プロフェッショナルの阿吽の呼吸
──制作はどんなふうに進んでいったんでしょうか?
長屋 曲が決まったあと、リハーサルの段階から私も参加させてもらって、スタジオで仮歌を入れながらテンポを決めたりしました。あるとき茂木(欣一 / Dr)さんが「次はテンポを落としてスカの感じでやってみよう」とメンバーの皆さんに伝えて、そうしたら当たり前かもしれないんですけど曲の雰囲気がバッと変わったんですよね。そのスピード感にプロフェッショナルのすごさ、皆さんの阿吽の呼吸を感じて、声には出せなかったけど「うわ、カッコいい!」と思っていました。
──スタジオの雰囲気はどうでした?
長屋 ものすごく和やかでした。しかも皆さんめちゃくちゃ仲良しですよね。
谷中 メンバーだけだと静かなときもあるんだけどね。長屋さんが来るとうれしくなってみんないつも以上にしゃべっちゃう(笑)。
長屋 一緒にいる時間、ずっと楽しかったです。
谷中 歌入れが終わってからのほうがたくさん話せた印象があるけど、終わるまでは歌に集中してたのかな。
長屋 そうかもしれないです。普段とは勝手が違うし、当日相談して譜割りを変えたりもしたので。やっぱり緊張感はありましたね。
谷中 でもこっちは歌ってもらうたびに感動しかなかったですよ。「すごいすごい!」ってみんなスタンディングオベーション状態で。
長屋 すごく褒めてくださいましたよね。
谷中 全部本心だからね。素晴らしい人を素晴らしいと言うのは本当に楽なことです(笑)。
やっぱり楽しいです、トロンボーン
──そのほかレコーディングで印象に残っていることはありますか?
長屋 私はなんといってもトロンボーンが刺激的でした。
谷中 ですよね。
長屋 12年ぶりだったんです。小4から中3までやっていたんですけど、それ以来ほとんど触ってなくて。だから、最初に吹いたときはちょっと絶望しました(笑)。ポジションは覚えてるのに肺活量とか口の感覚が付いてこなくて「あれ? 息が伸びない」って。そこから練習して取り戻していくのは、大変だけど楽しかったです。
──スカパラと一緒に演奏してみた感想は?
長屋 管楽器は感情が乗りやすいというか。音が合わさっていく感覚が楽しくて「これだこれだ!」と思いながら吹いていました。やっぱり楽しいです、トロンボーン。
谷中 そもそもどうしてトロンボーンを始めたんですか?
長屋 小学校のときに金管部という部活に入りまして、初めて楽器を選ぶときに大きい楽器に惹かれて、特にスライドの操作がカッコいいなと思ってトロンボーンを選んだのが最初です。ただ、中学校で吹奏楽部に入るタイミングではサックスに転向したいと思っていて。華があるし、主旋律を取ることも多いから憧れていたんですよね。でも結局サックスは私の親友がやることになり、さらに2歳上の姉が同じ部活でトロンボーンをやっていたので「姉妹でトロンボーンがいいんじゃない?」と言われて「わかりました」と泣く泣くあきらめました(笑)。結果、トロンボーンは大好きな楽器になったんですけどね。
谷中 長屋さんは背が高いからトロンボーンが似合うんだよね。
──ミュージックビデオで北原雅彦(Tb)さんと一緒に吹いている場面もカッコいいですね。
谷中 あれちょっと北原さん張り切りすぎちゃって、長屋さんより目立つ感じで動いてるからね。ホントすいません(笑)。
長屋 あはは。私がパフォーマンス的に動きながら吹くのに慣れてなかったんです。だから北原さんと差がついてしまって、現場で「テンション合わせて!」という声が。
谷中 違う違う、それは北原さんに言ってるのよ(笑)。長年やってるんだから北原さんがテンション合わせてねって。
長屋 あと北原さんは今回楽器も貸してくださったんです。一応姉が持っていたものがあったので、それで練習しつつ本番はレンタルしようかなとか考えていたんですけど、北原さんが「いっぱいあるし吹いてみなよ」と言ってくださって。すごく優しくしていただきました。
谷中 北原さんもうれしかったんだと思いますよ。
長屋 しかもマウスピースも1ついただいたんです。スカパラの名前が刻印されている超レアなものを。こんなのいただいちゃっていいのかなと恐縮しました。
谷中 いやいや、俺からしたらトロンボーン1本くらいあげたら?って思うくらいですけどね(笑)。
コラボステージは楽しむ気持ちが勝つ
──今後はライブでの共演も期待していいんでしょうか?
長屋 スカパラの皆さんはいつも本当に楽しそうに演奏されてるから、あの中に入ってみたいなっていうのは思いますね。
谷中 なんて言うのかな、長屋さんは強いんですよ。こないだの「紅白歌合戦」のときもほかの出演者がいる中、ステージの真ん中に立ってそうそうたる面々と歌っていて。
長屋 そういう演出だったんです(笑)。
谷中 あれはさすがに緊張しちゃうんじゃない?と思って聞いたら「緊張を超えて楽しくなりました」って言ってたもんね。そのあとラジオのコメントで「あとから観たら自分がいろんな人を従えているみたいで面白かったです」と話していて、その感覚いいなって。次はスカパラを従えてもらいたいし、それくらい主体性持って引っ張ってくれるほうが自分たちも楽しいので。
──長屋さんがスカパラの真ん中で堂々と歌っている姿が目に浮かびますね。
長屋 やってみたいです。私、普段の自分たちのワンマンライブとかだとめちゃくちゃ緊張しいなんですよ。でも不思議なことに自分がコラボでどこかに飛び込む形だと楽しむ気持ちのほうが勝つんですよね。普段と違う景色や雰囲気を味わう感じになるというか、乗っかる形になるから安心して楽しめるのかな。だからコラボは大好きです(笑)。
谷中 そのときは「青い春のエチュード」だけじゃなくインストの曲もやってみたいよね。
長屋 やりたいです! あ、譜面いただいたんですよ、北原さんに。
──スカパラの曲の譜面ですか?
長屋 はい。「いつか吹きたいんです」って話をしたら「Paradise Has No Border」の譜面をトロンボーンのポジション付きで送ってくださいました。
谷中 えっ、もう渡されてるんだ?
長屋 いつか共演するとき吹けるようにこっそり練習しておきます(笑)。
東京スカパラダイスオーケストラ ツアー情報
「JUNK OR GEM ~SPRING & SUMMER~」ガラクタかオタカラか?スカしてるならそれがタカラだ。
- 2023年5月26日(金)埼玉県 川口総合文化センターリリア
- 2023年6月1日(木)宮崎県 メディキット県民文化センター演劇ホール
- 2023年6月3日(土)福岡県 福岡市民会館
- 2023年6月10日(土)滋賀県 シライシアター野洲
- 2023年6月11日(日)愛知県 半田市福祉文化会館(雁宿ホール)
- 2023年6月13日(火)大阪府 フェスティバルホール
- 2023年6月15日(木)兵庫県 丸尾建築あすかホール
- 2023年6月17日(土)広島県 呉信用金庫ホール
- 2023年6月18日(日)島根県 出雲市民会館
- 2023年6月23日(金)東京都 江戸川区総合文化センター 大ホール
- 2023年6月28日(水)石川県 松任文化会館 ピーノ
- 2023年6月29日(木)富山県 砺波市文化会館
- 2023年7月2日(日)新潟県 南魚沼市民会館
- 2023年7月7日(金)東京都 J:COMホール八王子
- 2023年7月12日(水)岩手県 田園ホール 矢巾町文化会館
- 2023年7月13日(木)山形県 荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)
- 2023年7月17日(月・祝)群馬県 昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)
プロフィール
東京スカパラダイスオーケストラ(トウキョウスカパラダイスオーケストラ)
NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Tenor Sax)、谷中敦(Baritone Sax)、沖祐市(Key)、川上つよし(B)、加藤隆志(G)、大森はじめ(Perc)、茂木欣一(Dr)からなるスカバンド。1989年のデビュー以降、インストゥルメンタルバンドとしての確固たる地位を築く中、日本国内に留まることなく世界31カ国での公演を果たし、世界最大級の音楽フェスにも多数出演。2021年8月には「東京2020オリンピック競技大会」の閉会式でライブパフォーマンスを披露した。2022年3月には映画「ウェディング・ハイ」の主題歌を表題曲とするシングル「君にサチアレ」を発売し、4月よりツアー「BEST OF LUCK」を開催。7月に幾田りらをゲストボーカルに迎えたニューシングル「Free Free Free feat.幾田りら」を、11月には石原慎也(Saucy Dog)が参加するシングル「紋白蝶 feat.石原慎也(Saucy Dog)」を配信。2023年3月に、長屋晴子(緑黄色社会)をゲストボーカルに迎えた「青い春のエチュード feat.長屋晴子(緑黄色社会)」を含むミニアルバム「JUNK or JEM」をリリースする。
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA (@tokyoskaj) | Twitter
緑黄色社会(リョクオウショクシャカイ)
高校の同級生だった長屋晴子(Vo, G)、小林壱誓(G)、peppe(Key)と、小林の幼馴染・穴見真吾(B)によって2012年に結成された愛知県出身の4人組バンド。2013年に10代限定のロックフェス「閃光ライオット」で準優勝したのを皮切りに活動を本格化させる。2018年に1stアルバム「緑黄色社会」をリリースし、それ以降、映画・ドラマ・アニメの主題歌を多数務める。2020年発表のアルバム「SINGALONG」は各ランキングで1位を獲得し、リード曲「Mela!」はストリーミング再生数が2億回を突破する代表曲に。