ナタリー PowerPush - 玉城千春
“ブランニューな私”を詰め込んだ1stソロアルバム誕生
何度もやり直した小田和正との作業
──参加されてる方のことを訊かせてください。まずは「Harmony+」の小田和正さんから。
小田さんには、作詞の段階からご協力いただきました。メールでやり取りしながら歌詞を直してもらったり、コーラスアレンジをしてもらったり。一緒にコーラスの録音もしていただいたんです。そのときにメロディを修正するアドバイスもいただいて。
──まさにコラボレーションという感じですね。
最初はすごく緊張しました。でも、細かいところも指摘していただいたので、ものすごく勉強になりました。私だったら途中で諦めてしまうようなことも、「最後までこだわってやったほうがいいよ」と言ってくださって。
──小田さんの頭の中に完成形が見えていて、そこに近付けていこうとされてたんでしょうね。自分自身にも厳しいというか、ストイックな方なのかなって思うんですが。
そう思います。小田さんと一緒に作らせてもらって得たことがたくさんあるんですけど、「歌詞はメロディを引っ張っていけるものだから、そういう歌詞を書きなさい」って教えてもらったことが特に印象的でした。詞を作るときは「ここは違う言葉のほうがいいんじゃない」っていうアドバイスをいただいて。何度も書き直したのもいい経験になりました。
──多くの作品を作ってきた小田さんならではの重い言葉だと思います。
はい。音楽に向き合う姿勢、諦めないで追究していく気持ちを学びました。これまでは、アカペラで作ったらすぐに(金城)綾乃に渡して伴奏を付けてもらってて、自分の手を離れたら後は歌入れを楽しむ感じだったんです。小田さんのやり方を見てたら、Kiroroのときの私は随分甘えてたなあって(笑)。
スキマスイッチは厳しい
──ミュージシャンが10人いれば、やり方も10通りあると思いますから、玉城さんのようにパートナーにお任せするのもひとつのやり方だと思います。でも完成するまでのすべての過程を自分が作り上げていくのが小田さんのやり方だったんですね。
はい。スキマスイッチもそうでした。
──そうなんですね。スキマスイッチとは3曲目の「ゼロセンチ」を作られましたが。
小田さんは私が作った曲に対してアドバイスしていただいた形だったんですけど、「ゼロセンチ」は3人で一緒にスタジオでゼロから作っていきました。大橋くんがギターを持って、私が歌って、常田くんが鍵盤とコンピュータの前に座って。作ったものをすぐに録音していくという感じで、6時間ぐらいで完成しました。彼らも小田さんと同じで、最初から最後まで自分たちでこだわって作っていくというスタイルでしたね。小田さんもスキマスイッチも、音楽作りにこだわりを持ってるって知って、すごくうらやましかったです。
──特に常田さんはプレイヤーでありながら、プロデューサー気質なところがありますから。
はい、歌入れのときとか、厳しかったです(笑)。
──大橋さんはひらめきを大切にしている感性の人で、常田さんは理論的に構築していくタイプの人なんじゃないかと思うんですが。
そんな感じでした。私は大橋さんのほうに近いですね。コーラス部分は大橋さんにお願いしたんですけど、2人で時間を掛けてコーラス録りをされてました。2人ともこだわりがありますから、ときどきバトりながら(笑)。でも、2人はそうしながらいいものを作っていくんだなあって。
──スキマスイッチとはいつ頃知り合ったんですか?
共通の知り合いのミュージシャンがいて、彼らのライブを観させてもらったのが最初でした。その後、小田さんがホストを務める「クリスマスの約束」(TBS系で毎年放送しているクリスマス音楽番組)でも共演して。だから小田さんつながりですね。
手紙から始まったCoccoとのコラボ
──「Honey」は、同じ沖縄県出身のCoccoさんが作詞を手がけられてますが。
Coccoさんとは以前、ビクターのスタジオでお会いしたことがあって。今年の1月にCoccoさん主催のイベントが沖縄であって、そこに私も参加させていただいたんです。そのときに、今度一緒に何か作りたいなって思って、手紙を書きました。
──その手紙から、今回のコラボが成立したんですね。
そうなんです。アルバムを作りたいと思っていた時期ということもあって、すごくいいタイミングで出会えたなあって。
──実際に、どういうふうに曲を作っていったんですか? 曲を渡して、歌詞をつけてもらったという感じ?
いえ、先に詞をいただきました。手紙を書いたらお返事をくださって、そのとき詞もいただいたんです。それにどうやって曲をつけていくのかを考えていたら、ちょっと時間がかかりましたね。その詞を最初に読んだとき、"空"をイメージしたんです。それと心が揺れる感じも。
──Coccoさんの作る歌詞は言葉が強いですよね。
ええ。この曲をレコーディングしたときのギターは、私がデビューの頃からずっとお世話になってるギタリストの方だったんですけど、「この歌詞はCoccoが書いたんだよ」って言ったら、「どうりで。千春ちゃんが選ぶ言葉じゃないからビックリしたよ」って。「焼け堕ちる」とか「亡骸」とか、そういう言葉は私から出てくる言葉じゃないと思ったって言ってました。
──確かにKiroroの曲には出てこない言葉ですよね。
「Honey」では、Coccoさんの表現の仕方を自分の中に取り入れて、それをどういうふうに出すのかっていう作業をして。大変でしたけど、新しい経験ができて楽しかったです。
「朝日」はバイオリンとのデュエット
──「朝日」は、バイオリニストの宮本笑里さんとのコラボ。この曲もすごく興味深い作品だと思って聴かせてもらいました。
この曲は、笑里さんのコラボ作品のために曲を書いてほしいという依頼があって作った曲なんです。バイオリンとデュエットしてる感じの曲にしたいと思って、最初はギターの音がもっと高かったんですけど、バイオリンの音を際立たせたいと思って、ギターの音を低くしました。
──演奏している楽器の中のひとつにバイオリンがあるというのではなくて、歌と同じポジションにバイオリンがあるという感じに。
そうです。バイオリンの音って大好きなんです。依頼を受けたとき、「未来へ」みたいな曲というのをリクエストされたので、こういうタイプの曲になりました。とても好きな曲なんですけど、もっとバイオリンが生きる曲でもよかったなあ……なんて、あとで欲が出てきたり(笑)。
ソロアルバム「Brand New Days」
発売記念イベント
プレミアムライブ、
握手&CDジャケットサイン会
2011年12月10日(土)銀座山野楽器本店7Fイベントスペース“JamSpot”
START 13:00
フリーライブ、
握手&CDジャケットサイン会
2011年12月17日(土)兵庫県 阪急西宮ガーデンズ4階スカイガーデン・木の葉のステージ
START 15:00
玉城千春(たましろちはる)
1977年生まれ、沖縄出身の女性アーティスト。Kiroroのボーカリストとして1998年にメジャーデビューし、「未来へ」「Best Friend」など数多くのヒット曲を生み出す。近年は他アーティストへの楽曲提供なども行い、作家としても活躍。2005年に結婚して以降は、独自のペースを保ちつつ音楽活動を展開している。2011年10月にシングル「神様」でソロデビューを果たし、同年11月の1stソロアルバム「Brand New Days」をリリース。