左から男性ブランコ平井、Aマッソ加納、ハナコ秋山、ザ・マミィ林田。

Aマッソ加納、ザ・マミィ林田、ハナコ秋山、男性ブランコ平井「芸人が書くドラマ脚本」(後編)

お笑いは、人の欠点を肯定する作業

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Aマッソ加納、ザ・マミィ林田、ハナコ秋山、男性ブランコ平井が脚本を担当している「お笑いインスパイアドラマ ラフな生活のススメ」(NHK総合)は小池栄子、桜井玲香、中川大輔演じるお笑い好きの一家・福池家の日常を描くドラマ。毎週火曜23時に放送されている。

お笑いナタリーでは脚本家4人を迎えて「芸人がドラマ脚本を手がけること」についての座談会を実施した。「コントとドラマの違い」を中心に語ってもらった前編に続いて、後編は彼らとお笑いの関わり方がテーマ。ドラマに登場させた芸人のチョイスについても聞いた。

取材・/ 狩野有理 撮影 / 番正しおり

「お笑いインスパイアドラマ ラフな生活のススメ」とは

小池栄子、桜井玲香、中川大輔扮するお笑い好きの一家・福池家の日常を描くドラマ。家族とその周りで起こる小さな事件を芸人たちのネタの力を借りて解決していく。彼らがいつもテレビ番組や動画サイトで楽しんでいるのは、ウエストランド、ミルクボーイ、錦鯉、天才ピアニスト、笑い飯ら賞レース優勝者からこれから活躍するだろうネクストブレイク芸人まで幅広いネタ。さらに本人役でくりぃむしちゅー有田、ヨネダ2000、おいでやす小田などがさまざまな方法で出演する。セットやセリフにもお笑いのエッセンスが満載。

相方を出したがる平井、出したがらない林田

──ドラマに登場する芸人さんのラインナップが豪華であり、マニアックでもあります。みなさんのリクエストも反映されているとお聞きしました。

左からAマッソ加納、ザ・マミィ林田、ハナコ秋山、男性ブランコ平井。

左からAマッソ加納、ザ・マミィ林田、ハナコ秋山、男性ブランコ平井。

Aマッソ加納 ソマオ・ミートボールをどの回で出すか、取り合いになったんです(笑)。結局私の担当回のショートネタで出てきます。

ハナコ秋山 ソマオ取られちゃったので、仕方なくちゃんぴおんずにしました。

ザ・マミィ林田 僕も仕方なくゆめちゃんにしました。

男性ブランコ平井 仕方なくじゃないやん(笑)。

加納 福池家のテレビから流れる本ネタには、各話のテーマにちなんだメッセージを含んでいるようなネタを持っている芸人を呼んでいるんですけど、ショートネタからはなんのメッセージも受け取らなくていいので、呼びたい芸人をリクエストさせてもらいました。だからソマオからは劇中の誰も教訓は得てないです(笑)。

──幅広く好きな芸人さんをリクエストできたんですね。

加納 平井くんがとにかく「浦井を出せ」と言っていたって聞きました。コンビ愛がすごかったらしい(笑)。隙あらば浦井を出そうとしてた。

林田 あら! そうなんですか?

平井 いやいや(笑)。本人役パターンで、ちょうどいいというか、いけるかもって場面があったから……。たまたまですよ!

ハナコ秋山、男性ブランコ平井。

ハナコ秋山、男性ブランコ平井。

加納 ほんま? 林田は酒井のことよぎった?

林田 僕の回で芸人ラジオが出てくるんですけど、そのパーソナリティが酒井と岡野陽一さんなんです。でも僕、実はギリギリまで反対していて(笑)。

一同 あはははは!(笑)

林田 もっとカリスマ性のあるラジオパーソナリティにしたかったんですよ。そこは制作陣と揉めましたね(笑)。「酒井と岡野じゃない!」って。

──セリフには実在するギャグもたくさん盛り込まれていました。

林田 あ、そういえば「チェだぜ!」だけ2回出てきませんでした? ギャグなんてほかにもいっぱいあるのに。

秋山 確かに。今の流行りと釣り合ってないなあ。

──俳優さん側から提案があったそうです。

林田 アドリブ「チェだぜ!」なんだ。すごい。

──福池家は本多スイミングスクールさんの「バシャバシャ」も使いこなしています。

加納 夏に向けて涼しげなギャグも入っていましたね(笑)。

──セットや衣装にもお笑いオタクが喜ぶようなアイデアが詰まっていましたね。

林田 セットはすごかった。福池家の壁に単独ライブのポスターが貼ってあったり、雑貨屋で取り扱っているアイテムが芸人の小道具だったり。

平井 未来ちゃん(桜井玲香)がAマッソのライブTシャツを着てましたね。

加納 いや、こんなことありますか? 乃木坂46の桜井玲香、大学時代に見てましたからね? こんなにお笑いオタクが喜ぶセットが組まれいることって今までのドラマではなかったと思います。

4人はどんなテレビを見る家庭で育った?

──この作品は笑いが身近にある一家を中心にした物語ですが、みなさんが育ったのはどんなご家庭でしたか?

左から男性ブランコ平井、Aマッソ加納、ハナコ秋山、ザ・マミィ林田。

左から男性ブランコ平井、Aマッソ加納、ハナコ秋山、ザ・マミィ林田。

加納 うちは福池家と真逆でしたね。私が「M-1」を見ていて、「始まったで!」っておかんに言っても、ご飯作ってるから「あんた見ときー」みたいな。「いや、見ろや!」と思ってました(笑)。ご飯あとでええやん。「M-1」やで? なんで見いひんの?

林田 一緒に見たかったんですね(笑)。うちは、父親がどっちかというと堅い感じで。

秋山 お医者さんだよね。

平井 お医者さん? え、お医者さんなん!?

秋山 なんの先生?

林田 内科の先生です。

加納 内科!?

林田 内科にそんな驚かないでしょ(笑)。そういうこともあって下品な番組はあんまりついてなかったと思うんですけど、「笑う犬」シリーズ(フジテレビ)だけは食卓を囲んでみんなで見ていましたね。父親の琴線に触れた番組ということだから、「これは本当に面白いものなんだ」と思っていました。今思えば「ガキの使いやあらへんで!!」(日本テレビ)とか人気バラエティを見てたので、単にミーハーだっただけなのかもしれませんが(笑)。

秋山 うちも「笑う犬」みんなで見てた。特に父親がお笑い番組好きで、テレビは常にお笑い番組がついてたっていう記憶がすごいあります。子供だったし、内容までは覚えてないんですけど、「一人ごっつ」(フジテレビ)を父親が見ている光景は覚えていて。父親が深夜に放送していた「Mr.ビーン」(NHK)を録画したVHSが溜まってて、それを勝手に見たりもしていましたね。

林田 「Mr.ビーン」はうちも見てました!

平井 僕は自分が見たいやつを全部見るっていう感じで、それに時々おかんとかおとんが付き合ってくれましたね。

林田 さすがに福池家みたいに親子でギャグを言い合ったりはしませんでしたけど、どこかにはこういう家族もいるんでしょうね。

平井 親子でライブ来るお客さんもいらっしゃいますもんね。

秋山 うち、母親が地方の番組に電話出演したことがあって、「ハナコのライバルは誰ですか?」と聞かれたときに「ネルソンズ」って答えていたのを見て、信頼しましたね(笑)。

加納林田平井 あはははは!(笑)

秋山 「見てるなあ、お笑い!」と思いました。往年の人気トリオとかを挙げそうなところを、ちゃんとリアルなところを突いてきた。

お笑いは人間の欠点を自分なりに肯定する作業

──福池家の人たちはお笑いに多大な影響を受けながら生きていますよね。私もそういうお笑いファンの1人ですが、今影響を与える側にいるみなさんにもそんな経験があるのでしょうか。

加納 「何を笑えるか」というのは子供の頃からずっとお笑いを見て享受してきましたが、例えば、すごくしつこいネタってあるじゃないですか。実生活でそんな奴おったらほんまムカつくけど、一定ラインを超えたらおもろなってくる感覚ってお笑いに接してきたから身についたのかなと思うんです。すごく話の長いタクシーの運転手がいたとして、うっとおしいかもしれないけど、「ここまで長かったらおもろいな」とか「次これラジオで話したいからもっとしゃべってくれ!」とか。これって人間の欠点を自分なりに肯定する作業なんですよね。それがお笑いのでかいところかなと。そういうフレーバーもこのドラマに入れられたんじゃないかなと思います。

秋山 めっちゃいいこと言った……!

林田 完璧でしたね。

平井 満場一致です。

林田 4人の意見として泥棒させてほしいです(笑)。

加納 4色の文字で(笑)。

──みなさんの回答ということで(笑)。ではそんな話も踏まえて、各話に込めた思いですとか、視聴者へのメッセージがあれば聞かせてください。

加納 私個人で言うと、このドラマで伝えるべき“家族とお笑い”のことは9話、10話に全部込められたと思っているので、とにかく最後まで見ていただきたいです。こんな家族を目指さなくて全然いいんですけど(笑)、そんなに仲良くないおかんの「ここ笑えるな」とか、そういう視点を持ってもらえるきっかけになればいいなと思いますね。

Aマッソ加納、ザ・マミィ林田。

Aマッソ加納、ザ・マミィ林田。

平井 最初にこのお話をいただいたときに、「加納さんが全部整えてくれるから大丈夫」と聞いていたんですよ。僕は7、8話を担当しているんですが、ここまでの流れを汲んでこの理由づけをどうしようか、という話になったときに、あんまりイメージせずに「もろもろ諸事情で……」みたいにして加納さんに投げてしまいました(笑)。

林田 確かに。ちょっとややこしい事情は加納さんの回にスライドしてもらって。

平井 すごいんです、加納さんの受け入れる態勢が。

加納 いやいやいや……。

秋山 僕も書いていて迷った部分があって、加納さんに連絡しました。「こうしようと思っているんですけど、後々困りますかね?」って聞いたら、「自由にしてくれ」と。許容量がすごいんです。全部受け入れてくれる。

加納 違う違う、受け入れてない! 勝手にしてくれって意味や(笑)。

林田 僕の担当した回はわりと序盤で、物語の展開にはまだそれほど絡んできていない部分なので自由に書けた気がします。この見てくれている家族がちょっとでも楽しい気持ちになってくれたらうれしいです。

秋山 芸人たちのネタもたっぷり見られますし、本当に今までになかったスタイルの作品だと思います。コミュニケーションのツールとしてお笑いが役立つこともあるんだなと感じられる、まさに“お笑いインスパイアドラマ”を味わってみてください。

平井 この物語は、芸人のネタを見た登場人物たちがそれをどう受け止めてどう変わっていくか、ということが描かれています。自分たちのコントでもお客さんが意外な解釈をしてくれることがあるんですが、この家族は自分たちの人生が豊かになるような解釈をしていると思うんです。視聴者のみなさんの解釈とは違うこともあるかもしれませんが、素敵な解釈をする家族の物語なんだなと感じてもらえたらなと思います。

プロフィール

左から男性ブランコ平井、Aマッソ加納、ハナコ秋山、ザ・マミィ林田。

左から男性ブランコ平井、Aマッソ加納、ハナコ秋山、ザ・マミィ林田。

加納愛子(カノウアイコ)

1989年2月21日生まれ、大阪府出身。幼なじみの村上とAマッソを結成し、2010年にデビューした。2021年に「女芸人No.1決定戦 THE W」で準優勝。近年は執筆活動も行い、文芸誌で小説やエッセイを発表する。著書に「イルカも泳ぐわい。」(筑摩書房)、小説集「これはちゃうか」(河出書房新社)など。ワタナベエンターテインメント所属。

林田洋平(ハヤシダヨウヘイ)

1992年9月10日生まれ。長崎県出身。トリオ時代を経て2018年に相方・酒井とコンビ結成。「ツギクル芸人グランプリ2019」優勝。「キングオブコント」では2021年に初めてファイナリストとなり注目を集める。結果は男性ブランコと同率2位。ラジオリスナーとして知られ、「眼力剛」のラジオネームで投稿していた。プロダクション人力舎所属。

秋山寛貴(アキヤマヒロキ)

1991年9月20日生まれ、岡山県出身。相方・菊田とのコンビに岡部が加入する形で2014年にハナコを結成した。2018年、「キングオブコント」優勝。2021年1月クールのドラマ「でっけぇ風呂場で待ってます」(日本テレビ)でシソンヌじろうらと共に脚本を担当した。今年4月に初のイラスト集「#秋山動物園」(朝日新聞出版)を発売、KADOKAWAでは初のエッセイ「人前に立つのは苦手だけど 」を連載している。ワタナベエンターテインメント所属。

平井まさあき(ヒライマサアキ)

1987年8月1日生まれ、兵庫県出身。大学の演劇サークルで出会った相方・浦井とコンビを結成し、2011年に大阪でデビュー。2017年に活動拠点を東京に移した。2021年に「キングオブコント」決勝に初進出し、ザ・マミィと同点で準優勝。翌年2022年には「M-1グランプリ」でも初の決勝進出を果たし、4位の成績を残した。吉本興業所属。

お笑いインスパイアドラマ ラフな生活のススメ

NHK総合 2023年7月4日スタート 毎週火曜23:00~23:29(全10回)
<出演者>
小池栄子 / 桜井玲香 / 中川大輔 / 豆原一成(JO1) / 松本穂香
竹原芳子 / なだぎ武 / 宮澤エマ / 加藤諒 / 戸塚純貴 / ヨネダ2000 / イチキップリン / 岡崎体育 / 岡野陽一 / おいでやす小田 / 木野花 / 本多スイミングスクール / くりぃむしちゅー有田哲平 / Yes!アキト / インディアンス田渕 / 笹野高史 / 溝端淳平 / 三四郎 / 平成ノブシコブシ吉村 / 石川萌香 / ウエストランド / チョコレートプラネット / ジャングルポケット / 男性ブランコ / ミルクボーイ / 錦鯉 / ロッチ / 天才ピアニスト / 笑い飯 / ヒコロヒー / ビスケットブラザーズ / かが屋 / さや香 / ザ・マミィ / アルコ&ピース / ハナコ / ランジャタイ / マヂカルラブリー / Aマッソ / きしたかの / いぬ / ソマオ・ミートボール / ゆめちゃん / ちゃんぴおんず ほか
ナレーション:Aマッソ加納

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ハナコ 秋山 @LittleGuyAH

秋山「ソマオ取られちゃったので、仕方なくちゃんぴおんずにしました」
#ラフな生活のススメ
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