声を出せなくてもいてくれるだけで
──モノンクルは「横浜音祭り」開催初日にあたる9月17日にBillboard Live YOKOHAMAで行われる「横浜音祭りライブ・ホップ!特別公演」に出演します。これに向けての意気込みを聞かせてください。
角田 ビルボード横浜は去年のワンマンでも立たせていただいた会場なので、そういう意味では安心感もありますし、シンプルに「あの素敵な雰囲気の中で音を鳴らせるんだ」と楽しみな気持ちもあります。今回はそのときとは違う編成になる予定でして、同じ曲でもまた違った表現になると思うので、そこも楽しみにしていただきたいですね。
吉田 去年は5人編成だったんですけど、今回は4人で。
角田 去年はギターが2人とコーラス1人に僕らという編成で、今回はギター、ドラム、僕らという形になります。ドラムがいるかいないかだけでもかなり音楽の組み立て方が変わってくるので、そこも楽しみのひとつですね。
吉田 ビルボード横浜って、なんかシャンデリアがすごかったよね。
角田 渦巻き型のやつね。上下に移動したりする。
吉田 私はあのシャンデリアの印象がすごく強くて。演奏が始まると、上の席のお客さんがステージを見やすいように自動で畳まれるんですよ。それがちょっと寂しくもあるんですけど(笑)、楽しんでもらえるポイントではあると思いますね。あと、料理もおいしいし。
角田 ビルボードライブは東京、大阪、横浜の3店舗でそれぞれ作りが違うんだけど、統一されたシックな雰囲気があって。そのトーンが僕はすごく好きですね。
──モノンクルの音楽性にも合いますしね。スタンディングの会場で聴くのももちろん楽しいんですけど、座って食事をしながらじっくり耳を傾けるスタイルにもすごく向いている音楽だと思います。
角田 ありがとうございます。ビルボードは落ち着いて聴いてもらえる場所というか、ほかの会場とは聴きどころが違ってくるような印象はありますね。演奏そのものに集中しやすい環境なので、純粋に音楽に浸る体験を味わえる会場だと思います。
吉田 今はお客さんが声を出せないということもあって、“音楽そのものをより集中して聴く”というライブの楽しみ方が自分も含めてみんなに浸透してきている気がするんです。歓声はなくても、楽しんでくれていればその熱量はしっかりこっちに伝わってくるし、逆にお客さんに響いてないときもちゃんとわかる(笑)。お客さんがそこにいるというだけで生まれるパワーってあるんだな、と改めて感じました。無観客配信ライブをしたこともあるんですけど、そのときは「いや、これは難しい!」と思っちゃって(笑)。
──そこにお客さんが存在していれば、たとえその人が無反応だったとしても“無反応という反応”をしてくれているわけですからね。まったく何もないのとはまるで違う。
吉田 そうですね。私はライブでお客さんに一緒に歌ってもらったりコール&レスポンスをしたり、みんなが声を出してくれることにすごく救われているという自覚があったので、それがなければ成り立たないと思っていたんです。だから、お客さんが声を出せなくなった当初は本当にどうしようかと思ってたんですけど、「いてくれるだけで全然違うんだ」ということを身をもって理解したんですよ。それは、この状況にならなかったら一生わからなかったかもしれない。そういう意味で、ミュージシャンとしても人としても一歩進めたような気がしていますね。
──そのことが曲作りに影響した部分はあったりしますか?
吉田 曲作りにかあ……どうでしょうね? もともとあまりライブを前提に曲を作っていないところはあるんですけど……もしかしたら以前よりも「広義的な歌を歌うというより、等身大の自分で個人的な話をしたい」という意識に寄ってきているかもしれないです。人と人が直接会って触れ合うことがなかなかできない期間を長く経験したことで、1人ひとりに向けたパーソナルな言葉を歌いたくなっているような感覚はちょっとありますね。
──大勢の人を「みんな」と一括りにするのではなく、「“1人”がたくさん集まった状態」と捉えるようになった、みたいなイメージですかね?
吉田 ああ、そうかもしれないです。1人ひとりがそれぞれ個人として目の前にいてくれている実感がある。
──角田さんはいかがですか? コロナ禍以降、曲作りに意識の変化はありました?
角田 うーん……やっぱり自然と影響されているんだろうな、とは思います。周りの状況や物事を意識的に音楽に取り入れようとは思っていなくても、人間ってそのときの環境に自然と適応していく生きものだから、知らず知らずのうちにエッセンスが入ってきていますよね。今年に入って少しずつ世界が開けていっているムードがある中で……もちろんまだまだ予断を許さない状況ではありますが、無意識のうちに開けた雰囲気の曲を書いていたりするんですよね。結局「時代に作らされている」みたいなところからは逃れられないものなんだろうな、ということを再確認しました。
──それはコロナ禍に限らず、ということですよね。
角田 そうですね。本当にそういうことだと思います。
フェスは一番のご褒美
──では最後に、ざっくり「最近どう?」みたいなお話も聞けたらと思うんですけども。最近の音楽活動はどうですか?
吉田 モノンクルとして楽しみな展開もいろいろあったりするので、その準備に追われている日々です。充実していますし、幸せですね。あと、最近は「SNSに力を入れていこう」というテーマを掲げていまして。インスタライブを月1回くらいは開催したいと思ってがんばっていたり、そこで直接は会えない人ともつながれているのがうれしいです。
角田 あとは5月にリリースした新曲「Higher」がCMに使われたり、そのCMが全世界で流れ始めたりもしていて……(参照:モノンクルの新曲「Higher」がソニー新型スマホのCMソングに決定、コラボMVも公開)。
吉田 非常にいい感じです!
──今年のフェスで言うと「横浜音祭り」のみならず、「SUMMER SONIC 2022」への出演も決まっていますしね。
角田 フェスって、出演する側にとってもお客さんにとっても、シンプルに音楽の楽しみを再確認できる場所だと思うんですよ。仕事や生活での悩みだったり、日々のいろんなことを一旦全部置いといて「音楽って楽しい!」ということに没入できる場というか。すごく貴重な、尊い場所だなというふうに思います。
吉田 私はもともとフェスが大好きで、「フェスに出たい」という思いが活動の原動力になっているような部分もあるんですよ。だから、ここに来てようやく国内でフェスが開催できるようになってきている現状がすごくうれしいんです。いろんなフェスに出演できるというのは、私にとっては一番のご褒美ですね。
──コロナ禍を耐えてきたことへのご褒美?
吉田 そうです! コロナでたまった鬱憤を晴らして、ここでブチ上げてしまおうと思ってます(笑)。
──この調子でいけば、今年はモノンクルにとっていい年になりそうですね。1年の半分以上が過ぎたタイミングで言うのもなんですけど(笑)。
角田 そうですね(笑)。最近の僕らは、わりと近い未来にマイルストーンを設定して活動するようにしているんですよ。短期的な区切りを設けて、「そこへ向けてどう取り組んでいくか」の繰り返し。その短期を積み重ねることで中期を作っていくようなイメージで、結果的に大きな前進につながっていたらいいなというふうに考えています。今年の終わりにそれがどのくらいになっているのか、自分たちとしてもけっこう楽しみですね。
──短期目標を細かく設定するって、企業みたいなやり方ですね。
角田 そうかもしれない(笑)。
吉田 コロナ禍もあって、長期の目標が立てづらい時期が長かったからでもあるんですけど、確実に置ける駒を置いていきたい気持ちが今は強いんです。着実に、ゆっくりとでもいいから1つずつ実現していきたいと思っています。
──その小さな積み重ねを毎回「達成できた!」と逐一感じることも大事ですしね。
吉田 そうですね。小さな喜びを常に感じながら進んでいきたいです!
ライブ情報
横浜音祭りライブ・ホップ!特別公演
- 2022年9月17日(土)神奈川県 Billboard Live YOKOHAMA
[1st]OPEN 15:00 / START 16:00
[2nd]OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
モノンクル
プロフィール
モノンクル
吉田沙良(Vo)と角田隆太(B)によるソングライティングデュオ。2020年10月にシチズン「クロスシー」のCMソングとして「Every One Minute」を提供。2021年3月にはモーニング娘。の「抱いてHOLD ON ME!」をカバーして話題を集めた。2022年2月にテレビアニメ「ヴァニタスの手記」第2シーズンのエンディングテーマ「salvation」を収録したシングルをリリース。最新曲は2022年5月配信の「Higher」。