同世代のまったく無名の人たちと

菊池　僕、まともな話していいですか？

──ぜひお願いします。

菊池　エレキの発表会は曽我部恵一さんが曲を作ってくれるのが恒例なんですが、第1回発表会ではサニーデイ・サービスの「東京」を使ったんです。事前に「なんの曲使うんですか？」って聞いたら「知らないかもしれないけど」って「東京」を使うつもりだとやついさんは言って。僕はサニーデイがずっと好きで聴いていて、でも大学時代はそれを共有する友達がいなかったんですよ。知り合ったばかりの人から初めてサニーデイの話題が出て、「そのバンド僕も大好きなんですよ」ってうれしくなったのを覚えています。今では音楽のライブに一緒に行ったり、ライブに行ったけど会場に入れず近くの居酒屋でそのライブが終わるまで待ったり、楽しい交流があって。すごくいい出会いだったなと思っています。

──出会い自体が特別なことだったんですね。

菊池　はい。それがなければ今、全然違うことをやっていたと思います。

やつい　全部僕のおかげですよ。今があるのは。箸にも棒にもかからない奴らが何かモノにするまで付き合ってあげたんです。

今立　言い方（笑）。

やつい　ただ、菊池くんが入ってくれて楽にはなりました。自分で映像編集していたので。ネタも作らないといけないから、時間が取られてすっごいしんどくて。

──なんだかビジネスライクというか、さっぱりしていますね。

やつい　湿った話がよかったですか？ あ、じゃあジュンとする話しますね。当時の周りの若い芸人には「有名な人と組んでやりたい」っていう気持ちがすごくあったんですよ。テレビディレクターとか有名な人のお墨付きが欲しい、みたいな。俺はそれが嫌で、今のこの世代でやりたかった。先人たちも自分たちがやってきた仕事が評価されて、今の地位にいるわけじゃないですか。だから同世代のまったく無名の人たちとやっていって、みんなの名前が上がっていくのがベストだと思っていて、頑なに有名人とか自分の得しそうな人を一切使わなかった。ど素人みたいな人ばっかり集めて。

今立　まあまあ、こっちも素人でしたからね。

やつい　そしたらみんなちゃんとモノになって。川尻はもともとやってた人なので違いますけど、この人（小川）もこの人（菊池）も俺がフックアップした。特にこの人（菊池）は絶対俺がフックアップした。

菊池　はい（笑）。

今立　烙印を押されちゃった。

エレキコミックは奇跡のコンビ

──では小川さんの番に戻りましょうか。

小川　コンプライアンス的に問題があるかもしれないんですけど……。

一同　あはははは！（笑）

小川　あの日を乗り越えたからこそ今のエレキコミックがあるっていう話なんですけど。

──お願いします。

小川　やついさんの元相方の鈴木さんが卒業旅行で2年生だった僕と僕の元相方を連れて車で滋賀県に住んでいるOBの家を尋ねることになったとき、やついさんが実家に帰りたいから俺も乗せてくれって言ってきたんです。で、4人で出かけたんですが、やついさんは当時ど貧乏で、一銭も払わなかったんですよ。しかも免許を持っているのが僕しかいなくて、ドライバーを交代できないからずっと眠さと戦って運転していたんですが、ついウトウトしてしまったんですね。ふと気づいたらセンターラインを越えていて、「危ない！」って戻して。また眠くなって気づくとセンターラインを超えていて、「危ない！」。それを繰り返しているうちに元気になってきたんですけど、今思うと事故ってもおかしくない中、よく生きてたなと。

やつい　なんだよ、その話は！

小川　エレキコミックは奇跡のコンビという話です。

今立　俺乗ってないし（笑）。

小川　あ、でもいい話がありまして。そのOBの家に着いたときに、やついさんが今立さんと電話で話しているのが聞こえたんです。当時もう2人で活動はしていたんですが、正式に動き出すっていうタイミングで、その電話で「エレキコミックでいいんじゃないか」と。コンビ名が正式にFIXした瞬間の話でした。ありがとうございました。

20代の頃からずっと続く“文化祭”

──エレキコミックには20年後、30年後にどうなっていてほしいですか？

上田　僕は今立さんにツッコミ大辞典みたいなものを作ってほしいです。

今立　なんだよそれ！

上田　読めばすぐツッコミができるようになるっていう本です。

川尻　こういうボケにはこういうツッコミ、みたいな？

上田　そうです、そうです。

──コンビとしてこうなっていてほしいっていうのはマネージャーとしてありませんか？

上田　ずっとコントを見ていきたいなって思います。何年経っても、2人がおじいちゃんになっても。おじいちゃんになってもウンコ・チンコでお客さんを笑わせているところを見たいなって思います。

──上田さんもずっとエレキコミックの担当マネージャーでいたい、と。

上田　あ、はい。はい。

今立　軽いんだよ（笑）。

やつい　誘導されてるだけじゃねえか。

小川　僕も上田くんと同じで70、80歳になっても新ネタを作って単独ライブをやっててほしいですね。映像も菊池さんが撮って。あ、でもゆくゆくは誰かが死んじゃうから……。楽しみですね！

やつい　人が死ぬのが？

今立　「誰が早く死ぬのか楽しみですね」って、なんだよそれ（笑）。

小川　違います！ 80歳のエレキコミックも楽しみだなって。

川尻　僕は、お二人とも俳優として活躍し始めているので、ものすごい長尺のコントをやってほしいなって思いますね。ドラマ性のある、バカバカしいコント。長いやつを一発。

──演技で見せるような。

川尻　そうですね。いぶし銀のやつがそろそろ出てくると期待しています。

菊池　僕も続けてほしいっていうのがまず一番です。年1、2回くらいのペースで発表会があって、1カ月くらいがっちり一緒に仕事してっていうのを20年近く続けているので、なくなっちゃったら人生ひと区切りついちゃう気がする。20代の頃からずっと年1で文化祭を続けているような、おじさんになっても断続的に青春を享受しているような、今の状態が続くといいな、と。いつかは終わりが来ると思うんですけど、それがなるべく先になるように、体に気をつけて続けてほしいですね。