音楽ナタリー Power Push - The Beatles「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」特集

THE BAWDIESが語るライブバンド・The Beatlesの素晴らしさ

暴れさせるのではなく踊らせるテンポ感

The Beatles

──「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」はオリジナル盤も聴いてましたか?

ROY 聴いてました。ライブ映像も観てましたし。

──今回のリミックス&リマスター盤を聴いて新たな発見もいろいろあったんじゃないですか?

ROY ありましたね。The Beatlesってバンド名が超有名すぎて若いリスナーの中には「伝説のバンドなんでしょ? 『Let It Be』のバンドでしょ?」という認識で終わってる人もいると思うんですよ。でも、このアルバムを聴くと初期のThe Beatlesがいかにすごいロックンロールバンドであるかがよくわかる。

TAXMAN そうそう。叩き上げ感がすごいよね。あのものすごいお客さんの歓声の中でこれだけの演奏ができるというのは、その前に相当な数のライブをこなしてないと絶対に無理だから。

──間違いないですね。モニタもない状況で。

ROY 歓声で自分たちの音が聴こえないというのもそうだけど、普通あれだけの歓声が渦巻いてるとテンションが上がってテンポも速くなるんですよね。当時のガレージバンドのライブ音源ってほかにもいろいろありますけど、その多くはパンキッシュになってるんですよ。

──演奏が走ってるから。

左からROY(Vo, B)、TAXMAN(G, Vo)。

ROY そう。でも、このライブ盤のThe Beatlesはしっかり腰が据わった演奏をして、お客さんを暴れさせるのではなく踊らせるテンポ感をキープしてるのはすごいなと。当時、売れてるがゆえにThe Beatlesのアンチもいっぱいいたと思うんですけど。「所詮、ポップスバンドだろ?」みたいな僻みや妬みを言っていた人も実際にライブを観たら「すげえ!」ってなってたと思うんですよ。

MARCY 演奏がうまいということはわかってはいたんですけど、生演奏するには過酷なこの状況で歌から入る曲でも演奏のテンポが合ってるのは練習や場数の賜物でもあるんでしょうけど、それに加えてメンバー個々のスキルがやっぱり高いんだなって思いましたね。そこにThe Beatlesというバンドの偉大さや強さを感じるし。

JIM このライブ盤はドラムの音がめちゃくちゃいいよね。

MARCY そうそう。

JIM 革の鳴ってる感じが生々しく伝わってくる。リンゴのハイハットって独特じゃないですか。あのニュアンスを映像が浮かぶくらいの臨場感をもって聴けたのがすごくうれしくて。リンゴが演奏中にドライブしているときってほかの3人も一緒にドライブしてるんですよね。落とすときもみんなで落として。ひとかたまりのバンドのグルーヴがあることがよくわかるリミックス&リマスター盤だなと思いました。ドキドキしましたね。

MARCY(Dr)

MARCY 前に何かで見たんですけど、リンゴの独特なフォームって、ステージ上では演奏している音が聴こえないからメンバーにリズムを伝えるために形作られたというエピソードがあって。だからバスドラもすごく踏み込んでるんだと思ったんです。そこで結果的にThe Beatlesのライブ特有のドライブ感も生まれたと思うと面白いですよね。

──そういうところにもライブバンドとしての初期のThe Beatles像が浮かび上がってくる。

ROY そう。そういう意味でも今の若いリスナーにライブバンドとしてのThe Beatlesの素晴らしさをちゃんと伝えたいという思いがあって。今はフェス文化が発展している時代じゃないですか。生で音楽に触れる機会が多いからこそ、The Beatlesがどれだけすごいロックンロールバンドだったかを伝えるには絶好の機会だと思うんです。フェスのいいところって普段はライブハウスに行ったことがない人たちも気軽に生で音楽を楽しむ機会を提供しているところだと思うんですね。そういう面も踏まえてこのライブ盤はThe Beatlesのコアなファンのみならずいろんな層のリスナーが楽しめると思います。

──このライブ盤を入口に中期や後期の変遷をたどってみてもいいだろうし。

ROY そう思いますね。そうすればより中期や後期のレコーディング作品としての進化が伝わると思う。ロックンロールバンドとしてライブを一番大切にしていた初期のThe Beatles、その絶頂期の音がこのライブ盤に収められていると思うので。

ロックンロールバンドにとって永遠の課題の答えがある

──今回、ボーナストラックとして新たに「You Can't Do That」「I Want To Hold Your Hand」「Everybody's Trying To Be My Baby」「Baby's In Black」の4曲が追加されていますが、印象的だったことはありますか?

TAXMAN 16曲目の「Everybody's Trying To Be My Baby」はカール・パーキンスのカバーじゃないですか。The Beatlesってリトル・リチャードやチャック・ベリーの曲もカバーしてるんだけど、白人のロックンロールの影響も強く受けていて。こういう曲もサラッとカバーしちゃうところがすごいなって。特にジョージ・ハリスンのギターから白人のロックンロールもすごく好きなんだろうなということが伝わってくる。ジョージがチャック・ベリーの曲を弾いていても白人のギターの匂いがするってそういうことなんだろうなって。

──ワルツ調の「Baby's In Black」で終わるのも感動的ですよね。

ROY 駆け抜けていくライブの最後にこの曲がくるのはグッときますね。

──改めて、このライブ盤の収録曲から1曲ずつ好きな曲を挙げてもらえたら。

左からJIM(G)

JIM 先に言っちゃっていい? 俺は「Ticket To Ride」ですね。タム回しがすごくグッとくる。

MARCY 俺も「Ticket To Ride」です。もともとこの曲は好きなんですけど、ドラムの独特のタメやタム回しがすごく気持ちのいい位置にあって。リンゴのドラミングのすごさがよくわかる曲なので好きです。

JIM ドラムに触れられそうな音だよね。ビックリした。

ROY 俺は「Roll Over Beethoven」かな。初期のThe Beatlesらしいロックンロールバンドとしてのカッコよさがこの曲のドライブ感に集約されているなって。もちろん、チャック・ベリーのオリジナルもカッコいいんですけど、この曲でThe Beatlesの骨の部分がしっかり聞こえるなと。

TAXMAN 僕は「All My Loving」ですね。もともと好きな曲なんですけど、このライブ盤ではめっちゃテンポが速くなってるんですよね。「こんなに速くしちゃっていいのかよ!?」っていうくらいなんですけど、その速いテンポが生々しいし、それでいてアンサンブルはしっかりまとまっている。でも、「She Loves You」も捨てがたいんですよね。途中で歓声がさらに大きくなって「なんでだろう?」と思って映像を確認すると、最後のサビ前の「Woo!」のシャウトでジョン、ポール、ジョージの3人が首を横にかわいく振ってるんですよね。「なるほど、そういうことか!」と思って。

ROY 全曲いいんだよね(笑)。

TAXMAN そう、全曲いい。

ROY 俺たちもこういうライブ盤をリリースしたいよね。すごいですよ、このバランスは。さっきも言ったけど、腰を据えてみんなをしっかり踊らせるんだけど熱量があるっていう。ロックンロールバンドにとって永遠の課題の答えがあると思いますね。

──個人的にTHE BAWDIESはバンド史において今は中期にいる時期なのかなと思うんですけど。

THE BAWDIES

ROY そうですね。初期にすごく長い時間をかけましたけど、今はまさに中期ですね。

──意識的に音楽的な幅を広げようとしているところもありますか?

ROY The Beatlesもきっとそうだったと思うんですけど、意識的に幅を広げようというよりは、必然的にいろんなことに対する興味が湧いてきているといいますか。土台であるリズム&ブルースやロックンロールの上にいろんな引き出しが増えていってる感じです。考え方も変化したと思います。前は「この録り方は新しすぎてロックンロールバンドはやっちゃいけないんじゃないか?」とか、自分たちで狭めた価値観の中で「ロックンロールバンドとはこうあるべきだ」みたいな固定観念があったんですけど、今はかなり柔軟になって新しい発想や方法論も取り入れていきたいなと思っているところです。The Beatlesもそういうスタンスで変化であり進化を遂げてきたと思うんですね。

──なるほど。最後に10月に行われるgo!go!vanillasとのスプリットツアーの意気込みを聞かせてください。

ROY 彼らと一緒に制作したスプリット・シングル「Rockin’ Zombies」のリリースツアーなんですけど、ロックンロールの素晴らしさを伝えるようなツアーにしたいですね。go!go!vanillasもそういう気概を持ったロックンロールバンドなので。

THE BAWDIES ツアー情報

THE BAWDIES×go!go!vanillas "Rockin' Zombies Tour 2016"

  • 2016年10月14日(金)宮城県 Rensa
  • 2016年10月15日(土)新潟県 新潟LOTS
  • 2016年10月22日(土)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2016年10月23日(日)大阪府 なんばHatch   
  • 2016年10月25日(火)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2016年10月27日(木)熊本県 熊本DRUM B.9 V1
  • 2016年10月29日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
The Beatles ライブアルバム「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」 / 2016年9月9日発売 /UNIVERSAL MUSIC
「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」
[SHM-CD] 2808円 / UICY-15566
[アナログ] 4536円 / UIJY-75067 / 2016年11月18日発売
iTunes Store
収録曲
  1. Twist & Shout / ツイスト・アンド・シャウト(1965年8月30日)
  2. She's A Woman / シーズ・ア・ウーマン(1965年8月30日)
  3. Dizzy Miss Lizzy / ディジー・ミス・リジー(1965年8月30日 / 1965年8月29日──1曲にエディット)
  4. Ticket To Ride / 涙の乗車券(ティケット・トゥ・ライド)(1965年8月29日)
  5. Can't Buy Me Love / キャント・バイ・ミー・ラヴ(1965年8月30日)
  6. Things We Said Today / 今日の誓い(1964年8月23日)
  7. Roll Over Beethoven / ロール・オーバー・ベートーヴェン(1964年8月23日)
  8. Boys / ボーイズ(1964年8月23日)
  9. A Hard Day's Night / ア・ハード・デイズ・ナイト(1965年8月30日)
  10. Help! / ヘルプ!(1965年8月29日)
  11. All My Loving / オール・マイ・ラヴィング(1964年8月23日)
  12. She Loves You / シー・ラヴズ・ユー(1964年8月23日)
  13. Long Tall Sally / ロング・トール・サリー(1964年8月23日)
  14. You Can't Do That / ユー・キャント・ドゥ・ザット(1964年8月23日──未発表)
  15. I Want To Hold Your Hand / 抱きしめたい(1964年8月23日──未発表)
  16. Everybody's Trying To Be My Baby / みんないい娘(1965年8月30日──未発表)
  17. Baby's In Black / ベイビーズ・イン・ブラック(1965年8月30日──未発表)
映画「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐ The Touring Years」
The Beatlesの全盛期を多数のライブ映像で描く本作には、イギリス・リバプール時代や、1966年にアメリカ・サンフランシスコのCandlestick Parkで行われた観客の前でのラストライブの模様などを収録。また1963年から66年にかけて15カ国90都市で計166公演行われたライブツアーでの彼らの様子やメンバーの関係性を、各国のファンやメディアから集めた100時間以上の貴重な未公開映像、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターや関係者へのインタビューにより紐解く。さらに何気ない会話やアウトテイクシーンを取り入れたイギリス・Abbey Road Studiosでの制作シーンなども楽しめる。監督は「アポロ13」「ダ・ヴィンチ・コード」「ビューティフル・マインド」などで知られるロン・ハワードが担当。高解像度のリマスター映像と5.1chサラウンド化された音声によって当時の熱狂と興奮が蘇る。
The Beatles(ビートルズ)
The Beatles

イギリス・リバプール出身のジョン・レノン(G, Vo)、ポール・マッカートニー(B, Vo)、ジョージ・ハリスン(G, Vo)、リンゴ・スター(Dr, Vo)による4人組バンド。1962年にシングル「Love Me Do」でデビューした。彼らが行うコンサートの会場の内外では、ファンがヒステリックに金切り声を上げる現象が起こり、その熱狂ぶりを表す「ビートルマニア」という言葉が誕生。The Beatlesは社会現象として捉えられた。64年にはアメリカに初上陸。同年に主演映画「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」が各国で公開されると、その人気は世界中に広がっていった。その後、The Beatlesは1966年にアメリカ・サンフランシスコのCandlestick Parkにて観客を前にした最後のライブを開催し、68年頃からメンバーはソロとしての活動に移行。69年に12thアルバム「Abbey Road」を制作したのち、70年に解散した。彼らが活動期間中に発表した12作のオリジナルアルバムのうち11作が、22作のシングルのうち17作が全英ヒットチャートで1位を獲得している。

THE BAWDIES(ボウディーズ)
THE BAWDIES

ROY(Vo, B)、TAXMAN(G, Vo)、JIM(G)、MARCY(Dr)によって2004年1月1日に結成。リズム&ブルースやロックンロールをルーツにした楽曲、熱いライブパフォーマンスが各地で噂を呼ぶ。2009年4月に発表したメジャー1stアルバム「THIS IS MY STORY」は「第2回CDショップ大賞」を受賞。2013年1月に4thアルバム「1-2-3」をリリースし、同年2月より横浜アリーナ、大阪城ホール公演を含む59公演の全都道府県ツアーを開催した。2014年1月に結成10周年を迎え、同年3月にカバーアルバム「GOING BACK HOME」を発表。12月にはニューアルバム「Boys!」を発表し、2015年3月には2度目の日本武道館公演を成功に収めた。10月にペトロールズの長岡亮介をプロデューサーに迎えたニューシングル「SUNSHINE」を発表。2016年7月にはgo!go!vanillasとのスプリットシングル「Rockin' Zombies」をリリースし、東京・代々木公園イベント広場野外ステージにてフリーライブを行った。10月には2組による全国ツアー「Rockin' Zombies Tour 2016」が実施される。

THE BAWDIES × go!go!vanillas
「Rockin' Zombies」
2016年7月20日発売 / Victor Entertainment
「Rockin' Zombies」期間限定盤

期間限定盤 [CD+DVD]
1944円 / VIZL-1008

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「Rockin' Zombies」通常盤

通常盤 [CD]
1080円 / VICL-37192

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「Rockin' Zombies」アナログ盤

アナログ盤 [アナログ]
1296円 / VIKL-30077

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