「桜坂映画大学」町山智浩の名解説で芸人たちが深い感動

昨日3月20日、「第6回沖縄国際映画祭」桜坂劇場にて、「特別上映 桜坂映画大学 ヒューマンドラマ科 映画評論家・町山智浩が選んだ感動の実話『あなたを抱きしめる日まで』生オーディオコメンタリー」が行われ、町山智浩、バッファロー吾郎、2丁拳銃・修士、南海キャンディーズ山里、ウーマンラッシュアワー、渡辺直美が出席した。

オープニングでは、満席で熱気あふれる会場に芸人たちがビックリ。バッファロー吾郎・竹若が「山里人気じゃないですか？」と冷やかすと、2人しか「イエーイ」と言わず、山里はただ寂しげな表情を浮かべるハメに。「我々を前座と思ってる方ばかり」という山里の言葉通り、町山の登場に観客は興奮。しかし当の本人は渡辺が出ているボートレースのCMポスターの話をいきなり始めるなど、独特の空気感で会場を笑わせた。

山里に「この映画を観るうえで知っておいたほうがいいことは？」と問われた町山は、日本ではあまり知られていないアイルランドの情報を説明。マグダレン修道院で行われた女性に対する人権侵害について聞いた芸人たちは一様に驚きを隠せない様子だった。この映画のテーマでもある、未婚の女性が運んだ子供についてウーマンラッシュアワー村本が矢継ぎ早に質問すると、町山が「その答えは映画で」と苦笑。これに山里が「そうだよ！」と同期ゲス対決の構造で笑わせようとするも、映画を待ちきれない観客は一切笑わず。竹若から「仲良くやろう」といさめられ、「まったくウケなくてゾッとした」と、さっそく映画をスタートさせた。

同映画の原作著者・シックススミス役を演じているスティーブ・クーガンは脚本を担当しており、コメディアンだと聞くと、一気に親近感が沸いた芸人たち。山里が「だからセリフをよくかぶせてきるんですね」と言うと、町山は「そうそうそう！」と感心していた。実際映画にはしばしばシックススミスと主人公・フィロミーナによるコントのような掛け合いがあり、芸人たちは「この女優さんがかわいい」「わかる（笑）」と吹き出してしまう場面も。しかし映画が進むにつれ、冒頭に町山から説明があった女性差別の裏にゆがんだ宗教観、宗教を利用する政治など深く暗い背景が浮かび上がり、芸人たちは困惑。日本では理解しづらいカトリックの考え方や複雑に絡み合った政治政策は町山が寄り添うように解説し、そのたびに芸人たちは「信じられない！」「すごい事実……」とコメントを漏らしながら映画への理解を深めていった。

途中、「修道女に罪の意識は？」など、鋭い質問をする村本に山里は「早とちりだな、あいつ！」「すぐ先走る！」と牽制し、2人のやりとりにやっと会場には笑いが。また町山も思ったことをすぐに口に出すため、山里から「いきなりそんな話ぶっこまないでください！」と注意。しかしその山里は、映画に出てくる重要なアイテムを「広告では？」と疑ってしまい「僕はなんてあさましいんだ」と反省していた。

映画が終わり芸人たちは「壮絶……」「ほんとにすごい」と放心状態。エンドロールの間には、町山が原作の書籍とこの映画の違いやその裏話など、見終ったあとだからこそ話せる種明かしをし、芸人たちは「すごい事実」と食い入るように話を聞いていた。

映画に衝撃を受けたバッファロー吾郎Aは「飲みに行かへん？」と会場を笑わせながらも、「町山さんから聞いた情報を知らずに見ていたら面白いと思わなかったかも。アイルランドの文化を知らないから、修道院が悪いというイメージがなかった」とコメント。「映画を邪魔しただけかも」と恐縮する町山だったが、会場からは大きな拍手が送られた。

そして、ここまで一言もしゃべらなかったウーマンラッシュアワーの中川パラダイスがようやく口を開いたかと思うと、「一部漢字が読めなかった」と会場の空気をぶち壊す告白。最後に「パーラダイス」と持ちギャグを放って去ろうとする中川に対して、芸人たちは映画に絡めて「許しましょう」「私は許せません」と言いながら舞台を降りた。

今後も、桜坂映画大学では関根勤特別講師の「地獄でなぜ悪い」、坂東英二特別講師の「ミスター・ベースボール」などスペシャルなプログラムを上映。詳しくはオフィシャルサイトでチェックしてみよう。