カツヲ(THE CHERRY COKE$)×ヤマネヒロマサ(さらば青春の光マネージャー)|結成25周年、つないだ絆から生まれた新作 (2/2)

「裏さらば」はチェリコの曲がなかったら成立しない

──ヤマネさんはさらば青春の光のYouTubeチャンネル「裏さらば」にTHE CHERRY COKE$の楽曲を使用していますし(オープニングテーマの「パブリック・ハウス」とエンディングテーマの「さらば青春の光」)、カツヲさんはザ・森東のグッズデザインを担当したりと、今もいろんな形で関係が続いています。

ヤマネ 「裏さらば」はやっぱりオープニングとエンディングにチェリコの曲がなかったら、俺は成立していないと思うんですよね。制作する側としてはあの2曲のおかげで動画自体がモノになったと思うし、観る側としてもあの2曲が流れると気持ちが締まるんですよ。とんでもない恩恵を受けているわけで、「これは本当に感謝してもしきれないな」とザ・森東のみんながチェリコに対して思っているんだから、そりゃ何かお願いされたら恩を返すぞと。そうしたら25周年っていう一番恩返しやすいタイミングが来たので、じゃあ俺らができることを全部やろうっていうわけです。

カツヲ 最近はライブのお客さんにも「さらばから入りました」っていう人が増えていて。僕たちにとっては一番ありがたいことなので、その関係値を作ってくれたことだったりデザインをやらせてもらっていることに関しても、本当に助けられっぱなしですよ。今回もみなみかわくんとか雄輔とかひょうろくくんから「25周年だから」とご祝儀をいただきましたけど、一番甘えさせてもらったのはヤマさんですよね。「さらば青春の光 feat. ザ・森東」のレコーディング参加もそうだし、アルバム特典のキーホルダーを作ってくれたりだとか、本当にいろいろ宣伝してくれたうえに「さらば青春の光 feat. ザ・森東」のミュージックビデオを「裏さらば」で作ってくれて。

ヤマネ それが僕らなりの恩返しなんです。チャンネル視聴者の中では「あの曲=裏さらば」と定着しているわけで、さらばがツアー中に見せた真面目な顔とか苦しんでる顔とか喜んでる顔とかをこの曲にはめ込んでいって。本当に青春の中で生きている俺らの全部をあの曲にぶち込めたらなと思ったんです。もちろん、さらばのイメージビデオみたいにならないように、ちゃんと「裏さらば」のディレクターがチェリコのライブ撮影もしてくれたので、すごくいい感じに仕上がったんじゃないかと思いますよ。

カツヲ 何十万人って登録者のいるチャンネルでビデオを作ってくれて、しかもメイキングも流してくれるんですよね。本当にありがたいです。

ヤマネ 愛だけはぎっしり詰まっていると思いますよ。

左からカツヲ(THE CHERRY COKE$)、ヤマネヒロマサ。

左からカツヲ(THE CHERRY COKE$)、ヤマネヒロマサ。

新作は「僕たちからあなたへ」ではなく「僕からあなたへ」

──最新アルバム「LOVE THY DRUNX」についてもお話を聞かせてください。25周年という節目のタイミングに、名門レーベルCAFFEINE BOMB RECORDS移籍第1弾作品として発表された今作ですが、僕らが認識するTHE CHERRY COKE$らしさはもちろん、新鮮さも至るところから感じられて、まだまだ前に進んでいくんだという強い意志が伝わる内容だと思いました。

カツヲ ありがとうございます。最近アルバムを作る際はいつもそうなんですけど、まず最初に全体のアウトラインをみんなで決めるんです。例えば12曲収録するのであれば1曲1曲のキャラを決めて、どういう流れにしたら聴きやすいか、起承転結が付くかみたいな感じで組み立てていく。具体的には「1曲目はアップテンポの爽快な曲を入れましょう」とか「4曲目5曲目あたりに激しいマイナーの曲を入れましょう」「最後のほうでパブソングみたいなのを入れましょう」とか、もっと言えば「こういう歌詞の内容を歌いたいから、こういう曲を作ってくれ」みたいな、ざっくりしたアウトラインを決めながら、パズルのピースを当てはめるようにイメージに沿って曲を作っていく。そういうことをみんなで共有すれば理解が深まって、それぞれの曲の解像度が上がっていくので、制作するうえでメンバー同士の認識の共有という部分は大切にしています。あとはみんなすごいプレイヤーなので、自分たちのしたいプレイをしていくという感じですね。

──メッセージ的には25周年に関連して伝えたいことなどはありましたか?

カツヲ そんなに今までと変わらないんですけど、今回はより身近に「僕たちからあなたへ」じゃなくて「僕からあなたへ」という形で届くような曲にすることは意識したかな。あと、THE CHERRY COKE$は東京の大田区で結成されたバンドなんですけど、今まで以上にローカルな部分が出ているのも特徴ですね。

──「NANCY WHISKEY」がまさにその曲ですよね。聴いているだけで皆さんが生活している地元の雰囲気がイメージできます。

ヤマネ アルバムの中で一番好きな曲です。歌詞だけじゃなくて音もそうだけど、このバンドの姿を明確に表しているから、一番伝わるんですよ。

ヤマネヒロマサ

ヤマネヒロマサ

カツヲ スコットランド民謡に勝手にこんな品のない歌詞を付けて怒られないかなと思うんですけど(笑)。でもきれいなことばかり言っても伝わらないし、「ああ、カツヲが言いそうだな」とか「チェリコってそういうバンドだよね」って感じてもらえたらいいなと。歌詞に関しては毎回そうなんですけど、別に答えは出していなんですよ。「しんどいよな、わかるよ。飲みに行こか」ぐらいで留めるというか。

──あとは聴き手がどう自分の中で答えを出すか。その向き合う瞬間を与えているということですよね。

カツヲ そう感じてもらえたら一番うれしいです。

──で、その答え合わせのためにライブに足を運んで、みんなで一緒に歌って騒いで思いを共有する。その姿勢が25年間一貫していて、今回のアルバムでもまったくブレていないから安心して楽しめるんですよ。

カツヲ でも、「違うかな?」と思ってカッコつけた時期もあったんですけどね(笑)。

ヤマネ わかるよ。でも、それが歴史じゃん。ブレないって話につながるんですけど、「さらば青春の光」という曲は以前からあったものの、それ以外はほぼ新曲じゃないですか。なのに、ベスト盤みたいな感じで楽しめるのは、この25年の間に経験してきたことのいいところを詰め込んだからなんでしょうね。俺、1曲目(「RISKY DREAMS」)の歌詞もすげえ好きだな。いろいろぶちまけていてまったく飾ってない、王道のチェリコ節で頭からカッコいいなと思って。それが2曲目、3曲目とどんどん続いていくわけだから、そりゃマジでベストアルバムなわけですよ。

──その感覚、わかります。アルバムとして起承転結がはっきりしているのに、ラストの「BIRING ME A BEER」から頭の「RISKY DREAMS」に戻っても自然な流れで、延々とループできる。「それでもまだ日常は続いていくんだ」と言われているような感覚になるんですよね。

カツヲ そういう聴き方をしてもらえるのは、本当にうれしいな。でも、実際にそういう感じで楽しんでもらえるのが一番だと思います。

──個人的には中盤に配置された「NATIVE DANCE」の重めな感じもすごく気持ちよかったです。

カツヲ コロナ禍でライブができなかった時期にキャンプ場から配信ライブをやったことがあったんですけど、その配信中に「1曲作ろう」みたいなノリで、今のサビが含まれた1分くらいの尺の原曲が生まれて。そこから平歌のメロディ変えたり音の厚みを増したりして「NATIVE DANCE」を完成させました。なので、コロナ禍でうまいこと回らなかった時期に作った曲もアルバムには含まれています。

カツヲ(THE CHERRY COKE$)

カツヲ(THE CHERRY COKE$)

「feat. ザ・森東」として出てほしかった

──先ほども話題に上がった「さらば青春の光 feat. ザ・森東」を再レコーディングしようと思った理由は?

カツヲ 今のアコーディオンのメンバー(MUTSUMI)が加入したときに、「普通に加入を発表しても面白くないから、MVで新曲を公開するタイミングでいきなり知らないメンバーが増えていたら面白いんじゃない?」みたいな話が上がって。最初はその映像のために録った曲だったので、リリースする予定もなかったんです。で、ちょうどそのあとぐらいにヤマネさんと女子バスケの試合を観に行ったことがあって、会場に心臓病のドネーションをしたいっていうポスターが貼ってあったんですね。それが大田区の女子チーム関係者のお子さんだったんですけど、帰り道で「何かできることないかな?」という話になって、確かヤマさんから「『さらば青春の光』を配信して、その売上を寄付したらどうだろう?」という話が出たのかな。もちろん目標の金額に届くなんて思ってなかったですけど、いくらかの足しになればいいし、この試合を観たことが考えるきっかけになったんだからとにかくやってみようってことで、当時の社長に相談して期間限定でダウンロード販売したんです。で、そこから時間が経って「裏さらば」のエンディングテーマとして使ってもらうようになったんですけど、その頃には楽曲をダウンロードすることができなくなっていた。さらばのお客さんから曲に対する問い合わせもすごく多かったんですよ。ずっと出さないのも逆に意地悪だなと思ったし、ヤマさんのおかげで再び日の目を見たというのもあったので、このタイミングかなと思って再録しました。

ヤマネ あの曲にはいろんな思い出があるよな。メンバー発表のMVもそうだし、ああやってさらばと初めて映像で絡んだこともそうだし、それをさらばがYouTubeチャンネルで使い始めたこともそう。ただ、一緒に歌うことになるとは思っていなかったですけどね(笑)。でも、そこは気持ちというか、「さらばの2人だけじゃなくて、ヤマさんも歌ってくださいよ」と。

カツヲ 「feat. さらば青春の光」ではなくて「feat. ザ・森東」として出てほしかったんです。ヤマさん、最初は渋ってたんですけどね。でも、レコーディングでいざ歌い始めると「もう1回! もう1回やらせて」と言い出して(笑)。

ヤマネ 歌うとなったら「もっといいのが出せそう」ってノッてきちゃって(笑)。でも、さらばからチェリコを知った方もこの曲を聴けるようになったことで、またチャンネルにも戻ってきてくれるだろうし、いい効果を生み出せるんじゃないかと思います。

──最後になりますが、ヤマネさんからTHE CHERRY COKE$の25周年に対するお祝いのメッセージをいただけますか?

ヤマネ 25周年という節目にこんなにカッコいいアルバムを出して、盛大にお祝いしたいところですが、僕はすでに26年、27年と先のことを楽しみにしているので、ここからさらにカッコいいチェリコを見せてください、とファンとして思っています。

カツヲ ありがとうございます。僕ら、25周年だからといってそんなに気負いはないんですよ。結成してから25年ですけど、その間に何度もメンバーが変わって「また振り出しか」って思うことも多かったバンドですし。今一番新しいメンバーがドラムのTOSHIなんですけど、TOSHIが入ってからが今のTHE CHERRY COKE$のスタートでもあるという気持ちなので、ここが新たなスタートぐらいのスタンスで今後も続けていきたいですね。

左からカツヲ(THE CHERRY COKE$)、ヤマネヒロマサ。

左からカツヲ(THE CHERRY COKE$)、ヤマネヒロマサ。

プロフィール

THE CHERRY COKE$(チェリーコークス)

1999年に東京都大田区でカツヲ(Vo, Banjo)を中心に結成されたアイリッシュパンクバンド。ロックサウンドにトラディショナルな楽器を組み合わせたサウンドは国内外から注目を浴び、多数の海外フェスへの出演や海外アーティストの来日公演のサポートも果たしている。2017年と2022年にはFlogging Molly主催のカリブ海クルーズツアー「Salty Dog Cruise」に出演した。結成25周年を迎えた2024年にCAFFEINE BOMB RECORDSへ移籍。その第1弾となるアルバム「LOVE THY DRUNX」を9月にリリースした。