今年、結成20周年を迎えたエレキコミック。毎年欠かさず開催してきた単独ライブ「エレキコミック発表会」は最新公演「Lemon Lime 100%GirL」で27回目を数える。
そんな彼らの主軸ともいえる発表会の直近3公演をパッケージしたDVDがリリースされるのを記念し、お笑いナタリーではエレキコミックと関わりの深い裏方4名を集めた座談会の場をセッティング。エレキコミックを語るに欠かせない“一番の思い出”を振り返ってもらった。ネタ作りに関するエレキコミックのインタビュー、またエレキコミックを昔からよく知る、曽我部恵一、スピードワゴン、マキタスポーツ、流れ星、ナイツから到着したお祝いメッセージと併せて掲載する。
取材・文 / 狩野有理 撮影 / 辺見真也
座談会「エレキコミックと僕」
エレキコミック20周年の歴史を紐解くべく、エレキコミックと親しい4人の裏方を招集した。参加メンバーは「第1回エレキコミック発表会」から携わる映像ディレクターの菊池謙太郎氏、元芸人で作家に転向した小川康弘氏、同じく作家の川尻恵太氏、ライブの幕間映像などでおなじみ上田航マネージャー、そしてエレキコミック。自身にとって一番思い出深い出来事や、20年後のエレキコミックに期待することを聞いた。
エレキコミックとの出会い
──今日はエレキコミックの2人を一番近くで見てきた4名にお集まりいただきました。まずはエレキコミックとの出会いを教えてください。
菊池謙太郎 僕はエレキコミックが……。
やついいちろう 緊張してんのか!
菊池 緊張してますよ。
やつい 「エレキコミックがー」じゃねえよ!(グーで肩あたりを殴る)
菊池 ……よろしくお願いします。
やつい 何も言ってねえじゃねえかよ!(グーで肩あたりを殴る)
今立進 結局何も言わなくなっちゃったよ(笑)。菊池くんが映像をやってくれるようになったのは1回目の発表会からだよね。
菊池 はい。単独ライブで流れる映像を作ってます。菊池謙太郎です。出会いはエレキコミックが出ていたライブ「UNKO CHINKO LIVE」です。エレキコミックが学生時代に出ていた大学対抗お笑いリーグで戦った早稲田大学のお笑いサークルの人たちの紹介で見に行って、楽屋で挨拶させてもらいました。そのライブには小川さんも出ていたんですよ。
小川康弘 「耳なり」っていうコンビだったんですけど、そのときに一緒にやったいた合同ライブです。菊池さんが来たのは1回目ですか?
菊池 1回目です。楽屋で「よろしくお願いします」っていって、「川島くん(小川の当時の相方)の友達?」「違います」みたいな会話が最初でした。
やつい ……つまんねえエピソードだな!(グーで思い切り肩あたりを殴る)
今立 強すぎるよ!(笑)
やつい ごめん。(体が)大きいから痛くないのかなって思って。
菊池 痛いです。
川尻恵太 つまんないと叩かれるのか……。作家の川尻です。僕は「デタラメ・オン・ザ・ビーチ」(2005年開催)っていうライブでエレキコミックが札幌にいらっしゃったときにお手伝いしたのが最初です。そのときは全然、僕の印象はなかったと思うんですけど、僕が東京に出てきてからエレ片コントライブの第1回に作家として入れていただいて、その流れでエレキの公演にも携わることになり、「了解、今向かってる」(2009年開催)から参加させてもらってます。
──札幌にいたときは何のお仕事を?
川尻 劇団をやったりお笑いをやったりしてました。
──なぜ川尻さんをエレキコミックの公演に引き入れたんですか?
やつい 勧められたんです。エレ片の「コントの人」をやるときに、片桐(仁)さんが「川尻を入れたらいいんじゃないか」って。
今立 最初はラーメンズが引っ張ってきたんだよね。(小林)賢太郎がね。
やつい 俺はまったく知らないんで、入れたくなかったんですけど。
川尻 (笑)。エレ片の前にラーメンズにも関わっていたんですけど、それと同時に今立さんが出ていた「双六」というライブの作家をやっていて、やついさんより先に今立さんと知り合いました。それで今立さんと仁さんが、「川尻っていう作家がいるよ」ってやついさんに紹介してくれたんです。
大学時代からずっと先輩・後輩
小川 僕は大学の落語研究会がスタートですね。
やつい 「君、面白い顔してるね」って落研に誘ったんです。
今立 スカウトだ。
やつい 「音楽やりたい」とか言ってたんですよ。バカじゃないかと思って。「こんな顔で歌ってもしょうがないじゃん!」って言って。
小川 僕よりも面白い顔の人にそう言われて、入ったところで真っ先に越えられない壁があるっていう状態だったんですけど、サークルの気さくな雰囲気に惹かれて落研を選びました。覚えているのが、新入部員の自己紹介のとき、今立さんはずっと「ファミ通」を読んでいて。「この人と口をきく機会はそんなにないんだろうな」って思ってました。
今立 あはははは(笑)。おがちん(=小川)は高校時代からお笑いをやってましたからね。元相方と高3のときにコンビを組んでいて。
やつい 鳴り物入りですよ。
今立 「ラ・ママ新人コント大会」にも高校のときに受かってました。
やつい 高校生で「ラ・ママ」に出てるっていうことで有名だったんです。落研を何回か見学に来ていたんですけど、音楽サークルと天秤にかけてて。図々しくも。「二股かけてんじゃねえよ、クズが!」と思ってね。こんな顔してよく二股できるなと思いません?
今立 口調が荒すぎる(笑)。
小川 卒業後もそのままお笑いを続けてきたので、芸人としても先輩と後輩っていう関係が15年くらいありました。2010年に僕らは解散して、やついさんが「今度単独ライブがあるから作家で入らない?」って言ってくれたのが「中2のアプリ」(2010年開催)という公演です。
上田航 僕は2012年トゥインクル・コーポレーション入社なんですが、その前にエレキコミックの映像ライブで2人に挨拶しました。それが最初の出会いです。入社の前に2人の現場にもちょいちょい行っていて、鈴カステラを食べるっていう生配信の現場にも伺いました。
──「全部食べられます」って言って、7個で吐いちゃったやつですね(参照:DVD「エレ片コントライブ~コントの人9~」特集)。上田さんは新卒でトゥインクル・コーポレーションに入社していますが、なぜこの会社に入ろうと思ったんですか?
上田 社員が少ないと思ったので、すぐに大きいタレントにつけると考えたんです(笑)。
今立 初めて聞いたぞ、それ。
小川 2社受かってたんだよね?
上田 はい。布団を売る仕事とトゥインクル・コーポレーションに内定をもらっていて。
川尻 もう1つはどういう仕事だったの?
上田 アクティブシニア層に布団を売りつける仕事です。トゥインクル・コーポレーションのほうが面白そうだったので、こっちを選びました。
死体のようにやついを運んだ
──エレキコミックを語るに欠かせない、一番の思い出をそれぞれ教えてください。
今立 はい、できた人から挙手! お、じゃあ上田さん。
上田 映像ライブでエレキコミックの2人と、川尻さん、菊池さんの5人で全国を回ったことがあって、仙台公演の打ち上げでやついさんが珍しくベロベロに酔っ払って倒れてしまったんです。そのあと、やついさんを台車に乗せて運んだっていうのが忘れられないですね。
菊池 映像ライブのあと、やついさんは夜中にDJイベントに出演する予定があったんです。その合間に打ち上げして、やついさんのDJを見に行こうっていう話になっていたんですが、みんなお酒を飲みすぎて、つぶれちゃったやついさんを「とりあえず現場に運ぼう!」って悪ノリみたいな感じになってしまって。
川尻 階段とか引きずってましたからね。
今立 みんなで交代で出ればDJの時間はなんとかなるけど、お客さんはやついいちろうを見に来てるから1回は姿を見せなきゃダメだろうってことで、台車で会場まで運んだんです。僕が倒れているやついいちろうを死体のようにお客さんに見せて、「今日はこんな状態なので無理です」って謝ったんですけど……。めちゃくちゃ面白かった。
菊池 衝撃でしたね。
──やついさんは覚えていますか?
やつい 覚えてます。階段を、死体を引きずるように運んでるから、頭をしこたま打ってるんですよ。それを上田が全部やってて。つぶれたのをそのまま放っておいてくれればよかったんですけど、頭を打ちすぎたことによって急性アルコール中毒みたいになっちゃって緊急入院。すぐ帰らせてくれたらよかったのに、ずーっと連れ回されて手遅れになってる。
今立 そんなに飲んでないですけどね。
やつい 違うんだよ。泥酔したことより、そのあと頭を打ってるのが一番よくなかった。
──ひどい扱いですね。
上田 いや、ちゃんと運びましたよ!
やつい 嘘つけよ! お前「重いからしょうがない」って言ってたじゃん。
上田 ちゃんと皆で分担して持ちました。
川尻 タクシーから1回落ちちゃったのは覚えてます(笑)。
今立 そうだ、1回落としちゃったんだ。「想像以上に重い!」っつって。「あーあ」って。
菊池 それを僕は爆笑しながらビデオ回してました。
やつい なんなんだよ、こいつら。
やっぱりウンコ・オシッコ関係
──小川さんは学生時代からの仲なので思い出もたくさんあるんじゃないですか。
小川 そうですね。迷惑をかけたこともあるんですが、やっぱりかけられたことのほうが覚えていて。
一同 あはははは!(笑)
今立 「やつい被害者の会」でしょ?
小川 そうです。当時、僕は下北沢で一人暮らしをしていて、そのときやついさんはまだ八王子に住んでいたから終電がなくなると僕の家に来ることが多くて。そのときに、僕も人の泊め方がよくわかっていなかったっていうのもあるんですけど、やついさんは先輩だから布団にちゃんと寝てもらわなきゃいけないと思いつつ、僕も布団で寝たかったので、一緒の布団で寝させてもらったんです。夏、クーラーもなくて暑かったんでしょうね、朝やついさんがバッて起きて冷蔵庫を開けて、僕の大事なアクエリアスをゴクゴクゴクって……!
今立 なんだよ、その小さい話(笑)。
小川 まだあります。そのあとも僕の家のご飯とか勝手に食べてたし、冬は冬で泊まりに来て、僕が家に帰ったら勝手に布団で寝てて。その晩僕がこたつで寝る羽目になったっていうのもあったし……。
やつい エピソードが全部一緒じゃん!
小川 インスタントラーメンも勝手に食べられてたし。
今立 そろそろストレートを打ってよ! ずっとジャブ打ってるけど(笑)。
やつい 捨ててあったマンガをいっぱいあげてるんだから、お釣りがくるぐらいだろ。
小川 「ベルセルク」全巻が捨ててある場所から、やついさんが何往復もして全巻持ってきてくれたんです。
やつい 違うよ! 「ベルセルク」とか「ARMS」とか、小川くんが好きそうなマンガがあったよって教えてあげたら自分で血相変えて取りに行ったんだよ。
小川 そうでしたっけ?
やつい 俺はお前と違ってゴミを拾わないから。ただその情報は与えたよ。で、全巻あげたじゃん。
今立 「あげたじゃん」って。
川尻 所有権(笑)。
やつい 俺が与えた情報でしょ?
小川 それは感謝してます。でも、僕の大事にしてたカセットテープをどんどん出して、しまわないとか。
やつい もう家の話はいいんだよ!
小川 最終的には出禁にしたんですけど、「CD貸してよ」って急に来たり。
今立 また思い出しちゃった、いろいろ。
小川 コーヒーを持ってきてくれたんですけど、こぼすし。CDも借りパクされるし。そんな思い出があります。
──一番の思い出ですか?
今立 あはははは!(笑)
やつい 今の、全部使われないってことだから。
小川 一番の思い出かー。
──いったん考えていただきましょう。川尻さんは?
川尻 僕は、やっぱりウンコ・オシッコ関係になっちゃうんですけど。
今立 「やっぱり」って、今そんな流れなかっただろ!(笑)
川尻 2年くらい前ですかね、エレキコミックのツアー中、すごくお腹の調子が悪いときがありまして。豪快に床に脱糞してしまったんですけど、そんな状態で松島にロケに行って、ずっと2人にボディブローされて、漏らすほう漏らすほうに持っていかれて。みんなで温泉に行ったんですけど、ちょっと間に合わずでして、温泉でパンツを捨てて、それがバレなかったっていうのが思い出ですね。
今立 ただ単に旅の思い出じゃねえかよ(笑)。
──脱糞が一番の思い出?
川尻 脱糞がハイライトですね。
やつい 俺ら関係ねえじゃねえか!
川尻 その話をしたらエレキの2人にたいそう喜ばれたっていう。「漏らせよ、漏らせよ」って。
やつい ろくな思い出ないな……。
次のページ »
同世代のまったく無名の人たちと
- エレキコミック
「エレキコミック結成20周年記念!~3公演まとめてお得パック~『等等』『東京』『金星!!』」 - 2017年11月1日発売 / ポニーキャニオン
-
[DVD]
6480円 / PCBP-53209
- DISC1
-
第24回発表会「等等」
- どなどな
- YD
- モグラたたき
- 寿司屋
- 退屈
- ハロウィン教授
- 三日月の夜
特典映像:やつい結婚パーティー
- DISC2
-
第25回発表会「東京」
- 東京
- 違う誰かに
- 弔辞
- くーちゃん
- 帰ってきた全力俳優
- TJP
特典映像:今立の恋人探し
- DISC3
-
第26回発表会「金星!!」
- 天体観測の朝
- 天体観測
- イントロ屋
- MDAI
- カリスマ
- 映画の秋
特典映像:今立大作戦
エレキコミック第27回発表会「Lemon Lime 100%Girl」
- 東京公演
-
- 2017年11月1日(水)18:30開場 19:00開演
- 2017年11月2日(木)18:30開場 19:00開演
- 2017年11月3日(金・祝)17:30開場 18:00開演
- 2017年11月4日(土)13:30開場 14:00開演 / 17:30開場 18:00開演
- 2017年11月5日(日)13:30開場 14:00開演
- 会場:東京・本多劇場
- 愛知公演
-
- 2017年11月10日(金)18:30開場 19:00開演
- 会場:愛知・中川文化小劇場
- 大阪公演
-
- 2017年11月11日(土)17:30開場 18:00開演
- 会場:大阪・ABCホール
- エレキコミック
- 左 / やついいちろう
- 生年月日:1974年11月15日
出身地:三重県 - 右 / 今立進(イマダチススム)
- 生年月日:1975年9月27日
出身地:東京都 - トゥインクル・コーポレーション所属。大学の落語研究会で先輩(やつい)、後輩(今立)として出会う。大学時代は別々のコンビだったが、それぞれの相方が就職することから1997年にコンビ結成した。片桐仁とのユニット・エレ片としても活動し、毎週土曜25:00~27:00放送「エレ片のコント太郎」(TBSラジオ)を担当。来年1月には新たなライブシリーズ「新コントの人」をスタートさせる。