アニメ「ユーレイデコ」×Yebisu303&湧|物語の幕開けをポップに彩るコラボレーションソング「Square Pop Town」

7月から放送中のテレビアニメ「ユーレイデコ」。このアニメの各話をイメージしてさまざまなアーティスト陣が書き下ろしたコラボレーションソングが、毎週放送終了後にリリースされている。

全12話から生まれた12曲のコラボレーションソングは、毎話異なるアーティストが担当。KOTARO SAITO(with leift)、Yebisu303×湧、TWEEDEES、ココロヤミ、Sarah L-ee×浅倉大介×Shinnosuke、YMCK×MCU、kim taehoon、スマイリー(CV:釘宮理恵)×DÉ DÉ MOUSE×パソコン音楽クラブなど豪華アーティスト陣が参加している。

音楽ナタリーとコミックナタリーでは「ユーレイデコ」をさまざまな側面から紐解くため、複数の特集を展開中。今回は第2話のコラボレーションソング「Square Pop Town」を担当したトラックメイカーYebisu303とシンガーソングライター湧のインタビューをお届けする。「Square Pop Town」は作詞作曲と歌唱を湧、編曲をYebisu303が手がけたナンバー。これまで接点がなかったという2人がどのように楽曲を作り上げたのか、じっくりと語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 星野耕作

「ユーレイデコ」ストーリー

現実とバーチャルが重なり合う情報都市・トムソーヤ島をユーレイ探偵団が駆け抜ける近未来ミステリーアドベンチャー。物語は「らぶ」と呼ばれる評価係数が生活に必要不可欠になったトムソーヤ島で起こった、“0現象”という「らぶ」消失事件に少女・ベリィが巻き込まれたことから動き出す。ベリィは“ユーレイ”と呼ばれる住人のハックたちと出会い、怪人0と0現象の謎を突き止めるためにユーレイ探偵団に参加。トムソーヤ島に隠されたある真実に近付いていく。

だいぶ戦いながら作りました

──このお二人で「ユーレイデコ」第2話のコラボソングを手がけることになった経緯は、どういうものだったんですか?

Yebisu303 私は劇伴を担当させてもらった流れで、音楽プロデューサーの佐藤純之介さんから「イメージソングにも何かしらの形で関わってもらいたい」というお話をいただきまして。

 私は以前、竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」をカバーしたときに、そのミュージックビデオを純之介さんのご自宅で撮らせてもらったんですよ。それがきっかけで出会って、そのあとに「湧ちゃんにアニメの曲をお願いしたいんだけど」「Yebisuさんとやったら面白いんじゃないか」とお声がけいただいて。

Yebisu303 純之介さんの計らいでセッティングしていただいた形ですね。我々同士はそれまで接点はまったくなかったんですけど。

 本当にはじめましてでした。

Yebisu303 それで、まず純之介さんを含めた3人でLINEグループを作りまして、楽曲のイメージを共有するところから始まった感じですね。

 「カスタマーセンター(トムソーヤ島の管理組織)をイメージして書いてほしい」という話だったので、“カスタマーセンターが存在する街の住人”をイメージして、最初に私が詞とメロディを書いて。

Yebisu303 そのデモをデータでいただいて、私がアレンジを進めていきました。ダメ出しをもらったりしながら。

──作詞作曲が湧さん、編曲がYebisuさん、という分担についても佐藤さんから指定があったんですか?

Yebisu303 最初から明確に決まっていたかというと曖昧だった気もしますけど、私が歌モノを作った経験がほとんどなかったので、「編曲だけやったほうがいいだろう」という方向に自然となっていきましたね。

 私はアニメの曲を作るのが初めてだったし、どうしていいか全然わからなくて最初はすごく戸惑いました。「コードと歌だけでいいよ」と言われても、「ほぼじゃん」と思って。

Yebisu303 (笑)。

 どなたかと共作をすることは今までにもあったんですけど、例えばトラックメイカーさんと一緒に作る場合だと、先にトラックがあってそこにメロディを乗せる作り方が多くて。

Yebisu303 ああ、確かにそうですね。

 そうすると混ざりやすいんですけど。今回はそういうやり方じゃないから、「私が出すぎちゃったらどうしよう?」という不安がありました。でも、編曲の段階でちゃんとYebisuさん色に染めてくれて、面白いコラボになりました。ありがとうございます。

Yebisu303 こちらこそありがとうございます。湧さんから上がってきたデモが本当に白玉のコードと歌だけというシンプルな形だったので、こちらもある程度自由にできた部分はありましたね。

左からYebisu303、湧。

左からYebisu303、湧。

──実際に完成したものを聴かせていただいたとき、2人の個性がちゃんと溶け合っていて、なおかつ2人ともしっかり主張している印象を受けました。

Yebisu303 そうですね。制作過程でもお互いにめちゃくちゃ主張が……。

 うふふふ。

Yebisu303 「いや、ここはもうちょっとこうじゃない?」と遠慮なく斬り込んでいく感じがお互いにありました。だいぶ戦いながら作っていった感じはありますね(笑)。

 イントロからAメロに入るところの空白部分にどのくらい余韻を持たせるかとか、けっこう戦いましたよね。

Yebisu303 そうそう。私は「ひと息置いてから次の展開へ」というふうにやりがちなんですけど、そこを「もっと詰めて、場面展開をスピーディに」という提案があったので「おお、なるほど」と。4分の1小節ずつずらしながら聴いてみて調節していくみたいな、けっこう細かいすり合わせをしましたね。

 そのおかげで、ちょうどいいところに落ち着きました。

Yebisu303 できあがってみると「これしかないな」というバランスになっていますね。

左から湧、Yebisu303。

左から湧、Yebisu303。

──お二人とも人間的には穏やかで控えめなタイプに見えるんですけど、ちゃんと自分の思っていることは遠慮なしに言い合えるんですね。

 音楽を作るとなったら、ちょっと頑固なんですよ(笑)。「ここだけは!」みたいなところはちゃんと言います。そのほうがいいものができますしね。

Yebisu303 もちろんそうですね。言ってもらったほうがこっちも対応しやすいですし。

 これまでにもいろんな“はじめまして”の人と音楽を作る機会があったんですけど、そこで「遠慮してたら進まない」ということを学んだんですよ。遠慮して何も言わずに進めても、あとから絶対に「やっぱりこうしたい」が出てくるので、だったら最初から言ったほうがいい。こっちが何か言えば相手の人も自分の考えを言ってくれるし、それをすり合わせていくやり方が一番いい結果になりますね。

Yebisu303 自分はどっちかというと押しが弱いタイプなんですけど、今回は湧さんがグイグイ言ってきてくれたから、それに触発されてこちらも意見を出せるようになってきた部分はあった気がします。

 しめしめです。

Yebisu303 「複数人で音楽を作るのって、こういうふうにやるものなんだな」という学びがありましたね。

パピプペポをめっちゃ使おう

──湧さんはどんな意識で作詞作曲を進めていきましたか?

 アニメがすごくポップな印象だったので、「パピプペポをめっちゃ使おう」と思って。「ピピピピ」を入れたのもポップにする工夫ですし、破裂音とちっちゃい「っ」を組み合わせるとすごく楽しくてポップになるから……タイトルに「Pop」という言葉も入ってるし(笑)。そういう言葉をいっぱい出して、色だったら原色が想像できるような歌詞にしようと思って書きました。

──それは聴いていても感じました。ほかにも「変えちゃって」や「なっちゃって」のように「ちゃって」が多用されていたり、この弾む感じの言葉遣いはおそらく意識的なんだろうなと。

 そうです。「ピッコピッコピッ ビット」からサビの最後のほうとかは、子供向けの歌詞にしたくて。子供たちが思わず口ずさみたくなるような、歌って楽しい音使いを意識しました。

──そうして作られた詞とメロが上がってきて、Yebisuさんはどういうふうにサウンドデザインを詰めていったんですか?

Yebisu303 まずテンポが決まっている時点で、方向性は自分の中で固まっていて。自分が好きなジャングルビートを使いたい思いがあったので、「その雰囲気を出しつつもそちらに寄せきるのではなく、ポップな感じを出したい」というところからスタートしました。けっこうパートによって展開をガラッと変えているんですけど、これはアニメ本編のストーリーの流れにもリンクさせたいからなんです。自分の中では1番2番あたりが第2話前後の雰囲気で、そのあとのCパート以降がアニメ終盤のエピソードを意識した音作りになっていて。

 全部の放送が終わってから、アニメのストーリーと照らし合わせて聴き直してみると面白いと思います。オタクって、そういうのめっちゃ好きじゃないですか(笑)。「あのときの歌って、あとから思えばこのことを指してたんだ!」みたいなのを発見するのが。

Yebisu303 そうそう、ありますよね。

左から湧、Yebisu303。

左から湧、Yebisu303。

──おっしゃるように、リズムパターンがどんどん変化していくところがサウンド面ではもっとも印象的でした。この1曲に5ジャンルくらい入っているような勢いですよね。

Yebisu303 入ってますね(笑)。

──湧さんの歌とメロが一貫性を持ってどっしり構えていてくれるから、アレンジで遊びやすかった部分もある?

Yebisu303 ありますね。世界観がバッチリ確立されていますし、デモを受け取った段階で「この歌とコードだけでも全然成立するな」という印象だったので、「じゃあオケでめちゃくちゃ遊んでやろう」と思って(笑)。

 ごちゃごちゃしてて、かわいいです。

Yebisu303 ありがとうございます(笑)。その道の偉大な先達にヒャダインさんという方がいらっしゃいますけど、1曲の中にものすごい情報量を詰め込まれますよね。そんなイメージで、アレンジの中に場面転換を作りたかったというのはあります。さすがにヒャダインさんの域までは行けてないですけど、そこを目指したい気持ちはありました。