ナタリー PowerPush - The Cigavettes

ロックレジェンドの魅力凝縮 カラフルな2ndアルバム完成

パクリと言われるのはいいけど何も言われないのは寂しい

──9曲目の「Can't Find Memories」はファンキーというか、ソウルフルなテイストの曲ですね。

この曲はBEE GEESの「Night Fever」やフィリーソウルに対する僕らなりのパロディで。「ソウル・トレインのテーマ(The Sound Of Philadelphia)」のストリングスのラインをそのまま引用してるんで、知ってる人が聴いたら笑っちゃうと思いますよ。

──曲によってはTHE BEACH BOYSをイメージさせるコーラスも入ってるし、コアな音楽ファンが聴いたら喜びそうなネタが豊富ですし。

そうですね。こんなにツッコミどころ満載のアルバムなんて、そうないと思うんですけど。

──これだけネタが豊富なのに、ツッコまれないのも寂しいですよね。

インタビュー風景

パクリだって言われるのはいいけど、何も言われないのは寂しいな。大瀧詠一のすごく規模が小さいバージョンみたいな。大胆に引用してるのに、「いい曲だ」としか言われない。

──確かにそれは一番寂しいですね。

ライブでもセッションのときに別の曲のフレーズを取り入れたりしていて。例えばTHE UNDERTONESの「Teenage kicks」をサビくらいまで歌ってから、「She's So Fine (She's Not Fair)」に入っていくとか、その曲の元ネタを演奏してから曲に入る遊びをやってるんですけど、みんな新曲だと思って普通に盛り上がっちゃうんです。

──なるほど。

「ちょっとだけ演奏したあの曲、すごくいい曲なのになんで最後まで演奏しないんですか?」みたいな。「いや、あれはとっておきの曲だからね」と言ってごまかすんですけど(笑)。

「高校生の自分が憧れるようなアルバム」を作りたかった

──実は僕、The Cigavettesは「過去の名曲からの引用」を意図的にやってるのか、それともナチュラルに出てきてるのかがずっと気になってたんですよ。

そこは意図的かな。このアルバムの1曲目「Presley Song」は、THE CLASHの「Wrong 'Em Boyo」っていう曲のパロディなんですよ。曲の入りが全く一緒で、最初はコード進行も同じだったんですけど、さすがにそれだと面白くないかなと思って変えたんですけど。

──そういう話を聞くと、改めてこのアルバムを聴いたときの面白さが増すと思いますよ。

センス良く、気の利いた感じに仕上げたくて。自分が高校生のときにこんなアルバムがあったら、聴いてぶっ飛ぶんじゃないかな。今思ったんですけど、イメージ的にはそういう「高校生の自分が憧れるようなアルバム」を作りたかったという気持ちがどこかにあったのかも。で、カバー曲だけど自分が言いたいことは14曲目の「Keep The Customer Satisfied」に全部書かれてるので。お兄ちゃん(山本政幸 / Vo)がたくさんいい歌詞を書いてくれたんですけど、やっぱりSIMON & GARFUNKELにはかなわねえなっていう。

──そういう曲が書けていたら、今頃ビッグスターになってるでしょうし(笑)。

そこは力の差を感じます。この曲はポール・サイモンが歌詞を書いたんですけど、非難されて汚い罵声を浴びせられても、国境を超えてお客さまを満足させるという皮肉めいた内容で。ものすごく共感するところが多くて。「やっぱりレジェンドクラスの人たちはいい歌詞を書くな」って、改めて思いましたね。

ロックのほうがわかりやすいからロールする感覚はウケない

──アルバムタイトルの「We Rolled Again」も象徴的なタイトルというか、ものすごく力強い言葉ですね。

2枚目っていう意味なんですけどね。

──「Rock」ではなくて「Roll」というところに、The Cigavettesのこだわりを感じました。

ロックする感覚のほうがわかりやすいから、ロールする感覚ってあんまりウケないんですよね。うちのライブもあまり盛り上がらないし。

──いやいや(笑)。

派手にガツーンとやったほうがお客さんは盛り上がるけど、うちはそういうタイプじゃないから。すごく踊りやすい曲なのになと思いながら、フロアで棒立ちのお客を眺めながら演奏してるんですけどね。だから、ライブで写真を撮るとちょっと寂しい感じに見えてしまって。

──もっと盛り上がってもいいんじゃないかなと。

僕らの曲ってそういう音楽なんだけどなって。

──でも、アルバムリリース後にはツアーも決まってるわけですが。今回のツアー、どうしますか?

やばいですね。ナタリーでいっぱい宣伝してもらわないと(笑)。

──聴かず嫌いな人もいるのかもしれないけど、今回のいろんな試みをきっかけに、いろんな人の耳に届いてほしいですね。

そうですね。このバンドを5~6年やってますけど、昨日今日知ったっていう人もいると思うし。そういう人たちが何かのきっかけで聴いてくれたらうれしいです。

インタビュー風景

ニューアルバム「We Rolled Again」 / 2012年4月4日発売 / 2400円(税込) / FABTONE RECORDS / FABC-110

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CD収録曲
  1. Presley Song
  2. We Rolled Again
  3. She's So Fine (She's Not Fair)
  4. (All I've Got To Do Is) Begging You
  5. I Wonder
  6. My Old Car
  7. My Girl
  8. Flux Fiddlers On The Roof
  9. Can't Find Memories
  10. I Wonder That You're Alone
  11. Sweet Memories Into Nightmare
  12. Maybe It Goes On
  13. Far Away
  14. Keep The Customer Satisfied
The Cigavettes(しがべっつ)

2005年4月、福岡にて山本幹宗(G, Cho / 弟)と山本政幸(Vo / 兄)の兄弟を中心に結成されたロックバンド。現在は山本兄弟のほか、小田淳之介(G, Cho)、篠崎光徳(B, Cho)、戸高亮太(Dr, Cho)の5人編成。地元を中心に活動を展開し、2008年には「CLUB SNOOZER」福岡公演にレギュラー出演し、着実に知名度を高めていく。2009年9月にはUKロックの祭典「BRITISH ANTHEMS」に出演。さらに山本幹宗はくるりの全国ツアー「くるりワンマンツアー2009 ~敦煌(ドンファン)~」にサポートギタリストとして参加し、話題を集める。2011年には上京を果たし、同年4月に1stアルバム「The Cigavettes」を発表。オリコンインディーズチャートでウィークリー5位を記録したほか、リード曲「Ready To Leave」が全国8局のFM局でパワープレイを獲得した。2012年4月、2ndアルバム「We Rolled Again」をリリース。