになった」とおっしゃっていて(参照:エレキコミック特集)、それから7年、ネタ作りで変わったことはありますか?
やつい あのときはたぶん「そういうふうに作るべきだ」みたいな気持ちがあったんですよね。だけど今や、それにも飽きたというか。あの頃はもっとムカついてたんです、いろんなことに。例えば7年前に “インスタ女子”を見ていたら、それをネタにしようと考えるんじゃないかなと思うんですよ。だけど今はすごい好き、そういう女の子が。
今立 愛に溢れちゃった(笑)。
やつい 「好きなことしてていいじゃん」みたいな気持ちなんですよ。もう、全部好き。だから昔のネタをやると違和感があるっていうか、わかりやすすぎて面白くないんです。「こうすればウケそうだな」っていう方程式に則って言ってるだけじゃん、みたいな。さも説得力があるようなふりしやすいネタって多いじゃないですか。その格好の標的なんですよ、インスタ女子は。
今立 流行りだからね。
やつい そのパターン化がすごいつまんないなと思って。僕は全然、インスタ女子とかいいと思ってるから、ウケそうだからっていうだけでやるのは嫌なんですよ。かといって全肯定しても皮肉に聞こえちゃうし、どうしたらそういう女の子たちを救えるのかなって考えていて。
今立 何から?
やつい そういう、わかりやすい批判から。例えば、サブカルっていうものもすごく難しい題材じゃないですか。表面的に言えなくなってるというか。
今立 自分がサブカルとされるものの内側にいるっていうのもあるんじゃない?
やつい そうそう。外にいる人と知識の差があるから、僕があえて言っていることが違う受け取られ方をしてしまうんです。「あえて」が伝わらない。それを25歳くらいの俺がやっていたら、表面的なものでよかったし、自分の言っていることとお客さんの反応にそこまで差がなかったけど、もう43歳で、受け取る側が20代ってなったときに、俺の「あえて」がこの人たちの「あえて」じゃないってもう気づいているので、1回この「あえて感」はやめたほうがいいなと。
今立 エレ片のコントでも「カフェ女子」っていうサブカルを扱っているネタがあるんですよ。
やつい あれも僕がやりたかったのは、「これはサブカルだ」とかってカテゴライズする人たちに対するヘイトだったんだけど、結局サブカルとされている人たちのヘイトに取られちゃう。俺は中にいる人たちのことをすごく愛してるんですよ。人間関係ができていれば、「ブス」っていう言葉は「かわいい」とか「好き」と同じ意味じゃないですか。だけど伝わらなくて、外から批判してくる人と一緒くたにされちゃうことに違和感があった。なのでそういうネタの作り方をやめたんです。
「パロディ最高つまんねえ」の真逆をいく
──収録されているコントの中で印象に残っているのは?
今立 僕は「モグラたたき」(DISC1「第24回発表会『等等』」収録)がけっこう好きです。シンプルすぎて難しかったんですけど(笑)。テンポをどうするとか。でも短いながらまとまっていて、やってて楽しかったですね。モグラたたき装置の大きさとか穴の位置とか、けっこう考えましたよ。ちゃんと素早く移動できるように滑りやすくしてもらったりして。
モグラたたき
なかなか「お父さん」と呼ばれない男(今立)がモグラたたきゲームで子供(やつい)と打ち解けようとする。自らモグラ役となって穴から頭を出す男と、どうしてもそれをヒットできずに泣いてしまう子供。遊び方を優しく教えてやるうちに、子供は初めて自然と「お父さん」と口にする。
──やついさんは?
やつい なんかもう、どれもやりたくないですね(笑)。そのときそのとき出しているので、今はもう何が面白かったのかわからなくなってるっていう。覚えてないんです。
──DISC3「金星!!」では公演の少し前に公開された映画「君の名は。」や「シン・ゴジラ」をさっそく取り入れていましたね。
やつい 僕ら、第1回からCMパロディやパロディコントをやってるんですけど、その当時って「パロディ最高つまんねえ」っていう世の中だったんです。だから、あえて真逆のことをやってやろうっていうつもりで最初から徹底していたんだけど、それに関しても伝わってないんですよね。その当時どういう世の中でそれをやったか、みたいなのは忘れられちゃうから。
──発表会のタイトルは毎回どうやって決めるんですか?
やつい わりと素直に決めています。「金星!!」は「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系)でやっていた企画の「目指せ横綱!金星相撲部!!」が好きだったから、そこから取って「金星!!」。そしたら今立がプロポーズするとか、「君の名は。」が流行るとか、妙に「金星!!」っぽいことがその年にバーッと起きたんです。「東京」は25回目の節目で。「東京」っていうタイトルの好きな曲がたくさんあるから、いいものになりそうだなーって感じでつけました。「等等」のことはもう覚えてないですね。
今立 たった3個前だよ(笑)。でもけっこうタイトルにふさわしい内容になるんですよね、不思議と。
- エレキコミック
「エレキコミック結成20周年記念!~3公演まとめてお得パック~『等等』『東京』『金星!!』」 - 2017年11月1日発売 / ポニーキャニオン
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[DVD]
6480円 / PCBP-53209
- DISC1
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第24回発表会「等等」
- どなどな
- YD
- モグラたたき
- 寿司屋
- 退屈
- ハロウィン教授
- 三日月の夜
特典映像:やつい結婚パーティー
- DISC2
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第25回発表会「東京」
- 東京
- 違う誰かに
- 弔辞
- くーちゃん
- 帰ってきた全力俳優
- TJP
特典映像:今立の恋人探し
- DISC3
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第26回発表会「金星!!」
- 天体観測の朝
- 天体観測
- イントロ屋
- MDAI
- カリスマ
- 映画の秋
特典映像:今立大作戦
エレキコミック第27回発表会「Lemon Lime 100%Girl」
- 東京公演
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- 2017年11月1日(水)18:30開場 19:00開演
- 2017年11月2日(木)18:30開場 19:00開演
- 2017年11月3日(金・祝)17:30開場 18:00開演
- 2017年11月4日(土)13:30開場 14:00開演 / 17:30開場 18:00開演
- 2017年11月5日(日)13:30開場 14:00開演
- 会場:東京・本多劇場
- 愛知公演
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- 2017年11月10日(金)18:30開場 19:00開演
- 会場:愛知・中川文化小劇場
- 大阪公演
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- 2017年11月11日(土)17:30開場 18:00開演
- 会場:大阪・ABCホール
- エレキコミック
- 左 / やついいちろう
- 生年月日:1974年11月15日
出身地:三重県 - 右 / 今立進(イマダチススム)
- 生年月日:1975年9月27日
出身地:東京都 - トゥインクル・コーポレーション所属。大学の落語研究会で先輩(やつい)、後輩(今立)として出会う。大学時代は別々のコンビだったが、それぞれの相方が就職することから1997年にコンビ結成した。片桐仁とのユニット・エレ片としても活動し、毎週土曜25:00~27:00放送「エレ片のコント太郎」(TBSラジオ)を担当。来年1月には新たなライブシリーズ「新コントの人」をスタートさせる。