大宮セブンを題材にした映画「
「島流し」と揶揄されながらも成功を夢見て奮闘する大宮セブン(タモンズ、囲碁将棋、マヂカルラブリー、GAG、すゑひろがりず、ジェラードン)の真実に迫る大人の青春群像劇「くすぶりの狂騒曲」。ほかのメンバーが売れていく中、飛躍のきっかけを掴めずにいたタモンズが「M-1グランプリ」ラストイヤーに挑む姿を描く。タモンズの大波を
タモンズ インタビュー
──大宮セブンメンバーに選ばれたときのことを教えてください。
安部 劇場ができて半年後くらいに吉本本社に呼ばれて、なんのこっちゃわからんまま行ったら、幕張の初代支配人と大宮の初代支配人がいらっしゃって。「はい、あなたは幕張(セブンスターズ)、あなたは大宮(セブン)」って振り分けられたんです。それが、自分たちにとってはラッキーやったよね。
大波 100組以上、一斉にヨシモト∞ホールを卒業することになって、「これからどこでネタすんねん」となっていたときだったので、大宮セブンの7組に選ばれてむしろ命拾いした気分でした。
──「島流し」とも言われていた大宮行きですが、お二人にとってはラッキーだった。
安部 ルミネtheよしもととかで活躍されている兄さんたちからしたら、たぶん大宮の劇場なんて「なんでそんなとこまで行かなあかんねん」みたいな、島流し的なイメージの強い劇場やったと思いますけど、僕らからしたらラッキーやったし、地元のお祭りとか今までやったことない仕事もやらせてもらって、「こんなもらってええの?」というくらい給料が増えた時期もありました。
大波 ただ、楽しくはやっていたんですけど、大宮の劇場はお笑いが好きというよりもふらっと来るようなお客さんや、ファミリーも多くて、それまでの客層(=お笑いファン)とは全然違ったんですよね。劇場に来るお客さんにネタを合わせると、今度は年末の「M-1グランプリ」へのチューニングがズレてくる。で、「M-1」で結果が出ないと仕事が減る。それでどんどん苦しくなっていきました。ムゲンダイのときは揉めたことはほとんどなかったんですけど、だんだんコンビでも揉めだして。劇場のお客さんに合わせたら「M-1」で受けない、「M-1」に合わせたら劇場で受けない。そこの狭間でキツかったような記憶はあります。
──そんな苦しい時期も含めて描かれている「くすぶりの狂騒曲」。ご覧になっていかがでしたか?
安部 思い出しましたね、当時を。「ライブから帰ってきてすぐバイト行ってたな」とか。
大波 「社員にめっちゃ嫌なこと言われてたな」とか(笑)。この映画がなかったら、僕はこの3、4年は記憶から抹消していたと思います。一番苦しかった3、4年なので。絶対に思い出さずして死にたいと思っていたんですけど、こんないい映画にしていただいて、つらかった思い出をうれしい思い出に変えていただきましたね。くすぶってみるもんやな、と。ほんまは芸人って、こうならないようにがんばらなダメなんですけど、こうなってみたらこうなってみたでこういうご褒美があった。わかんないもんですよね。
──続けたからわかる境地ですね。
安部 でも、続けることが正義なのかと言ったら、そうでもないじゃないですか。続けていて、僕らはまだ拾われたというか、救っていただいたけれども、まだ地獄を見続けている人はいっぱいいると思う。僕ら、ラッキーなだけなんですよね。映画にしてもらったり、「THE SECOND」決勝に行けたり。
──そのラッキーに至るには、大宮セブンメンバーの支えもあった?
大波 メンバーの力でしかないです。この人らがいなかったら、今やってないし。
安部 トリオになってたでしょうしね。
大波 お笑いの世界ってシビアなので、結果出なかったら仕事減るし、仕事減ったら昨日まで友達やったやつが友達じゃなくなったりする世界なんですよ。でも、この人たちは僕らが結果出なくても、出ても、まったく接し方が変わらない。それに助けられましたね。
──一番はじめの、大宮セブンと幕張セブンスターズ(よしもと幕張イオンモール劇場のユニット)の振り分けの奇跡ですね。
大波 本当ですよ。幕張に行ってたら、また違うことになっていたでしょうから。大宮の初代支配人が、最初にメンバーを集めたときに「お前らを食わすためにやる」って宣言したんですよ。僕らはお笑いでお金が稼げるなんて思っていなかったので、「またまたぁー」みたいな感じだったんです、全員。でも、ほんまに食わした。この人は本当にすごいです。劇場にお客さんを呼べなくても、無理やり食わしてました。
安部 “大宮夜の部”(認知度アップのため大宮芸人が地元の人たちと飲みに行く会)と呼ばれるような活動もありましたけど、それもちゃんと、支配人が自分でまず大宮の夜に飛び込んで行って、地ならしして、「この人なら芸人と会わせても大丈夫や」みたいな、下地を作ってからそういう会を開いてくれました。
大波 で、そこでの話を劇場ですることもできましたしね。
──映画では
大波 あれは、カッコよすぎます(笑)。もうちょっとお笑いを積極的にする感じの人ですけど、メンタルはめっちゃカッコいいです。
──映画では進むべき道を迷ったり、葛藤したりする様子が描かれていましたが、今、お二人はどういう気持でお笑いに取り組めていますか?
安部 迷走しまくってた時期は、2人の向く方向が同じではなかったんです。今は2人の方向が一致しているので、もちろんネタの細かいことでピリッとなることもありますけど、すぐ修正できる。深手にはならない。42歳、もうおじさんなんで、あんまりケンカする体力もないですし(笑)。
大波 今はお客さんを増やす、来た人を満足させるっていうことだけに力を注いでいて。「詩芸」という60分漫才のライブをやっているんですが、それを全国に広げて、単独ライブの集客を増やして、来た人に満足して帰ってもらう、また来たいって思ってもらう、それだけですね。漫才とトークの2本に絞ったので、やることはシンプルになりました。テレビ出演とか、この「くすぶりの狂騒曲」とか、ラッキーパンチが来たら「ありがとうございます」っていう感じでやらせていただいてます(笑)。
タモンズ単独ライブ「DEADSTOCK」
日時:2025年1月22日(水)18:15開場 19:00開演
会場:東京・座・高円寺2
料金:前売4000円 当日4500円
タモンズトークライブ「劇場版超熟成ラジオ」
日時:2025年1月23日(木)20:20開場 20:30開演
会場:埼玉・大宮ラクーンよしもと劇場
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タモンズ「くすぶってみるもんやな」M-1と劇場の狭間で苦しんだ過去、今は2人の方向が一致 https://t.co/oT2iJUBchd