ナタリー PowerPush - younGSounds

ついにアルバム完成! イルリメがモリカワ&やけのはらにインタビュー

歌詞カード見て「まさかそんなことを歌ってたなんて」って

イルリメ

──あと、このCDには前回のライブ盤にはなかった歌詞カードが付いてるんですよね。

モリカワ わはは(笑)。やっと何言ってるかわかった?

やけのはら 僕も「こんな歌詞だったんだ!」って思いました。

モリカワ 俺も俺も(笑)。

──いや本当に新鮮でした。「ヤングサウンズのテーマ」の最初の歌い出しは「ブラックオーガニゼーション」って言ってたのか!とか。多分ライブをずっと観てた人は新鮮ですよね。

やけのはら メンバーもそう思ってますよ。1行目から「へーっ!」って。びっくりするような歌詞が結構多かったですね。「D・I・S・C・O」の「ムラっとするフロントライン」って部分、全然聴きとれてなかったから「まさかそんなことを歌ってたなんて」って。

──4曲目の「EL SANTO」の歌詞は何語なんですか?

モリカワ スペイン語だね。mieshaの友達で、スペインに住んでた人が訳してくれて。元々mieshaが日本語で歌詞を書いてて、それを渡したらしい。

やけのはら あれ、ライブのときはいつもどうしてましたっけ? なんか録音を始めてみたらmieshaさんが急にスペイン語で喋りだしたんですよね。

──え!(笑)。そんなことってあるんですか!?

モリカワ ライブのときは英語かなんかで違うこと言ってた。何を言ってたかは知らなかったから内容は同じかもしれないけど、スペイン語ではなかった。

やけのはら mieshaさんがレコーディングのためにビルドアップしてくれたんですよ。メキシコがテーマの曲だから、ちゃんとメキシコっぽい曲にしてくれた。

ポリティカルなことをストレートに伝えるのは好きじゃない

──モリカワさんはどうやって歌詞を書くんですか?

モリカワ 普通まずテーマを作るじゃん。それをお題に歌詞の映像みたいなものを考えて。例えばイルリメだったらそれをうまい具合にわかりやすく言語化するじゃない。俺の場合、そういうのもあることはあるんだけど、聴く人に全部は伝えないというか。自分の中では完全なものとして出来上がってるんだけど、全部は出さない。

──一番見せたい部分だけをクローズアップして、そこから少しずつ見せていく手法ですかね?

モリカワ そうそう。だから意外とわかりづらいというか、なんなんだろうみたいに思われてるだろうけど。でも自分の中には完璧な1枚の絵があるの。

やけのはら そういうモリカワさんの歌詞のさじ加減、僕はすごく好きですね。自分の印象なんで合ってるのかわかんないですけど、例えば「HUMAN PSYCHOLOGICAL PARTY」はアメリカ南部の田舎の、奴隷制度があった頃の労働する黒人のことを歌ってるのかなとか。「テクノとブルーズ」って歌詞は、テクノはテクノロジー、機械ってことにもとれるし、どっちも黒人が作り出した音楽でもあるし。

左からモリカワ、やけのはら。

モリカワ ブルースのちょっとゆっくりしたリズムって、綿畑で働いてる人の仕事のスピードなんじゃないかって思ってるんですよ。黒人の異常なまでの宇宙信仰みたいのあるじゃない。例えばサン・ラとか。SFなんかもほぼ黒人が発祥だったり。そういう独特の宇宙観がすごく面白くて。ブルースからテクノまで、黒人が作った音楽には一貫した感覚があると思う。

──一貫した感覚とは?

モリカワ ブルースは口で伝えていく音楽だったでしょ。それはヒップホップも同じで。今となっては超メジャーなことになってるけど、歴史を振り返ると元々はすごくマイノリティのものだった。その流れがすごく面白いなあって。

やけのはら その「黒人の音楽」ってニュアンスは、僕は歌詞カードを見て初めて気付いたんですよ。「EMBASSEY OF YS」は反人種差別運動のデモみたいなイメージなのかな、とか。

モリカワ ポリティカルなことをそのまんまストレートに伝えるのは好きじゃないんです。ハードコアをやってるときからそうだった。僕はPARLIAMENTの世界観が好きなんですよ。物語性があるところとか、実はちょっとポリティカルなんだけどそれを感じさせないユーモアとか。若い頃にあれに衝撃を受けて、すごく憧れたからこういう歌詞になっちゃったんだと思う。「ヤングサウンズのテーマ」に出てくる「スターシップ」とか「スターチャイルド」って言葉は全部Pファンクの曲に出てくる登場人物。おちゃらけてて全然使命感がないんだけど結局世界を救うみたいな、後から分析するとあのPファンクの世界観なんだと思う。

やけのはら 全体的にアメリカンな感じですよね。ヨーロッパじゃない。「HOT SHOT」ではそのイメージに擦り寄せて、僕もアメリカの広大なハイウェイみたいなイメージで歌詞を書いたんですけど。今回それが字面ではっきりとわかって、やっぱりモリカワさんの歌詞いいなあって思いましたね。

──うちのボーカルはやっぱりさすがだなーって?

やけのはら はい。うちのボスやるなあ、と(笑)。

お前らも聴くほうじゃなくてやるほうになろうぜ

──歌詞カードの最後に「START YOUR OWN BAND」って大きく書いてあるのはどういう意味ですか?

モリカワ THE BIG BOYSっていうバンドが昔から言ってる言葉なんだけど、「自分でバンドやれよ」って。

──このアルバムを聴いてバンド始めてくれということですね。

モリカワ そうそう。「お前らも聴くほうじゃなくてやるほうになろうぜ」ってこと。バンドやるにはうまくなきゃとか、才能がなきゃダメみたいなこと思ってる人もいるじゃない。そういうんじゃなくてとにかくやろうよ、って。

──若い人たちに促してるんですね。

モリカワ いやいや、年寄りでもいいし(笑)。

やけのはら だって僕ら全員オーバー30なヤングバンドですから。

──わはは(笑)。今後オーバー40になっても、オーバー50になっても、younGSoundsとして少年隊のようにがんばってほしいですね。

やけのはら それにしても「START YOUR OWN BAND」っていい言葉ですね。「OWN BAND」は「OWN LIFE」に言い換えてもいいし。うちのボスの言葉に感動しちゃいましたよ。

モリカワ 俺がそうだったからね。

──モリカワさんが?

モリカワ THE BIG BOYSを観てバンドを始めたの。

左からモリカワ、やけのはら、イルリメ。

──なるほど。

モリカワ THE BIG BOYSが言ってるこの言葉、どういう意味なんだろうって、「OWN」がわかんなくて辞書引いたら「自分自身の」って書いてあったから、「よし、俺もバンドやろう!」と。

──じゃあ、younGSoundsを聴いて音楽を始める新世代に期待しましょう!

やけのはら いろんな要素が入ってたり、知らない人にとってはわかりづらい部分もあるかもしれませんが、基本的にはシンプルで楽しい音楽だと思います。機会があればみなさんぜひ聴いてください。よろしくお願いします。

──うん。younGSoundsにはやっぱり売れてほしいなと思いますね。ライブができる機会はなかなかないかもしれないですけど、これをきっかけにもっと多くの人に聴かれてもらいたいです。具体的な数字を言うと2000枚から3000枚くらい売れてほしいです(笑)。

やけのはら わはは(笑)。でも、個人的には「このアルバムは売れてほしい」って気持ちはあんまりないんですよ。これができたとき「いっぱい売れたらいいな」じゃなくて「今までみんなで作ったものがちゃんと形で残って良かったな」って思ったんです。

──なるほどね。

やけのはら だからなんて言うか、届くべき層にピンポイントで届いたら、まずはうれしいなって感じです。いろいろな物事や形式も、いろんな人がいて、考えがあって、「こう」と決まってる形以外にもさまざまなやり方があるっていうか、一度ばらしてもう一度組み立てたらどうなるか? とか。そういうニュアンスが伝わるとうれしいですね。音楽の面白いポイントやアイデアが、独自の形でそれなりに入っているかなと。自分が15歳の頃にyounGSoundsを聴いたら好きになってたと思うし、なにか面白いものを求めてる人とか、自分なりの聴き方でいろいろ楽しめる人、そういう人に届くアイテムになったらいいなって思います。

モリカワ 僕はこれが「普通の日本のロック」として残ってほしいと思ってる。「たくさんのジャンルが混ざった」って、そんなのもう2012年には普通のことじゃないですか。そういう感覚がある中で生まれた「普通の日本のロック」としてのちのち認知されるようになったら、それはうれしいことだなと思ってます。あとは、イルリメと谷さんにやっと聴かせることができたなっていう安心感ね(笑)。すごくホッとした気分です。

左からイルリメ、モリカワ、やけのはら。

younGSounds 「ヤングサウンズのDISCO」 MV

1stオリジナルアルバム「more than TV」 / 2012年7月18日発売 / 2500円 / felicity / PECF-1051

収録曲
  1. ヤングサウンズのテーマ
  2. HOT SHOT
  3. EMBASSEY OF YS
  4. EL SANTO
  5. HUMAN PSYCHOLOGICAL PARTY
  6. BEAUTY BOOTY GIRL
  7. CASH MONEY ENTERTAINMENT
  8. DA CHASE
  9. FORTUNE TELLER
  10. ヤングサウンズのDISCO
  11. ヤングサウンズのエンディングテーマ
Erection presents younGSounds
「more than TV」Release Party

2012年10月9日(火)
東京都 代官山UNIT
OPEN 18:00
前売 3000円 / 当日 3500円(ドリンク代別 / 前売購入特典あり)

<出演者>
LIVE:younGSounds / 曽我部恵一BAND / and more
DJ:JxJx(YOUR SONG IS GOOD) / ロベルト吉野(サイプレス上野とロベルト吉野)

チケット一般発売:8月12日(日)

younGSounds(やんぐさうんず)

younGSounds アーティスト写真idea of a jokeのモリカワアツシ(Vo)と谷口順(B)を中心に、KIRIHITOの竹久圏(G)、イルリメ(Rap, Key)、やけのはら(Rap, Sampler)、TIALAの柿沼実(Dr)が集まって2007年からライブ活動開始。その後イルリメが脱退、谷口が名誉メンバー化し、現在は元DROOPのmiesha(Vo, Key)、クリプトシティの中尾憲太郎(B)が参加している。音楽性は、バンド演奏のハードコアパンクとサンプラーによるヒップホップを切り刻んで混ぜあわせたような、極めて特異なパーティミュージック。2009年にライブアルバム「bootleg of ys」を発表し、2012年7月に初のスタジオ録音盤「more than TV」をリリースした。